ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

スタインウェイ

2009年01月09日 | 音楽とわたし
旦那の大学時代からの友人で、ガラス工芸の雑誌の編集をしているアンドリューが、「これをまうみに見せて」と言って、1枚のDVDを旦那に渡してくれました。
年末年始はバタバタで、仕事が始まってからはもっとバタバタしてたので、もらって1ヶ月以上も経つというのに、まだ見ることができないでいました。
彼からは、見た?という短いメールが何回も送られてきていて、明日、旦那がマンハッタンで彼と会う前に見ておかないとってんで時間を作りました。

スタインウェイのピアノが、どんなふうにして作られるのか、また、その作り手の職人さん達がどんな気持ちで作っているのか、行程順に沿ってとても詳しく紹介しているフィルムでした。

実は去年、Amateur Classical Musician's Association の特別企画で、クィーンズにあるスタインウェイのピアノ工場を見学に行き、一通りの行程を実際に間近に見させてもらいました。
工場で働く男性は、皆筋肉モリモリ、入れ墨をしている人も多く、最初に彼らの姿が目に入った時、ピアノとなんとなくつながらなくて変な感じがしました。
けれども、ピアノのような大きな楽器を手作りするためには、華奢な人間では到底できないという現実に気づいてからは、自分の思い込みがいかに現実離れしていたかと恥ずかしくなりました。
DVDの中にもあったのですが、弦を張るのも、弦をひっかけるポッチンを木に埋め込むのもすべて手作業、ものすごく年季が入る職人技です。
特にそのポッチンを埋め込む場所に、定規も器械もなにも使わず、経験からくる勘と木槌とノミだけで、精巧なモザイク模様を完璧な間隔で作っていくロシア人男性には、思わず惚れ惚れと見入ってしまいました。

工場には、いったい何カ国の人達が働いているのでしょうか。親子や夫婦のカップルもちらほらいました。
みんな、それぞれのセクションで、それぞれの経験を生かし、時には埃まみれに、時には汗だくになって、一つのピアノを約1年がかりで作り上げます。
一台のピアノに、なんと300人もの人達の手がかかっているのだそうです。
彼らの手で、コツコツ丁寧に大胆に作られていったピアノを、わたしもいつか、自分の部屋に迎えることができるかなあ。

だんだんと前のめりになって、画面に顔が近づいていくわたしを横で見ていた旦那が、「いつかきっと、多分、いや、もしかしたらゴニョゴニョ……」

気持ちだけいただいとくね。ありがとさん。



コメント
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