わたしの母は、今年の11月で御年76歳。めでたく喜寿を迎える。
そして彼女は、なにを隠そう、『妖怪つるつるオババ』なのである。
さらに彼女は、永久歯32本すべて、虫歯無しの本物の歯を持っている。
わたしは密かに、彼女は頑強に自分を守るべく工夫をし、わたしと弟にカルシウムやタンパク質を与えなかったのではないかと疑っていた。
今年の晩春に日本に行き、久しぶりに母に逢い、そのツルツルっぷりにまた感動したりちょっぴり嫉妬したり。
けれども、連れていってもらった下呂温泉の、並んで眠ったベッドの上で、わたしはある事実を目撃した。
下呂の素晴らしい温泉を満喫し、美味しい料理を楽しくいただいて、大きな部屋でみんな一緒にゆったりと眠った日の翌朝、母とわたしだけはベッドに寝ていて、わたしがうとうとと眠りから覚めた時のことだった。
ふと横を見ると、母は目を閉じているものの、腕が一定の方向にゆっくりと、それも何度も何度も同じ動きをくり返していた。
いったいなにをやってるのだろうと、寝ぼけ眼で見ていると、どうやら首の辺りを軽く撫でているようだ。
けれどもその回数が半端ではない。およそ20分ぐらいの間、その動作はゆっくりゆっくり続いた。
首の周辺が終わると、今度は顔。頬の辺りに手のひらを置いて、またゆっくりと動かす。鼻の下にも指先を置いて撫でる。
いったいいつまでやってるんだろう……と思いながら、ぼんやりとその様子を見ていた。
その間には、足首をグルグルと回したりもして、なかなか手が込んでいるのだった。
つい最近、スカイプをしている時に、ふとその時のことを思い出して聞いてみた。
「あれ、いったいなにやってたん?」
「あ、見てたん。あれはな、リンパのマッサージ。寝起きにパッと起きるより、ああやってリンパをマッサージして、足首とかも動かしてから起きると、身体が楽やってことに気がついてやってるねん。もう十年以上続けてるよ」
「それってもしかして、妖怪つるつるオババのモトかもな。だって、その年でそんなつるつるの肌してる人おらへんもん」
「そうかなあ……(まんざらでもない、ちょっと嬉しそうな声)」
「絶対そうやわ!わたしもやってみよっかな~」
「続けな意味ないと思うよ。あ、それと、起きたら即、顔をちゃんと洗て、化粧水と乳液だけはつける。これはリンパのマッサージよりもっと前からずっと続けてるねんけど、これもええと思うわ。あんたには前から言うてるけど、ちゃんとやってへんやろ?」……図星です……。
そっか……彼女のツルツルは、彼女の日々のコツコツが生み出したもんやったんや。疑ったりしてかんにんやで!
よっし……妖怪つるつるオババの娘としては、ここはひとつ根気良くやってみようかと決心した。
「わたしはな、60過ぎから始めてんで。あんたはまだ50過ぎやろ?わたしより10年早よから始められるんやから、そらもうきれいになれるんちゃう?」
なんというポジティブな励ましのお言葉!
どうでしょ?わたしと一緒に、みなさんも『妖怪つるつるオババ』になりませんか?
そして彼女は、なにを隠そう、『妖怪つるつるオババ』なのである。
さらに彼女は、永久歯32本すべて、虫歯無しの本物の歯を持っている。
わたしは密かに、彼女は頑強に自分を守るべく工夫をし、わたしと弟にカルシウムやタンパク質を与えなかったのではないかと疑っていた。
今年の晩春に日本に行き、久しぶりに母に逢い、そのツルツルっぷりにまた感動したりちょっぴり嫉妬したり。
けれども、連れていってもらった下呂温泉の、並んで眠ったベッドの上で、わたしはある事実を目撃した。
下呂の素晴らしい温泉を満喫し、美味しい料理を楽しくいただいて、大きな部屋でみんな一緒にゆったりと眠った日の翌朝、母とわたしだけはベッドに寝ていて、わたしがうとうとと眠りから覚めた時のことだった。
ふと横を見ると、母は目を閉じているものの、腕が一定の方向にゆっくりと、それも何度も何度も同じ動きをくり返していた。
いったいなにをやってるのだろうと、寝ぼけ眼で見ていると、どうやら首の辺りを軽く撫でているようだ。
けれどもその回数が半端ではない。およそ20分ぐらいの間、その動作はゆっくりゆっくり続いた。
首の周辺が終わると、今度は顔。頬の辺りに手のひらを置いて、またゆっくりと動かす。鼻の下にも指先を置いて撫でる。
いったいいつまでやってるんだろう……と思いながら、ぼんやりとその様子を見ていた。
その間には、足首をグルグルと回したりもして、なかなか手が込んでいるのだった。
つい最近、スカイプをしている時に、ふとその時のことを思い出して聞いてみた。
「あれ、いったいなにやってたん?」
「あ、見てたん。あれはな、リンパのマッサージ。寝起きにパッと起きるより、ああやってリンパをマッサージして、足首とかも動かしてから起きると、身体が楽やってことに気がついてやってるねん。もう十年以上続けてるよ」
「それってもしかして、妖怪つるつるオババのモトかもな。だって、その年でそんなつるつるの肌してる人おらへんもん」
「そうかなあ……(まんざらでもない、ちょっと嬉しそうな声)」
「絶対そうやわ!わたしもやってみよっかな~」
「続けな意味ないと思うよ。あ、それと、起きたら即、顔をちゃんと洗て、化粧水と乳液だけはつける。これはリンパのマッサージよりもっと前からずっと続けてるねんけど、これもええと思うわ。あんたには前から言うてるけど、ちゃんとやってへんやろ?」……図星です……。
そっか……彼女のツルツルは、彼女の日々のコツコツが生み出したもんやったんや。疑ったりしてかんにんやで!
よっし……妖怪つるつるオババの娘としては、ここはひとつ根気良くやってみようかと決心した。
「わたしはな、60過ぎから始めてんで。あんたはまだ50過ぎやろ?わたしより10年早よから始められるんやから、そらもうきれいになれるんちゃう?」
なんというポジティブな励ましのお言葉!
どうでしょ?わたしと一緒に、みなさんも『妖怪つるつるオババ』になりませんか?