ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

肉のカーテン悲話

2010年07月12日 | ひとりごと
わたしは見てしまった
というより、視界に入ってきた
それは、なにに例えたらいいだろう
なにかしっかりした物に包まれた上質のゼリー
いや、違う、ただの皮に覆われたただの脂肪のカタマリだ

それが、見事に、まるで合成画像のように、ぷるんぷるんと左右に大きく揺れた。

ボクシングオタクのTが(大学では実際にボクシング倶楽部に入っていた)、冗談混じりによく、わたしの背中や腕に向かってパンチを食らわす構えをする。
たとえその手がまっすぐに伸びても、ほとんど当たらないし、届いたとしてもかする程度だ。当たり前だけど……。
それが昨日は……たまたまに距離を間違えたか、すすいだ食器を食器立てに置こうと伸ばしたわたしの二の腕に軽くパンチが入った。
指先が食器を掴んでいても、肩から肘にかけて見事に弛緩しているわたしの腕の肉、いや、絶え間なく緩んでいるとも言えるあの部分に……。
そしてその、実際に「ぷるんぷるん」という音が聞こえてきそうなぐらいの、芸術的とも言える『ぷるんぷるん振動』が、ものの見事に発生したのである。

一瞬の静寂の後、わたしは濡れた手のままTを追いかけゲンコツをかまし、Tは「ごめんごめん!」と言いながら大笑い。
「けど、Bはなんで笑わんかったん?ボク、てっきりBも笑てる思て顔みたけど笑てなかったし……なんで?」
「いや……もごもごもご……」
あんたら、ふたりとも退場~!!


わたしの息子は、ふたりとも、旦那に言わせると、母親をとっても愛しているそうだ。
そして、日本人男子特有の照れもあって、ほんとは触りたいのに、ほんとは抱きしめたいのに、それがどうしてもできなくて、それが二の腕攻撃に変格活用(わたしの息子は『あのねのね』か!)する、というのが旦那の持論。
Kが小学生の頃、わたしの二の腕に指が届くようになってからというもの、一緒に歩くと必ず、わたしの二の腕の柔らかい部分をつまんだ。
ちょっとつまむのではなく、ずっと……。まるで、迷子になるのを心配するあまり、母親のブラウスやスカートの端を握る子供のように……。
そんなのを後ろから歩く人に見られたらかっこ悪いので、やめなさい!と言うとサッと手を引っ込めるが、すぐにまたつまんでいた。
TはそんなKを、ニヤニヤしたり、時にはちょっと羨ましがったりしながら見ているだけだった。
彼は決してそういうことはしない。やっていい事と悪い事をちゃんとわきまえている長男くんなのだから。
なのに……高校を卒業して、親元から遠く離れた大学に通い出し、何年か経った帰省中のこと、いつもと違うつまみ方だと後ろをヒョイと振り向くと……、
てぃ、Tぃ~!!!お~ま~え~も~かぁ~!!!

……という歴史があって、今に至っているわけだけど、ますます掴みやすく掴み心地も良くなったわたしの二の腕は、まるでKとTのペットのように愛されているわけで……もうこの際、それを喜んだ方がいい、というのは旦那の意見……いや、そこまではまだ落ちたくない……。

わたしだっていろいろやってはみた。ダンベル体操に腕立て伏せ、怪しいストレッチなどなど……でも、長続きしない。
YMCAのマシーンだって使ってみた。けど、ひとりでやってる時に使い方を間違えて、半年ばかり痛くて大変だった。
まあ、この肉も役立つことはある。ピアノの音がなかなかによろしい。自然にかかる重みと柔軟さ。
ただ、弾いている時の震えはただ事ではないので、それを見て目眩を起こされても困る……なので、腕丸出しのすてきなドレスは着られない。
それが少々残念ではある……。

う~ん……それにしてもあの『ぷるんぷるん』、かなり衝撃的な動画だった。
Tを追いかけたりしながら、そしてゲンコツをかましたりしながら、心の奥ではカッコ悪ぅ~と自分で自分に言っていた。
今年の夏は、物心ついてから後、二の腕のぶっとさを気にし出してから以降、初めて腕を丸出しにしている。
隠してばかりいると、自分だって忘れてしまい、なんとかしようという気持ちがまた萎える。そう思ったからだ。
見るたびに、立派やな~……とため息が出るけど、出したままにしてなかったらきっと、あの一瞬は無かったのだ。だから、これでいいのだ

今日から、パソコンの前に座って何かを読んでいるだけの時は必ず、ダンベルで二の腕体操をすることにした。
ちゃんと周りのサイズも計った。毎月一回計って、グラフにしていくつもり。
わたしはかなり本気です

コメント (6)
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