まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

地獄の道化師

2019-12-04 | 北米映画 15~21

 「ジョーカー」
 荒廃したゴッサムシティの底辺社会で、母の介護をしながらコメディアンになることを夢見ていたアーサーに、理不尽な解雇や暴力、そして出生の秘密など次々と不幸が襲いかかる。積もり積もった悲憤と怨嗟はやがて、アーサーを狂気の殺人者ジョーカーへと変貌させるのだった…
 話題作をやっと観に行くことができました~(^^♪なかなか劇場に足を運べず、もういっかなと半ば諦めかけていたのですが、ここまで評判が良く大ヒットまでしているからには、やはりスルーはできませんでした。すぐに観に行かなかったのはタイミングのせいでもあるのですが、好きなスターが主演ではないからというのも大きい。好きなスター主演だったら、たぶん速攻で観に行ったでしょうし。ジョーカー役のホアキン・フェニックスは、いまやハリウッドきっての名優。それを否定するつもりは毛頭ありません。でも苦手な俳優なんですよね~。見た目が気持ち悪いというか。でもそんなホアキンのキモさが激烈に、かつ魅力的に活かされていた今回のジョーカー役でした。初めてホアキンアレルギー反応が出なかった作品かも。

 これでもか!と虐げられ侮られ軽んじられ、ゴミのように扱われるホアキン。その目も当てられぬ悲惨さときたら!こっちまで心が傷つき沈むみじめさ。でもただの可哀想な人、にならなところが名優ホアキンのホアキンたる所以。哀れなんだけど、その強い目つきや傲然とした表情、独善的な言動など、人に優しい気持ちや同情を抱かせない、人をイラっとさせて攻撃的な気分にさせる見た目と演技がお見事でした。発作的な笑いも、その顔といい声といい神経に障る気持ち悪さ。奇形に近いガリガリ裸体も、目を背けたくなるおぞましさ。病的な負のオーラを死臭のように発酵させてるホアキンの、まさに命がけな気迫は非凡な俳優にしか生み出せないもの。日本のCMメイン俳優との差をまざまざと感じさせます。

 ジョーカーに変貌してからのホアキンは、今まで見た出演作の中ではいちばんカッコよかったです。「ダークナイト」のヒース・レジャーのジョカーも圧巻の鬼気迫る激演でしたが、ハイテンションで漫画ちっくなヒース版はスゴいね~と笑って楽しめるけど、憎悪や怨念を内面にドロドロと溜めたホアキンジョーカーの欝々しさ重苦しさは、アーサーと同じ社会の底辺で生きる者にとっては笑えないリアリティが。怖いのは悪夢より厳しい現実…オスカーの呼び声高いホアキン、受賞に値する痛烈な熱演でした。

 ホアキンの演技ならぬ怨技も戦慄でしたが、私のような底辺人間には身につまされる内容にもゾっとしました。貧困、格差、暴力、失業、虐待、孤独、メンヘラ、暴動…世界各国で見られる深刻な社会問題、病巣てんこもり。カオスなゴッサムシティは、決して映画の中だけの世界ではありません。精神病を患ってるアーサーが、病気に理解も寛容さもない冷たく残酷な社会にキレで復讐する姿が、日本でも多発している精神障害者、発達障害者が生きづらさに追い詰められ社会を逆恨みして起こしてしまう事件とカブりました。観てる間、バットマン関連のアメコミ映画であることをすっかり忘れてしまってました。さすがにアーサーほどではないにせよ、私も社会の冷たさを身に沁みながら生きてるし、憤懣もやるかたない。私だって、一歩間違えればジョーカーと化すやもしれぬ。ジョーカー予備軍がそこかしこにいるカタストロフィな時代を、私たちは生きているのですね…

 

 

 

コメント (7)
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