お松のフランス大女優映画祭①
「ジョーンについて」
出版社の社長ジョーンは、ダブリンで暮らしていた若い頃の恋人ドグと偶然再会する。ドグと別れた後ひそかに彼との子を産んで育てたジョーンのもとに、その息子ナタンが訪ねてきて…
ジェシカ・チャステインやニコール・キッドマン、ケイト・ブランシェットといった当代一のトップ女優たちがリスペクトする、女優が憧れる女優イザベル・ユペール。そのキャリアと年齢の重ね方は、まさに女優としては理想的。アンチエイジングな枯れたエレガンス、軽快でクールな演技は、アラ還にしてますます魅力を増し、世界各国の才ある映画監督から今なお引っ張りだこなユペりんです。彼女を唯一無二な女優にしているのは、やはりあのシレっとスットボケたところでしょうか。重苦しい宿業や心の闇を抱いた役でもそんな風には全然見えず、木で鼻を括っているような演技や風情が独特すぎるけど、いかにも特異でしょ?個性的でしょ?な押しつけがましさや自意識過剰さは微塵もないところも、彼女をオンリーワンな女優にしています。
この作品のユペりんも、いつもと同じでクールでニヒル、そしてシレっとしてます。冒頭、カメラ目線で観客に自分語りを始めるジョーン、その半生は結構ヘヴィで波乱万丈なんだけど、ちっとも苦労や悲しみを滲ませても漂わせてもおらず、実は傷ついてます疲れてますと同情を媚びることもなく、肩をすくめて淡々と平然とした感じなのがユペりんらしいヒロインでした。フツーの女優なら、運命に翻弄され傷ついた悲しい女、または運命に抗う強い女、みたいないかにも映画的なヒロインとして熱演するだろうジョーン役ですが、イザベル・ユペールはそんなありきたりなことはしません。男との恋に破れようと、未婚の母になろうと、母親に捨てられようと、サラっと受け流してシレっと生きてるジョーンもまた、イザベル・ユペールの個性と魅力を活かすために創造されたヒロインでした。
恋人や息子への、ジョーンのベタベタしない冷淡な優しさが、大人の女って感じで素敵でした。あんな風に軽く突き放した感じで、でも大事に思ってることは相手に伝わる接し方ができたらなあ。いつでも誰にでもドライで軽やかなジョーンがカッコいいのですが、実はヤバい人だったということが終盤になって判明。長い月日が経っても克服できない悲しみで、ある意味狂気に陥っていたジョーン。え?!な事実に驚きつつ、やっぱりねとも。イザベル・ユペールがフツーの女であるわけがなく、期待通り(笑)イカレ女だったので安堵もそういった狂気も、悲しみと決別して新たな一歩を踏み出す姿も、やっぱ特段に劇的な言動も変化も見せずサラっとシレっとしてるのが、これぞイザベル・ユペール!でした。
ジョーンの恋人であるドイツ人の作家とか、ジョーンの母親とかがエキセントリックな珍キャラで笑えた。日本人の空手家カズオと日本に出奔する母ちゃんの、北斎の絵もどきにタコとセックスしてる痴態や、何ちゃって日本人な扮装や日本語の台詞は、日本をリスペクト?それともディスってる?ジョーンの息子ナタン役は、オゾン監督の「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」でセザール賞を受賞したスワン・アルロー。相変わらず個性的な顔。ナタンは実は…なトリッキーな設定を、上手に伏線とかで描いてないので、ラストの事実判明が唐突で反則っぽくなってしまったのが残念。ダブリンやパリ、フランスの田舎など、ジョーンの人生に合わせたかのように、それぞれに色彩や温度感が違う映像も美しかったです。ジョーンの田舎にある家、あんなところに住んでみたいわ~。イザベル・ユペールの、ナチュラルでフェミニンな趣味の高いファッションもトレビアン。中盤のちょっとパンクでファンキーな衣装や髪型もカッコいい!
「ジョーンについて」
出版社の社長ジョーンは、ダブリンで暮らしていた若い頃の恋人ドグと偶然再会する。ドグと別れた後ひそかに彼との子を産んで育てたジョーンのもとに、その息子ナタンが訪ねてきて…
ジェシカ・チャステインやニコール・キッドマン、ケイト・ブランシェットといった当代一のトップ女優たちがリスペクトする、女優が憧れる女優イザベル・ユペール。そのキャリアと年齢の重ね方は、まさに女優としては理想的。アンチエイジングな枯れたエレガンス、軽快でクールな演技は、アラ還にしてますます魅力を増し、世界各国の才ある映画監督から今なお引っ張りだこなユペりんです。彼女を唯一無二な女優にしているのは、やはりあのシレっとスットボケたところでしょうか。重苦しい宿業や心の闇を抱いた役でもそんな風には全然見えず、木で鼻を括っているような演技や風情が独特すぎるけど、いかにも特異でしょ?個性的でしょ?な押しつけがましさや自意識過剰さは微塵もないところも、彼女をオンリーワンな女優にしています。
この作品のユペりんも、いつもと同じでクールでニヒル、そしてシレっとしてます。冒頭、カメラ目線で観客に自分語りを始めるジョーン、その半生は結構ヘヴィで波乱万丈なんだけど、ちっとも苦労や悲しみを滲ませても漂わせてもおらず、実は傷ついてます疲れてますと同情を媚びることもなく、肩をすくめて淡々と平然とした感じなのがユペりんらしいヒロインでした。フツーの女優なら、運命に翻弄され傷ついた悲しい女、または運命に抗う強い女、みたいないかにも映画的なヒロインとして熱演するだろうジョーン役ですが、イザベル・ユペールはそんなありきたりなことはしません。男との恋に破れようと、未婚の母になろうと、母親に捨てられようと、サラっと受け流してシレっと生きてるジョーンもまた、イザベル・ユペールの個性と魅力を活かすために創造されたヒロインでした。
恋人や息子への、ジョーンのベタベタしない冷淡な優しさが、大人の女って感じで素敵でした。あんな風に軽く突き放した感じで、でも大事に思ってることは相手に伝わる接し方ができたらなあ。いつでも誰にでもドライで軽やかなジョーンがカッコいいのですが、実はヤバい人だったということが終盤になって判明。長い月日が経っても克服できない悲しみで、ある意味狂気に陥っていたジョーン。え?!な事実に驚きつつ、やっぱりねとも。イザベル・ユペールがフツーの女であるわけがなく、期待通り(笑)イカレ女だったので安堵もそういった狂気も、悲しみと決別して新たな一歩を踏み出す姿も、やっぱ特段に劇的な言動も変化も見せずサラっとシレっとしてるのが、これぞイザベル・ユペール!でした。
ジョーンの恋人であるドイツ人の作家とか、ジョーンの母親とかがエキセントリックな珍キャラで笑えた。日本人の空手家カズオと日本に出奔する母ちゃんの、北斎の絵もどきにタコとセックスしてる痴態や、何ちゃって日本人な扮装や日本語の台詞は、日本をリスペクト?それともディスってる?ジョーンの息子ナタン役は、オゾン監督の「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」でセザール賞を受賞したスワン・アルロー。相変わらず個性的な顔。ナタンは実は…なトリッキーな設定を、上手に伏線とかで描いてないので、ラストの事実判明が唐突で反則っぽくなってしまったのが残念。ダブリンやパリ、フランスの田舎など、ジョーンの人生に合わせたかのように、それぞれに色彩や温度感が違う映像も美しかったです。ジョーンの田舎にある家、あんなところに住んでみたいわ~。イザベル・ユペールの、ナチュラルでフェミニンな趣味の高いファッションもトレビアン。中盤のちょっとパンクでファンキーな衣装や髪型もカッコいい!