「女王陛下のお気に入り」
18世紀初頭、フランスと戦争中のイギリス。病弱なアン女王に代わって、女王の幼なじみであるレディ・サラが政治を牛耳っていた。そんな中、レディ・サラの前に零落した従妹のアビゲイルが現れる。アビゲイルは貴族の身分に返り咲くため、女王に近づこうとするが…
ハマる人はハマる、ダメな人にはダメ。「ロブスター」や「聖なる鹿殺し」など、その独特さ、クセの強さで好き嫌いがはっきりと別れるヨルゴス・ランティモス監督の新作は、何と!18世紀のイギリス王室が舞台の時代劇!いったいどんな時代劇?!想像のつかなさにワクワク。加えて、アカデミー賞ではまさかの最多ノミネーション!否が応でも期待の拍車がかかります。そんな待望のヨルゴス風コスチュームプレイ、どうだったかというと…
うう~ん…私の拙い文章力では、感想を書きあぐねてしまいますが…確実に言えるのは、今回もなかなか珍奇でシュールで斬新!ということ。こんな時代劇、初体験です。これまでのヨルゴス作品に比べると、え???な不可解&不条理設定やシーンがなく、かなりわかりやすくなってます。でも、権力や女王の寵愛をめぐって詐術陰謀に狂奔する宮廷の魑魅魍魎たちの描き方や醸すムードは、かなり特異で独創的。ヨルゴス節炸裂なシーン満載で、ヨルゴスファンはニヤリ、非ファンは当惑することでしょう。
演出、映像、脚本、空気感、演技、すべてにおいて異色の時代劇。いつもの淡々と静かなヨルゴス作品に比べ、スピーディでドラマティックな展開ですが、何これ?何か変!と、戸惑いと笑いを誘う作風は、従来通りのヨルゴステイスト。珍妙なシーン満載ですが、私がいちばん笑えたのは、舞踏会でのレディ・サラとマシャム大佐とのダンス。すごい変な踊り!ほんとに当時、こんな踊りあったの?!おそらく、時代考証にはあまり拘泥してなくて、かなり自由な設定、描写になってるのでは。歴史オタクの方々が観たら噴飯ものかもしれません。
変な踊りもですが、王族や貴族とは思えぬほど下品で下劣で俗悪な人間関係と会話の内容、華やかさを排したモノトーンのファッションや調度品、美術などは、かなり現代的で時代劇の掟破り的な面白さが。女たちが薄化粧でシンプルな衣装なのに対して、男たちは厚化粧でデコレートされた衣装、という逆転もユニークでした。人工的な照明ではなく自然光や蝋燭の灯りを使用、下から覗くようなカメラなど撮影方法も独特で、他の映画では味わえない奇妙さ、オリジナリティです。
三人の女のキャラ、彼女たちが繰り広げる女の闘いと、それを激演した女優たちの演技合戦は、本当に強烈で激烈!惹きこまれたりドン引きしたりで、一瞬も退屈しません。稀に見る女優映画の傑作と言えるかも。女王をめぐって、サラとアビゲイルのあの手この手な讒言や甘言、奸計、ごかまし、遠まわしな当てこすりや脅し、罠が、卑劣で卑怯なんだけど必死すぎて笑えるんですよ。二人とも大真面目、まさに命がけの攻防、相手を押しのけよう、陥れようと心も体も張ってる姿が、醜くも滑稽。それに翻弄されてるように見えて実は、気づかないふり騙されてるふりをして二人の対抗心や憎しみを煽り、それを楽しんでるかのようなアン女王の、天然すぎる魔性のおばさんぶりが、最凶で最笑でした。
女の争いは、ともすると陰湿・陰険、ドロドロとイヤらしくなりがちですが、この映画のそれはそんな感じは不思議と薄い。三人ともどちらかといえば男っぽいキャラで、男など眼中にもなく男を完全に見下し、男なんかのことで苦悩したり傷つくことなく、困難やピンチにも挫けずヘコたれず、欲望や信念を忠実に懸命に貫き、昂然と男よりも高みに立つ姿が、豪快痛快でカッコいい。女性の権利があらためて見直され、声高に叫ばれている昨今の風潮にピッタリな、女性の強さを賛歌したフェミニスト映画、そしてLGBT映画になってます。私は重度の腐なので、薔薇には興奮しても百合には居心地の悪さを感じる…これも性差別なのかな男同士の性愛は切なく美しくなるのに、女同士のそれはなぜかそうはならず、いびつで不気味になってしまうのはなぜ。
女豚!女猫!女豹!まさに女獣の宮廷!これぞ女優映画!この映画を堪能してしまうと、日本のCM演技女優などますます見るに堪えなくなります。アン女王役のオリヴィア・コールマン、そのアカデミー賞主演女優賞受賞も納得な大怪演、大珍演に瞠目!こんなに醜悪かつ滑稽で哀れな女王さま、映画の中で初めてお目にかかりました。英国王室はこのアン女王についてクレームなしなの?こんな女王さまに支配されてるイギリス国民が可哀想!もう見た目だけで出オチなインパクトなのですが、観る者の神経を逆なでしつつも笑いを誘うオリヴィアの、迫力満点かつ繊細な狂態!見た目もだけど、中身もほとんどおっさんで、めんどくさいことこの上ないながらも何だか憎めない無邪気さや、胸が痛くなるような心身のグロテスクな病みっぷりなど、観客までも躁鬱な気分になってしまう演技です。
アビゲイル役を、ハリウッド最高の人気女優であるエマ・ストーンが演じているという意外性も、この映画の注目度と質を高めています。オスカーを受賞した「ラ・ラ・ランド」よりも、この映画の絵馬石のほうが女優としての力量や根性を発揮してると思う。とにかく絵馬石の、守りに入ってない女優魂があっぱれ。いい年してきれいに可愛く見せたいと必死な日本の女優に、絵馬石の爪の垢を煎じて飲ませたいです。泥どころか糞まみれになり、おっぱいまで見せて(ちょっとだけですが)る絵馬石を、大いに見直しました。獲物を狙う猫のように、好機をうかがってギラギラギョロギョロしてるデカい目が怖い。アシャム大佐のチ◯コをよそ見しながら手コキしてる時の虚ろな顔も秀逸でした。
レディ・サラ役のレイチェル・ワイズも、オスカー級の名演。颯爽と毅然とした女丈夫っぷりは、かなり男前です。ズバリ言うわよ!な毒舌が笑えた。乗馬服などマニッシュな男装ファッションが多いのも、彼女を男らしいキャラにしていました。男っぽいけど、優しそうで聡明な女性の魅力にもあふれていて、ある意味理想の女性なサラに適役なレイチェルさんもまた、理想的に卓越した名女優と言えます。
アビゲイルに近づく男たちを、英国の若手イケメン俳優ニコラス・ホルトとジョー・アルウィンが好演。元子役のニコラスは、すっかり大人の役者になりましたね~。イケメンなだけでなく性格俳優として成長中で、今後の活躍もますます期待できます。テイラー・スウィフトの恋人として有名になったジョーも、可愛いだけでなくヨゴレ役や捨て身の演技も厭わない役者魂がありそう。「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」や「ある少年の告白」など、話題作に出演してる彼からも目が離せません。
本筋には全然関係ないのですが、下っ端女中時代のアビゲイルに意地悪をするデブなメイドが、やってることは鬼のような陰険さなのに、見た目も声も可愛いくて好き。出世しても仕返ししないアビゲイルの度量に感嘆。あと、いつも女王の近辺に用意されてるケーキやお菓子が美味しそうだった。腹減ってる時に観たら苦痛かも。
↑まさに女獣使い!ヨルゴス・ランティモス監督の手腕に拍手!監督、イケメン
↑ 私も女王さまになって、こんなイケメンたち侍らせたい~
18世紀初頭、フランスと戦争中のイギリス。病弱なアン女王に代わって、女王の幼なじみであるレディ・サラが政治を牛耳っていた。そんな中、レディ・サラの前に零落した従妹のアビゲイルが現れる。アビゲイルは貴族の身分に返り咲くため、女王に近づこうとするが…
ハマる人はハマる、ダメな人にはダメ。「ロブスター」や「聖なる鹿殺し」など、その独特さ、クセの強さで好き嫌いがはっきりと別れるヨルゴス・ランティモス監督の新作は、何と!18世紀のイギリス王室が舞台の時代劇!いったいどんな時代劇?!想像のつかなさにワクワク。加えて、アカデミー賞ではまさかの最多ノミネーション!否が応でも期待の拍車がかかります。そんな待望のヨルゴス風コスチュームプレイ、どうだったかというと…
うう~ん…私の拙い文章力では、感想を書きあぐねてしまいますが…確実に言えるのは、今回もなかなか珍奇でシュールで斬新!ということ。こんな時代劇、初体験です。これまでのヨルゴス作品に比べると、え???な不可解&不条理設定やシーンがなく、かなりわかりやすくなってます。でも、権力や女王の寵愛をめぐって詐術陰謀に狂奔する宮廷の魑魅魍魎たちの描き方や醸すムードは、かなり特異で独創的。ヨルゴス節炸裂なシーン満載で、ヨルゴスファンはニヤリ、非ファンは当惑することでしょう。
演出、映像、脚本、空気感、演技、すべてにおいて異色の時代劇。いつもの淡々と静かなヨルゴス作品に比べ、スピーディでドラマティックな展開ですが、何これ?何か変!と、戸惑いと笑いを誘う作風は、従来通りのヨルゴステイスト。珍妙なシーン満載ですが、私がいちばん笑えたのは、舞踏会でのレディ・サラとマシャム大佐とのダンス。すごい変な踊り!ほんとに当時、こんな踊りあったの?!おそらく、時代考証にはあまり拘泥してなくて、かなり自由な設定、描写になってるのでは。歴史オタクの方々が観たら噴飯ものかもしれません。
変な踊りもですが、王族や貴族とは思えぬほど下品で下劣で俗悪な人間関係と会話の内容、華やかさを排したモノトーンのファッションや調度品、美術などは、かなり現代的で時代劇の掟破り的な面白さが。女たちが薄化粧でシンプルな衣装なのに対して、男たちは厚化粧でデコレートされた衣装、という逆転もユニークでした。人工的な照明ではなく自然光や蝋燭の灯りを使用、下から覗くようなカメラなど撮影方法も独特で、他の映画では味わえない奇妙さ、オリジナリティです。
三人の女のキャラ、彼女たちが繰り広げる女の闘いと、それを激演した女優たちの演技合戦は、本当に強烈で激烈!惹きこまれたりドン引きしたりで、一瞬も退屈しません。稀に見る女優映画の傑作と言えるかも。女王をめぐって、サラとアビゲイルのあの手この手な讒言や甘言、奸計、ごかまし、遠まわしな当てこすりや脅し、罠が、卑劣で卑怯なんだけど必死すぎて笑えるんですよ。二人とも大真面目、まさに命がけの攻防、相手を押しのけよう、陥れようと心も体も張ってる姿が、醜くも滑稽。それに翻弄されてるように見えて実は、気づかないふり騙されてるふりをして二人の対抗心や憎しみを煽り、それを楽しんでるかのようなアン女王の、天然すぎる魔性のおばさんぶりが、最凶で最笑でした。
女の争いは、ともすると陰湿・陰険、ドロドロとイヤらしくなりがちですが、この映画のそれはそんな感じは不思議と薄い。三人ともどちらかといえば男っぽいキャラで、男など眼中にもなく男を完全に見下し、男なんかのことで苦悩したり傷つくことなく、困難やピンチにも挫けずヘコたれず、欲望や信念を忠実に懸命に貫き、昂然と男よりも高みに立つ姿が、豪快痛快でカッコいい。女性の権利があらためて見直され、声高に叫ばれている昨今の風潮にピッタリな、女性の強さを賛歌したフェミニスト映画、そしてLGBT映画になってます。私は重度の腐なので、薔薇には興奮しても百合には居心地の悪さを感じる…これも性差別なのかな男同士の性愛は切なく美しくなるのに、女同士のそれはなぜかそうはならず、いびつで不気味になってしまうのはなぜ。
女豚!女猫!女豹!まさに女獣の宮廷!これぞ女優映画!この映画を堪能してしまうと、日本のCM演技女優などますます見るに堪えなくなります。アン女王役のオリヴィア・コールマン、そのアカデミー賞主演女優賞受賞も納得な大怪演、大珍演に瞠目!こんなに醜悪かつ滑稽で哀れな女王さま、映画の中で初めてお目にかかりました。英国王室はこのアン女王についてクレームなしなの?こんな女王さまに支配されてるイギリス国民が可哀想!もう見た目だけで出オチなインパクトなのですが、観る者の神経を逆なでしつつも笑いを誘うオリヴィアの、迫力満点かつ繊細な狂態!見た目もだけど、中身もほとんどおっさんで、めんどくさいことこの上ないながらも何だか憎めない無邪気さや、胸が痛くなるような心身のグロテスクな病みっぷりなど、観客までも躁鬱な気分になってしまう演技です。
アビゲイル役を、ハリウッド最高の人気女優であるエマ・ストーンが演じているという意外性も、この映画の注目度と質を高めています。オスカーを受賞した「ラ・ラ・ランド」よりも、この映画の絵馬石のほうが女優としての力量や根性を発揮してると思う。とにかく絵馬石の、守りに入ってない女優魂があっぱれ。いい年してきれいに可愛く見せたいと必死な日本の女優に、絵馬石の爪の垢を煎じて飲ませたいです。泥どころか糞まみれになり、おっぱいまで見せて(ちょっとだけですが)る絵馬石を、大いに見直しました。獲物を狙う猫のように、好機をうかがってギラギラギョロギョロしてるデカい目が怖い。アシャム大佐のチ◯コをよそ見しながら手コキしてる時の虚ろな顔も秀逸でした。
レディ・サラ役のレイチェル・ワイズも、オスカー級の名演。颯爽と毅然とした女丈夫っぷりは、かなり男前です。ズバリ言うわよ!な毒舌が笑えた。乗馬服などマニッシュな男装ファッションが多いのも、彼女を男らしいキャラにしていました。男っぽいけど、優しそうで聡明な女性の魅力にもあふれていて、ある意味理想の女性なサラに適役なレイチェルさんもまた、理想的に卓越した名女優と言えます。
アビゲイルに近づく男たちを、英国の若手イケメン俳優ニコラス・ホルトとジョー・アルウィンが好演。元子役のニコラスは、すっかり大人の役者になりましたね~。イケメンなだけでなく性格俳優として成長中で、今後の活躍もますます期待できます。テイラー・スウィフトの恋人として有名になったジョーも、可愛いだけでなくヨゴレ役や捨て身の演技も厭わない役者魂がありそう。「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」や「ある少年の告白」など、話題作に出演してる彼からも目が離せません。
本筋には全然関係ないのですが、下っ端女中時代のアビゲイルに意地悪をするデブなメイドが、やってることは鬼のような陰険さなのに、見た目も声も可愛いくて好き。出世しても仕返ししないアビゲイルの度量に感嘆。あと、いつも女王の近辺に用意されてるケーキやお菓子が美味しそうだった。腹減ってる時に観たら苦痛かも。
↑まさに女獣使い!ヨルゴス・ランティモス監督の手腕に拍手!監督、イケメン
↑ 私も女王さまになって、こんなイケメンたち侍らせたい~