まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

楽聖は美青年がお好き

2023-08-28 | フランス、ベルギー映画
 「ベートーヴェンの甥」
 19世紀前半のウィーン。世界的音楽家ベートーヴェンは、亡き弟の息子カールを大切に養育していた。実母ヨハンナから引き離され会うことさえ許されず、自分に異常なまでに執着する伯父にカールは追い詰められ…
 誰もが知ってるベートーヴェンですが、彼が生み出した音楽ほどにはその生涯や人柄は知られていないのでは。この映画はベートーヴェンの晩年を描いているのですが、こんな困った爺さんだったなんて驚き呆れるばかりでした。とにかく甥っこのカールへの執着が異常!まずカールの母ヨハンナへの敵意や警戒心が尋常ではなく、毒婦・淫売呼ばわりしてカールに会うことを禁じたり妨害したり。カールの行く先々に付いて来たり追いかけたり、周囲に尾行や監視をさせたり。カールが女とヤってる最中に乱入して大騒ぎしたり。ぶっちゃけストーカー。恥も外聞もない老いらくの狂態は、エキセントリックすぎてほとんどコメディ。何だか岡田あーみん先生の「お父さんは心配性」の光太郎パパとカブって笑えました。

 でも何であんなに甥に執着してたんでしょう。美青年に恋焦がれる老人、なんて悲痛で耽美な二人でもなかったし。甥に恋する伯父、みたいな禁断な関係ではなく、弟の忘れ形見を立派に育てねばならない、そのためには自分が正しいと信じてるやり方で若者をコントロール、でもそれができないので慌てふためいてる独善的で偏狭な年寄り、みたいなベートーヴェンでした。世界的な音楽家として名声を得て、楽聖とまで讃えられたベートーヴェンも、そこらにいる迷惑高齢者と同じだったなんて、ちょっと親近感を覚えてしまいました。

 ベートーヴェン爺さん、でも決してカールに対して高圧的でも威圧的でもなく、元気いっぱいな迷惑行為の後は哀れな弱い老人になって、カールに謝ったりご機嫌をとったり。そんな卑屈さも年寄りらしい狡猾さに見えました。結局はすごく寂しい、かまってちゃんな老人だったんだろうな~。でももしカールが冷たい美青年ではなく、心根の優しいブサイクだったら、ひょっとしたらベートーヴェンもあそこまでデスパレートに執着しなかったのでは、とも思いました。必要以上に苦しんだり悲しんだりしようとするドMさは、天才的な芸術家の特性でしょうか。

 カールに魅力がなかったのが残念。何を考えてるのか読めない、いや、何も考えてないアホの子みたいでした。何をされても文句を言うわけでも抗議、反抗するわけでもなく、平然としてるかブスっとしてるか。話を面白くするため、盛った創作でいいのでもっと魔性の美青年っぽいキャラにしてほしかったです。演じてた俳優も、美青年だけど繊細さを欠いたふてぶてしい感じ、ウドの大木な味気ない演技で、まったく惹きつけるものがありませんでした。ベートーヴェン役の俳優さんは、遠藤太津朗似?耳がよく聞こえないベートーヴェン、都合の悪い話になると筒?メガホン?みたいな器具を耳に当てて、え?は?何つった?をお約束のように繰り返すのも何か滑稽でした。

 カールの母ヨハンナ役は、突然の訃報がファンを悲しませたばかりのジェーン・バーキン。お元気とばかり思ってたので、ほんと驚きました。この映画の時は39歳ぐらい。まだ若くて美しいので、てっきりカールの年上の恋人役かと思ってました。時代劇コスチュームもジェーンが着ると、何だかモダンなおしゃれさが。少女のようなほっそりした体つき、か細い声は娘のシャルロット・ゲンズブールとよく似てます。カールと恋人関係になる女優エレノール役はナタリー・バイ。彼女もまだ若くて美しい!世慣れた大人の女を華やかに軽やかに演じてました。豪華な女優共演ですが、二人が一緒のシーンは一瞬だけで、二人とも出番はそんなに多くないのが残念。
 セットではなく本物の屋敷や教会、街で撮影されたのでしょうか。19世紀のヨーロッパの雰囲気がよく出ていていました。衣装も優雅で美しかったです。クラシック音楽には無知でも、さすがに聞いたことがある曲が演奏される音楽会のシーンも印象的。台詞は英語。舞台はウィーンで、オーストリア人役を英語でドイツ人やフランス人の役者が演じる。珍しくないことですが、やはりちょっと違和感は否めませんでした。
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4 コメント

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芸術は爆発だ! (松たけ子)
2023-09-11 21:52:26
すねこすりさん、こんばんは!
ベートーヴェンの甥っこといい、執着されるほうはいい迷惑ですよね~。でも私も執着してしまうほど誰かに強い感情を抱いてみたいです!
天才と何とかは紙一重とは言いますが…世界的、天才的な芸術家って、だいたい常軌を逸したイカレ人?それと、美男はほとんどいない?美貌にも恵まれた天才って、すぐに思い浮かばない。
フランス貴族やナチスドイツが英語を喋ってるのは、日本人でも???ですよね~。坂本龍馬や西郷隆盛の役を韓国人が韓国語で演じてるのと同じぐらいの違和感だと思うけど。フランス人やドイツ人は苦笑いで観てるのかしらん?
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芸術家=変人 (すねこすり)
2023-09-10 22:14:04
たけ子さん、こんばんは☆
ベートーヴェンは相当の変人だったらしいし、実子がいなかったので、甥っ子への執着ってのは、割とリアルかもしれませんね。
あんなオッサン(失礼!)が、あんな美しい音楽をいくつも作曲したのかー、って感じですね。
モーツァルトもショパンも、かなりロクでもないヤツだったらしいので、天才もそれ以外の所ではタダの人ってことで、人間臭くて良いですね。
ヨーロッパの国籍不明な映画作りは、時々??になります。現地の方々は違和感ないんですかね。
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運命 (松たけ子)
2023-09-01 21:05:23
えびすこさん、こんばんは!
え!ベートーヴェンって60前で亡くなったんですか?!映画ではどう見ても老人でした!モーツァルトとかチャイコフスキーとか、有名音楽家のエキセントリックでスキャンダラスな人生って、映画の格好のネタになりますね!
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これも「運命」か? (えびすこ)
2023-08-30 13:47:46
ベートーヴェンは60才前で亡くなっていますが、ジャケット写真だと演じている人はもっと上の年齢の様に見えます。やや太って見えていることもあって肖像画のイメージとは少し違うかな?
数年後で没後200年となりますね。
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