パートナーのアルベルトをずっとずっと待たせていた、ガーシュインのピアノコンチェルト(2台ピアノ)の合わせ練習が、ついに始まってしまった。
今日のACMAの月例演奏会の前に、少し早めに会場に行って、そこでとにかく合わせてみることにした。
彼がこの曲をしたいと申し出てきた人なので、彼がソロパート、わたしがオーケストラパートを担当する。
アルベルトはガーシュインオタクで、ガーシュインの曲ならなんでも大好き。
もちろんそれだけではなくてバリバリ弾ける。
で、そのガーシュインオタクの相手になってから今回で三曲目なのだけど、「他のピアニストにも相手をしてって頼んでるんだけど、まうみしかウンと言ってくれないんだよね」とアルベルトは愚痴る。
ほんとはわたしだって、あんまり引き受けたくないんだよ~アルベルト。
曲に興味があるからついつい引き受けてしまうのだけど、彼はどちらかというとアンサンブルに適していないピアニスト。
音を聞くより弾く。相手に合わせるより合わせさせる。音が圧倒的に大きい。テンポがどんどん加速する。
なので、練習をするとヘトヘトに疲れてしまう。
特に今回は、指の故障もあるし、二週間後に控えているオーディションの練習もあるしで、合わせるけれども、テンポは遅め、音も弱めで弾かせて欲しいと、何回も何回も伝えてあった。
……のだけど……、
「まうみぃ~!遅いよぉ~!そんなのだめだよぉ~!ほらほらほらぁ~!もっともっと!」
あかん……盛り上がりまくってしもてる……
次回は来週の日曜日。
「今度までにはテンポ上げといてね、ね、ね!練習練習っ!」
やっぱオーディションが終わってから始めたらよかった……
今日のACMAの月例演奏会では、オーディションの日にどうしても都合がつかないので、代わりに今夜の舞台で演奏させて欲しい、と言ってきたグループがふたつあった。
そのひとつはヴァイオリンとピアノ。ブラームスのソナタで、二人ともとてもうまい演奏者だった。
あとのグループはピアノの連弾。このふたりもすごくうまいんだけど、なんというか、弾いているふたりの雰囲気が……こんなこと言うといけないのだけど、ナルシストの権化のようなおじさんに、舐めるように愛されている年下の愛人……みたいな感じで、これがなかなかに見ていて気持ちが悪いのだった。
演奏はほんとにうまいんだけど……。
でも、四人とも、強力なライバルになりそう。特にヴァイオリンとピアノで、フランクのソナタを演奏するわたしとサラにとっては……。
ヤバいなあ……。
演奏会の直前に、初めて会場にやって来た、昔はきっと大輪の花を咲かせていたであろう歌手の女性がやって来て、
「あなた、ピアノ弾けるわよね。ちょっとわたしの伴奏をしてみてくれないかしら」といきなりプロポーズされた。
で、ホールの上階にあるレッスン室の空いている所を見つけて、そこで数曲、いきなり伴奏させられた。
「まあ、初見がすごくできるのね。あなた、オーディションと5月の月例演奏会で、わたしの伴奏してくれないかしら?」
めちゃくちゃ積極的?!
「いや、あの、オーディションって……あと2週間しかありませんよ」と、たじたじとなって答えると、それがどうしたのかしら?という表情。
なので、こちらも少しはっきりとした態度を見せた方がいいと思い、「どんな場所のどんなサイズの舞台であれ、人に自分の演奏を聞いてもらおうと思うのなら、少なくとも三回以上はきちんと合わせた方がいいと思います。なので、今年のオーディションは見送って、来年のそれを目指された方がいいですよ」とはっきり言った。
結局、彼女が手当たり次第に都合を聞いたピアニストにすべて、今は忙しいので、という理由で断られ、またわたしの所に戻ってきた。
「もし6月まで待ってもらえるなら、月例演奏会の伴奏はできます」と答えると、少しは気持ちがおさまったようでこちらもホッとした。
ACMAは誰でももちろんウェルカムなのだけど、やっぱいろんな人がいるもんなあ。
本拠地が新しいビルディングに移ったら、いったいそれからどんな風になっていくんだろう。
会の後、超久しぶりにみんなと一緒に食事をして、それからあさこのアパートメントに寄った。
彼女が日本に送りたい楽譜の箱を受け取りに行くのと、帰ってしまうあさことちょっとでも一緒に時間を過ごしたいのと、その両方の理由で。
美味しいペパーミントティを飲みながら、帰郷前の最後の大プロジェクト、ピラテスのインストラクターの資格を取るべく、ただ今必死で人体解剖学を学んでいる(もちろん英語で)彼女に、六年前に同じことを学んだ旦那が、ふざけていろいろ質問をしたりしていじめる。
ピラテスは、呼吸法を活用しながら、主に体幹の深層筋(インナーマッスル)をゆるやかに鍛えるので、姿勢が良くなるし、動作の無駄が無くなる。
それが、体自体が楽器となる歌手の、体づくりに役立つのではないかと、あさこは考えたのだった。
すごいなああさこ!頑張れあさこ!
さて、その一方で、あさこが帰ってしまうのがとても寂しい旦那。
大丈夫、彼女はまた来るよ。きっと来る。それまでわたしで我慢しなさい。
今日のACMAの月例演奏会の前に、少し早めに会場に行って、そこでとにかく合わせてみることにした。
彼がこの曲をしたいと申し出てきた人なので、彼がソロパート、わたしがオーケストラパートを担当する。
アルベルトはガーシュインオタクで、ガーシュインの曲ならなんでも大好き。
もちろんそれだけではなくてバリバリ弾ける。
で、そのガーシュインオタクの相手になってから今回で三曲目なのだけど、「他のピアニストにも相手をしてって頼んでるんだけど、まうみしかウンと言ってくれないんだよね」とアルベルトは愚痴る。
ほんとはわたしだって、あんまり引き受けたくないんだよ~アルベルト。
曲に興味があるからついつい引き受けてしまうのだけど、彼はどちらかというとアンサンブルに適していないピアニスト。
音を聞くより弾く。相手に合わせるより合わせさせる。音が圧倒的に大きい。テンポがどんどん加速する。
なので、練習をするとヘトヘトに疲れてしまう。
特に今回は、指の故障もあるし、二週間後に控えているオーディションの練習もあるしで、合わせるけれども、テンポは遅め、音も弱めで弾かせて欲しいと、何回も何回も伝えてあった。
……のだけど……、
「まうみぃ~!遅いよぉ~!そんなのだめだよぉ~!ほらほらほらぁ~!もっともっと!」
あかん……盛り上がりまくってしもてる……
次回は来週の日曜日。
「今度までにはテンポ上げといてね、ね、ね!練習練習っ!」
やっぱオーディションが終わってから始めたらよかった……
今日のACMAの月例演奏会では、オーディションの日にどうしても都合がつかないので、代わりに今夜の舞台で演奏させて欲しい、と言ってきたグループがふたつあった。
そのひとつはヴァイオリンとピアノ。ブラームスのソナタで、二人ともとてもうまい演奏者だった。
あとのグループはピアノの連弾。このふたりもすごくうまいんだけど、なんというか、弾いているふたりの雰囲気が……こんなこと言うといけないのだけど、ナルシストの権化のようなおじさんに、舐めるように愛されている年下の愛人……みたいな感じで、これがなかなかに見ていて気持ちが悪いのだった。
演奏はほんとにうまいんだけど……。
でも、四人とも、強力なライバルになりそう。特にヴァイオリンとピアノで、フランクのソナタを演奏するわたしとサラにとっては……。
ヤバいなあ……。
演奏会の直前に、初めて会場にやって来た、昔はきっと大輪の花を咲かせていたであろう歌手の女性がやって来て、
「あなた、ピアノ弾けるわよね。ちょっとわたしの伴奏をしてみてくれないかしら」といきなりプロポーズされた。
で、ホールの上階にあるレッスン室の空いている所を見つけて、そこで数曲、いきなり伴奏させられた。
「まあ、初見がすごくできるのね。あなた、オーディションと5月の月例演奏会で、わたしの伴奏してくれないかしら?」
めちゃくちゃ積極的?!
「いや、あの、オーディションって……あと2週間しかありませんよ」と、たじたじとなって答えると、それがどうしたのかしら?という表情。
なので、こちらも少しはっきりとした態度を見せた方がいいと思い、「どんな場所のどんなサイズの舞台であれ、人に自分の演奏を聞いてもらおうと思うのなら、少なくとも三回以上はきちんと合わせた方がいいと思います。なので、今年のオーディションは見送って、来年のそれを目指された方がいいですよ」とはっきり言った。
結局、彼女が手当たり次第に都合を聞いたピアニストにすべて、今は忙しいので、という理由で断られ、またわたしの所に戻ってきた。
「もし6月まで待ってもらえるなら、月例演奏会の伴奏はできます」と答えると、少しは気持ちがおさまったようでこちらもホッとした。
ACMAは誰でももちろんウェルカムなのだけど、やっぱいろんな人がいるもんなあ。
本拠地が新しいビルディングに移ったら、いったいそれからどんな風になっていくんだろう。
会の後、超久しぶりにみんなと一緒に食事をして、それからあさこのアパートメントに寄った。
彼女が日本に送りたい楽譜の箱を受け取りに行くのと、帰ってしまうあさことちょっとでも一緒に時間を過ごしたいのと、その両方の理由で。
美味しいペパーミントティを飲みながら、帰郷前の最後の大プロジェクト、ピラテスのインストラクターの資格を取るべく、ただ今必死で人体解剖学を学んでいる(もちろん英語で)彼女に、六年前に同じことを学んだ旦那が、ふざけていろいろ質問をしたりしていじめる。
ピラテスは、呼吸法を活用しながら、主に体幹の深層筋(インナーマッスル)をゆるやかに鍛えるので、姿勢が良くなるし、動作の無駄が無くなる。
それが、体自体が楽器となる歌手の、体づくりに役立つのではないかと、あさこは考えたのだった。
すごいなああさこ!頑張れあさこ!
さて、その一方で、あさこが帰ってしまうのがとても寂しい旦那。
大丈夫、彼女はまた来るよ。きっと来る。それまでわたしで我慢しなさい。