ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

お好み焼きでいっとこか

2010年07月15日 | 家族とわたし
たま~に、薄い豚バラ肉をカリッカリに焼いたお好み焼きがめちゃくちゃ食べたくなる。
生地の中身はシンプルに、みじん切りしたキャベツ、ネギ、紅ショウガ、それと干しえび。かなり少なめの粉に人数分の卵と牛乳少々を入れて混ぜ混ぜ!

「今夜はお好み焼きやしな」と威勢良くご機嫌に言うと、
「……」どぇ~めっちゃ暗いし

「ボクは……お好み焼きっていう気分じゃない」
「なんでよ?」
「脂っこいし……」
「ほな、いつもより早い目に食べるんやったらどうよ?」
「まあ……」
「何時ぐらいやったらええん?」
「6時とか6時半とか」

結局その晩は、お互いが7時過ぎまで仕事だったので、お好み焼きはあきらめて、適当に軽い物を食べた。

次の日、再び挑戦。いっぺん食べたくなったら、どないしても食べたいのがお好み焼きなのだ!

「今日はわたし、仕事が4時に終わるねんけどそっちは?」
「6時半」
「じゃあ、お好み焼き作ってもいい?」
「う~ん……ボクが6時半に帰ってきてすぐに食べられるんやったら」
「大丈夫」
「あ、でも、半分しかいらんし」
はいはい、どうにでもお好きなようにしておくんなはれ。わたしはバッチリ1枚丸々食べるし。


理想を追い過ぎたらあかんのはわかってるけど、「今日はお好み焼きやで~」「お~ええなええな~」「カリカリに焼いた豚玉やで~」「お~ええなええな~」と、シンプルに会話が終了する男やったらどんなにええか……などと思ってしまう。

旦那は健康管理ということについては、自分にも他人にも真剣。どれだけいい眠りを得られるか。それがすべてにつながるので、眠りを妨げる可能性があることにピリピリと反応する。
眠る直前までのパソコン、脂っこい食事、または遅過ぎる時間帯の夕飯、プラクティカルな会話(いわゆる、この支払いは終わってるの?とか、軽く聞いても×)を、親の仇のように毛嫌いする。
もう20年近く一緒にいるので、たいがいのことは慣れたし、わたしも同化したことはいっぱいあるけど、たまに、この神経質さにイラっとくる。

6時半にすぐ食べられるように……と気を張っていたら、旦那からチャットが来た。
「あ、今日さ、ランチが遅かったから、6時半にはお腹が空かないと思う」
「で?」
「6時半に家には戻るけど、それから軽くストレッチしたり散歩したりするから、7時でいいし」
「はいはい」

かくして旦那は6時半に帰ってきた。が、台所でうろうろ、リビングでうろうろ、一向になにもしようとしない。
なんやねん?!どないやねん?!と、横目で様子を伺いながら焼き始めるタイミングを計るわたし。
すると……冷蔵庫を開けてビールを飲み出したではないか?!
むっかぁ~

健康オタクなくせに、欲望にコロリと弱い。なんか最悪ちゃうん?

ご希望通り半分に切った。わたしは丸々一枚食べたかったけど、なんか気疲れして焼く気が失せた。
「青のりはどこ?」
「あっ……切らしてるかも」
ごそごそとお多福ソースを探し出してきた旦那、ふと見ると、もう片方の手に黒いブツを持っている……。
「なにすんの?」
「え?青のり無いから」
「それ、焼き海苔やん」
「いっしょやん」
「ちゃうやん」
「海苔やん」

記念写真撮っといて、という旦那の要望に応えて。


「今日のは特別うまい!」

今頃褒めてもあかんわい!

コメント (6)
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ふたりの師匠

2010年07月15日 | 音楽とわたし
わたしには、ふたりの師匠がいます。
ひとりは、8才からティーン過ぎまでの間、飽くなき探究心と忍耐力と情熱でもって、わたしのピアノの基礎を築き上げてくれた人。女性です。
もうひとりは、いろいろとあって大人になって、夢とピアノをスッパリあきらめたわたしがズブズブと入っていった川に、信じられないほどの忍耐力でもって橋をかけ、わたしをすくいあげてくれた人。男性です。

子供の頃の師匠T先生は、ついこの間、マンハッタン留学しているA子を訪問がてら、こちらにも訪ねてきてくれました。
巨大な会場で一緒にゴスペルを歌ったり、A子のアパートメント近くのリバーサイドパークを散歩したりしながら、いろんな話をしました。
彼女は、それはそれは素晴らしいピアノ教師であり、物事を明るい方向に捉えたり、人のいい所を見つけることの天才です。
彼女の家に電話をかけると、その時彼女がどんな気持ちでいようが、どんな体調であろうが、『本日は晴天なり!そして気分は爽快なり!』的な、それはもう気持ちのいい声が返ってきます。真似しようったってできないすごい明るさです。

「わたしね、自分で言うのもなんだけど、教え子の持つ潜在的な能力、性格や知能なんかを総合的に見抜いて、家庭環境などとも照らし合わせながら、その子供のどういう部分を伸ばしてあげられるか、それにはどうしたらいいか、そういうことが最近はおもしろいように、手に取るように見えてくるのよ」と、静かに、けれども熱く語ってくれた師匠。
彼女が、自分の経験のひとつひとつを無駄にせず、大事に保存したり、引き出しから出して再考したり研究したりしてきたことのご褒美だと思います。
「まうみちゃん、例えばさ、音の長さをどうやったらうまく教えることができると思う?」
「う~ん、いろいろやってみたけど、今は音符を木に例えて、木の本数を数えるのは木を見た時やけど、長さはその木と木の間で、だから、ふたつ伸ばしたい時は3本目の木まで数えた時に、指を鍵盤から離してごらんって感じかなあ」
「それだとややっこしくない?わかりにくいって思ってる子いない?」
「いるいる!」
「音符の長さはすごく抽象的だから、いっそのこと、定規とかを使って、本当の、目に見える長さで説明してあげてごらん?それで、その長さを指で辿っている間、お腹を使って息をふうーっと吐かせたりするといいよ。ほら、実感しやすいでしょ?」
目からウロコ……パラパラパラァ~!

「M子さん(←生意気にもわたしは、最近先生と呼ばずに名前で呼ばせていただいております)、お願いだから、そういういろんなノウハウを公開レッスンとか講演とかで、世の中にどんどん伝えていって欲しい!!真剣にそうして欲しい!!お願い!!」
「いや、でも、それがわたしにはできそうもないのよ」
「そこをなんとか!!」
「う~ん、多分だめ。しないと思う」
ううぅ~……わたしが彼女の近くに住んでたらなあ……もうガンガン長時間インタビューなり突撃レッスン見学なりを重ねて、一冊の本にしちゃうのにぃ~!きぃ~!


そうしてもうひと方、大人になってからの師匠から昨日、突如、「スカイプしよぉ~?」というお誘いがありました。
へ??スカイプとな??
彼のスカイプ名を聞き、急いで登録を済ませ、一日の疲れがドドッと出たまんまの顔でしたが、エイッとばかりにカメラの前に座りました。
おお懐かしやぁ~!Kちゃん!(さらに生意気さが増したわたし、ずいぶん前からH先生のことをKちゃんと呼ばせていただいております。おいおい)

「いやあ、全然お変わりなくて~(もう妖怪の域に達してるのではないかと……)お元気そうでなによりです!」
「まうみちゃん、ちょっと痩せた?」(うっふっふっ……これ、前に母とのスカイプでゲットした、暗めの照明でナニゲにちょっと痩せて見せる手を使いました)

いろいろと、彼のコンサートのこと、仕事のことなどを話しているうちに、彼がなんと67才であることがわかりました!見えねぇ~!!
「ぼくね、これからうんとピアノを弾いて、もっともっと成長していくよ。それが自分に与えられた使命だってわかったから」
67才というと、わたしの父が亡くなった年です。
父は亡くなる少し前に、試せることならなんでも試したいと、当時アメリカで開発された、癌に対する新しい細胞治療を受けられないものかと、わたしに聞いてきたことがありました。
父はその時すでにいろんな方法を試した後で、すでに身体が衰弱しきっていて、今さらこんな体調で長時間の飛行機など耐えられるわけがないと、したり顔で父を言い負かしてしまいました。
「もういい意味であきらめよう。もうあれこれと足掻くのはよそう。それより、どうしたら穏やかに、いい形で、残された日を過ごせるかを考えようよ」
父はそれっきり、二度と、新しい治療について懇願したり質問したりしなくなり、わたしはそれを勝手に、ああ、やっといい意味で踏ん切りをつけてくれた、などと思っていました。
父はその後、二週間ばかり経った寒い冬の、とても晴れた日の午後に、静かに、けれども最後まで生きたい気持ちを持ち続けたまま亡くなりました。
パソコンのモニターに映るH先生の若々しい顔を眺めているうちに、同い年でこの世から去らなければならなかった父の無念と執着心を、やっと理解できたような気がしました。
なんて酷い言葉を投げかけてしまったのでしょう。惨いことをする娘もいたもんです。
H先生と父は、同じ誕生日の同じ干支。丁度ひとまわり父より若いのです。
父は、生きている時から、自分のために翻弄された娘をなんとか救おうと、生き仏になってH先生にわたしを救って欲しいと念じたのでしょうか……。

もしかしたら、8月の上旬に、今度はH先生がアメリカに来てくださるかも、という話があがりました。
今年は師匠の年!
「いやあ、世界はほんと、すごいね。こんなふうにまうみちゃんとライブで、しかも顔を見ながら話せるようになるなんて思ってもいなかった。ああ楽しい!」
「ほんと、ありがたいです!ほんの10年前には考えてもみなかったことがどんどんできるようになって」
「ねえ、スカイプでレッスンしよっか?」
「げげっ!!」
いきなり脇の下にジワリと汗をかくようなことを最後に言って、師匠はニヤニヤしながら画面から消えていきました。

練習が全然できてないのにレッスンだとか、演奏会の本番だとかが迫っている夢を見そうだと心配でしたが、とりあえず無事に朝まで眠れたようです。やれやれ。


今日から晴れの日が続くという予報が出ました。久しぶりに追いかけっこして遊ぶちびっ子リスちゃん達。
穴を掘ってはカリカリ、また掘ってはカリカリ、追いかけっこの合間にカリカリ。かわいいけれどせわしぃ~!せわしいけどかわいぃ~!







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