「ハングリー・ハーツ」
生まれた赤ん坊を常軌を逸した方法で育てようとする妻ミアに、ジュードは戸惑い不安に苛まれる。やがて事態は、思わぬ方向へ発展し…
スターウォーズのカイロ・レン役や、高く評価された「パターソン」など、メジャー系大作のみならずアートな独立系の秀作でも人気、いま最も映画ファンに注目されている若手俳優のひとり、アダム・ドライバーの主演作。TVで放送されたSWのカイロ・レンを見て、なかなかかっこいいじゃん!誰?え?「沈黙 サイレンス」の神父?!ぜんぜん気づかんかった!なかなかのイケメンなだけでなく、なかなかの役者じゃないか。流行には乗れない私も、アダム・ドライバー人気には乗っかれそう。彼の出演作がもっと観たいな~と思ってたら、運よくこの作品と出会えました。
この映画のアダム・ドライバーは、見た目も役もごくフツーの市井の青年で、宇宙の悪人と神父な彼しかまだ知らなかった私の目には、新鮮に映りました。一見ヤボったいけど、よく見るとイケメン。ちょっとキアヌ・リーヴスを思わせるアジアっぽさのある顔と、長身でかなりヌオ~とした巨体が特徴でしょうか。優しくデリケートな役と演技でも、甘っちょろく見えない暗さ、思いつめた張りつめた雰囲気が、何か予期せぬことを引き起こしそうな怖さ、面白さを醸していて、それが魅力となってます。アダム・ドライバーって驚いたことに、俳優になる前は軍人だったとか。赤ちゃんをあやしてる優しいパパぶりとか、ラブシーンで見せるムチムチした上半身裸とか、アダム・ドライバーのファンにとっては必見映画かも。
心を病んだ妻の異様な言動に当惑したり、時には感情を抑えきれず激怒したりしながらも、懸命に彼女に尽くし寄り添おうとするジュードの姿が、けなげで哀れでした。そこまで狂妻を尊重しなくてもいいのでは、まず赤ちゃんの健康を最優先しようよ!と、見ていてイラっともしたが。そう、この映画、かなりイラっとする神経逆なでな、不快感も高い内容なので、アダム・ドライバー目当てな方はご注意を。育児経験のある方や育児中の方と、私のように子どもがいない者とでは、見方も感想も違ってくることでしょうか。とにかく、育児について考えさせられる映画でした。
これロマンチックコメディ?と思ってしまった始まり方(ジュードとミアの出会い方が最悪だけど笑えた)から、恋愛や結婚に揺れる現実的な物語になって、妊娠・出産あたりからおかしな感じになっていって、育児をめぐってどんどん病んでいく壊れていく夫婦を終始淡々と、ドキュメンタリータッチな感じでカメラが追っています。いかにもサスペンス風なサイコシーンとかはありませんが、赤ちゃんが心配すぎてハラハラ、ミアが妙なことをしそうでハラハラしっぱなしです。
大きな社会問題である育児放棄や虐待ですが。ミアの場合は、子どもを愛しすぎるあまり、大事にしすぎるあまり、外の世界は汚れてるから!と赤ちゃんを家から出さなかったり。外の食べ物は毒だから!と自家栽培のハーブや野菜しか与えなかったり。見かねたジュードがこっそり栄養のある食べ物を赤ちゃんに与えると、変なオイルを飲ませて摂取した栄養を無くしたり。医者は信用できないから!と赤ちゃんの具合が悪くても診察拒否とか、正常で健康的な赤ちゃんの発育を妨げたりするんですよ。私なんかからすると、立派な虐待としか思えませんでした。
ヒステリーを起こしたり暴れたりするわけではなく、ジュードにも逆らったりせず従順なのですが、目を離すとすぐに超自己流育児をするミア。常にどよよ~んと暗~い顔と虚ろな目つきからして完全に病んでる。育児放棄ならぬ育児狂気。早くミアを病院に強制入院させて!と思わずにはいられませんでしたが、ひどい!鬼母!と安易に責めると、子どものいないあんたに何が解かる!と、世のお母さん方に怒られるでしょうか。ミアの育児は間違ってない、という意見もあることでしょうか。でもやっぱ、私がジュードや家族だったら、ミアの育児を尊重できそうにありません。
なぜミアはコワレてしまったのでしょう。産後うつ?それとも、もともと精神に疾患があったでしょうか。虐待者どころか、むしろ被害者みたいな弱弱しい哀れな風情なのが、病んだ者勝ちみたいでイヤ~な感じなんですよ。福祉も警察も、ミアの味方になるのが理不尽で腹ただしかったです。ミアを尊重しすぎて事態を悪化させるジュードにもイライラ。とにかく、ミアがコワレようと、ジュードが苦しもうと、どうでもいい!赤ちゃんを助けて!衰弱させられたりモノみたいに両親の間で奪い合いされたり、赤ちゃんがいちばん可哀想でした。ミア役の、「眠れる美女」にも出ていたイタリア女優アルバ・ロルヴァルケルの、見てるほうも気が滅入りそうになるドヨヨ~ン演技がヤバすぎ。ちなみにアダム・ドライバーとアルバ・ロルヴァルケルは、この映画でそろってヴェネツィア映画祭の男優賞、女優賞を受賞しました。
ラストは衝撃的な悲劇。もっと他に方法はたくさんあったはずだけど、ある意味手っ取り早くサッパリした決着だったようにも。夫婦にとっては最悪で最善の結末。赤ちゃんが無事だったので、ワタシ的にはハッピーエンドです。
↑ アダム・ドライバーの新作は、スパイク・リー監督の“Black Klansman”です。白人至上主義の人種差別集団KKKを扱った問題作みたいです
生まれた赤ん坊を常軌を逸した方法で育てようとする妻ミアに、ジュードは戸惑い不安に苛まれる。やがて事態は、思わぬ方向へ発展し…
スターウォーズのカイロ・レン役や、高く評価された「パターソン」など、メジャー系大作のみならずアートな独立系の秀作でも人気、いま最も映画ファンに注目されている若手俳優のひとり、アダム・ドライバーの主演作。TVで放送されたSWのカイロ・レンを見て、なかなかかっこいいじゃん!誰?え?「沈黙 サイレンス」の神父?!ぜんぜん気づかんかった!なかなかのイケメンなだけでなく、なかなかの役者じゃないか。流行には乗れない私も、アダム・ドライバー人気には乗っかれそう。彼の出演作がもっと観たいな~と思ってたら、運よくこの作品と出会えました。
この映画のアダム・ドライバーは、見た目も役もごくフツーの市井の青年で、宇宙の悪人と神父な彼しかまだ知らなかった私の目には、新鮮に映りました。一見ヤボったいけど、よく見るとイケメン。ちょっとキアヌ・リーヴスを思わせるアジアっぽさのある顔と、長身でかなりヌオ~とした巨体が特徴でしょうか。優しくデリケートな役と演技でも、甘っちょろく見えない暗さ、思いつめた張りつめた雰囲気が、何か予期せぬことを引き起こしそうな怖さ、面白さを醸していて、それが魅力となってます。アダム・ドライバーって驚いたことに、俳優になる前は軍人だったとか。赤ちゃんをあやしてる優しいパパぶりとか、ラブシーンで見せるムチムチした上半身裸とか、アダム・ドライバーのファンにとっては必見映画かも。
心を病んだ妻の異様な言動に当惑したり、時には感情を抑えきれず激怒したりしながらも、懸命に彼女に尽くし寄り添おうとするジュードの姿が、けなげで哀れでした。そこまで狂妻を尊重しなくてもいいのでは、まず赤ちゃんの健康を最優先しようよ!と、見ていてイラっともしたが。そう、この映画、かなりイラっとする神経逆なでな、不快感も高い内容なので、アダム・ドライバー目当てな方はご注意を。育児経験のある方や育児中の方と、私のように子どもがいない者とでは、見方も感想も違ってくることでしょうか。とにかく、育児について考えさせられる映画でした。
これロマンチックコメディ?と思ってしまった始まり方(ジュードとミアの出会い方が最悪だけど笑えた)から、恋愛や結婚に揺れる現実的な物語になって、妊娠・出産あたりからおかしな感じになっていって、育児をめぐってどんどん病んでいく壊れていく夫婦を終始淡々と、ドキュメンタリータッチな感じでカメラが追っています。いかにもサスペンス風なサイコシーンとかはありませんが、赤ちゃんが心配すぎてハラハラ、ミアが妙なことをしそうでハラハラしっぱなしです。
大きな社会問題である育児放棄や虐待ですが。ミアの場合は、子どもを愛しすぎるあまり、大事にしすぎるあまり、外の世界は汚れてるから!と赤ちゃんを家から出さなかったり。外の食べ物は毒だから!と自家栽培のハーブや野菜しか与えなかったり。見かねたジュードがこっそり栄養のある食べ物を赤ちゃんに与えると、変なオイルを飲ませて摂取した栄養を無くしたり。医者は信用できないから!と赤ちゃんの具合が悪くても診察拒否とか、正常で健康的な赤ちゃんの発育を妨げたりするんですよ。私なんかからすると、立派な虐待としか思えませんでした。
ヒステリーを起こしたり暴れたりするわけではなく、ジュードにも逆らったりせず従順なのですが、目を離すとすぐに超自己流育児をするミア。常にどよよ~んと暗~い顔と虚ろな目つきからして完全に病んでる。育児放棄ならぬ育児狂気。早くミアを病院に強制入院させて!と思わずにはいられませんでしたが、ひどい!鬼母!と安易に責めると、子どものいないあんたに何が解かる!と、世のお母さん方に怒られるでしょうか。ミアの育児は間違ってない、という意見もあることでしょうか。でもやっぱ、私がジュードや家族だったら、ミアの育児を尊重できそうにありません。
なぜミアはコワレてしまったのでしょう。産後うつ?それとも、もともと精神に疾患があったでしょうか。虐待者どころか、むしろ被害者みたいな弱弱しい哀れな風情なのが、病んだ者勝ちみたいでイヤ~な感じなんですよ。福祉も警察も、ミアの味方になるのが理不尽で腹ただしかったです。ミアを尊重しすぎて事態を悪化させるジュードにもイライラ。とにかく、ミアがコワレようと、ジュードが苦しもうと、どうでもいい!赤ちゃんを助けて!衰弱させられたりモノみたいに両親の間で奪い合いされたり、赤ちゃんがいちばん可哀想でした。ミア役の、「眠れる美女」にも出ていたイタリア女優アルバ・ロルヴァルケルの、見てるほうも気が滅入りそうになるドヨヨ~ン演技がヤバすぎ。ちなみにアダム・ドライバーとアルバ・ロルヴァルケルは、この映画でそろってヴェネツィア映画祭の男優賞、女優賞を受賞しました。
ラストは衝撃的な悲劇。もっと他に方法はたくさんあったはずだけど、ある意味手っ取り早くサッパリした決着だったようにも。夫婦にとっては最悪で最善の結末。赤ちゃんが無事だったので、ワタシ的にはハッピーエンドです。
↑ アダム・ドライバーの新作は、スパイク・リー監督の“Black Klansman”です。白人至上主義の人種差別集団KKKを扱った問題作みたいです