まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

ベトナムに忘れもの

2020-07-01 | 北米映画 15~21
 「ザ・ファイブ・ブラッズ」
 ベトナム戦争で戦った退役軍人のポール、オーティス、エディ、マーヴィンは、戦死した仲間ノーマンの骨と、ひそかに埋めた金塊を探し出すためベトナムに集結し、かつて激戦地だったジャングルに再び踏み込むが…
 スパイク・リー監督待望の新作。前作「ブラック・クランズマン」がゴキゲンな傑作だったので、ほんと楽しみにしていました。今回は珍しく(初?)アメリカを飛び出して海外が舞台。しかも、ベトナムのジャングルでお宝探しという冒険映画。スパイク監督、新境地開拓!かと思いきや、今も昔もアメリカでは黒人がどれほど非道い目に遭っているかを告発、糾弾する従来のスパイク節は今回も健在、炸裂していました。

 今回は黒人への差別偏見だけでなく、ベトナム戦争(ベトナム人はアメリカ戦争、と言ってるんですね)におけるアメリカの非道さも描いていました。アメリカでは被害者である黒人も、ベトナム戦争では加害者になってしまった、憎むべき白人どもに加担して奴らの共犯者になってしまった、という自責や苦悩を描いたことが、冒険テイストよりもスパイク監督の新境地だと思いました。当時の実際の映像が頻繁に挿入されるのですが、射殺の瞬間や焼身自殺、赤ん坊の惨殺死体など、目を覆いたくなるような地獄絵図に暗澹となりました。

 元兵士の4人は、はじめは無駄に元気なアクティヴ老人風なのですが、ジャングルの奥へ進んでいくと同時に暗い心の深淵にも踏み込んでしまい、実は辛い人生を余儀なくされて破綻してることが明るみになるのが悲痛です。心身の消えない傷もですが、ジャングルに遺された地雷も戦争の罪な遺産。地雷を踏んでしまいドガーンと木っ端みじんになるシーンが、かなりホラーでゲロゲロ(死語)です。今でも昔の戦争のせいで苦しんだり傷ついたりしてる人がいる現実を突きつけられ、それとは無縁に平和に暮らしてることに罪悪感を覚えずにはいられませんでした。ラストの黄金争奪戦、まるでベトナム戦争の再現みたいで皮肉な展開でした。結局は自分たちの利益のためには他者なんかどうなってもいい、血を流すことも辞さないアメリカは、ベトナム戦争後も不変だという痛烈なメッセージのようでした。
 シビアで悲惨な内容なのですが、決して暗くヘヴィな感じにならないところがスパイク監督の魅力、力量です。ポップで軽快なノリと演出、ソウルフルな黒人音楽が好き。ラストにカメラ目線で静止している登場人物が、ぐい~んとこっちに動かされてくる演出は、ブラッククランズマンでもありましたね。トランプ大統領いじりもお約束?

 いま最も好きな黒人俳優、陛下ことチャドウィック・ボーズマン主演!とのことで、期待に胸弾ませていたのですが、んんん?!チャドウィック、主演じゃねーし!戦死したノーマン役の彼、4人の回想シーンにチョコチョコっと出てくるだけ!ブラックパンサーとはまた違う彼の魅力を堪能できると思ってたのに!騙された気分あまりの登場シーンの少なさ、見せ場のなさにガッカリしましたが、小さな役ながらチャドウィックを起用した理由もよく解かる。4人の精神的支柱な存在で、死後もトラウマのような思い出と影響を引きずらせるカリスマな役は、フツーの黒人俳優では説得力が出なかったでしょう。

 チャドウィック、共演の黒人俳優たちと比べると、やっぱ顔面偏差値の高さが顕著。悲しそうで真面目そうな顔が、過酷な宿命を負った役にピッタリ。もともと可愛い童顔なのですが、爺さん4人に囲まれてるので余計若く見えた。ベトナム戦争時代も現代も同じ爺さん俳優たちが演じてるので、彼らの息子にしか見えないチャドウィックが仲間、しかもリーダー役ってちょっと違和感。カッコいいけどちょっとしか見られないので、チャドウィックのファンは消化不良、欲求不満になるかも。同じNetflix映画なら、出ずっぱりの主演作「キングのメッセージ」のほうが、カッコいいチャドウィックを堪能できます。

 実質の主役は、ポール役のデルロイ・リンドー。なかなか鬼気迫る熱演。善と悪、正気と狂気で混濁した複雑な内面が怖くて悲痛でした。地雷撤去作業グループの女性メンバー役で、フランス女優のメラニー・ティアリーが出演していたのには驚きました。フランス映画を観たらかなりの確率で遭遇する売れっ子女優の彼女、まさかのアメリカ映画、しかもスパイク・リー監督の作品でも出会うとは。4人が裏取引する怪しいフランス人商人役が、すっかり老けて太ったジャン・レノでした。
 ベトナムにも行ってみたい!美味しいフォーが食いたい!ミャンマーにはいなかったけど、ベトナムにはイケメンが結構いそう?

 ↑ イケてるチャドウィック画像、集めてみました~(^^♪ほんとカッコイイ&カワイイ戦国時代の日本で織田信長に仕えたと伝えられてる黒人役の“Yasuke”は、コロナのせいで撮影延期になったみたい?残念!制作まで中止にならなきゃいいけど。ロケで日本に彼が来たら、相手役とは言わん、足軽役のエキストラでいいので共演したい!コメディや恋愛ものにも出てほしいな~
コメント (4)
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