宮田珠己さんの'09年作品「スットコランド日記」を読みました。2008年4月7日から2009年3月31日までのWeb日記をまとめたものです。
題名のスットコランドについては「今住んでいるマンションの窓からスコットランドが見える。マンションは崖上にあって、崖下にはゆるやかな丘があり、そこは畑が広がってその先に雑木林があるために、その一画を薄目で見ると、スコットランドに見えるのである。(以下略)」ということに由来しています。なぜ4月7日から始まっているかという点については、「(執筆依頼のあった4月9日の)2日前から書いてあるのは、区切りがいい4月1日まで遡ってそこから書こうとしたためで、それが1日じゃなくて7日から始まっているのは、そこまで遡ったけれどあとは面倒くさくなったからである。」とのことです。私と同じだと思ったのは、プラネタリウムにはまっていること、これまで読んだ日記文学ベストワンは島尾敏雄『日々の移ろい』であること、佐藤多佳子さんの「夏から夏へ」や三崎亜記さんの「廃墟建築士」(高野秀行さんも絶賛らしい)を読んでいることなど多数ありました。また面白いと思ったのは、仕事ぬきなら単純にヨーロッパ旅行をしてみたいと高野秀行さんと語り合っていること、ジェットコースターネタの文が編集者には敬遠されること、ロボットの動きを人間や動物に似せてくるとある時点でロボットが急に無気味に見えて来る瞬間(「無気味の谷」)があり、それを乗り越えて初めて人間や動物の動きを再現できるようになるということ、高野秀行さんと内澤旬子さんと一緒にエンタメ・ノンフ文芸部を発足して皆で小説家を目指し始めたこと、味にこだわるようになるのは、食べるものを選ぶことによって体の弱体化に対処するためだという説などでした。宮田さんのいつもの本のように思わず笑ってしまう小ネタ満載なのですが、中でも笑ってしまったのは、飛行機に導入してほしいものベスト3がデッキ(新鮮な空気を吸って気分をリフレッシュするため)・パチンコ(前の椅子に取り付ければ距離的にも丁度良く、時間潰しにいいし、当たれたマイル交換できるようにすればなお良し)・磯(自然と触れあってリラックスする)というアイディアでした。また、この本で取り上げられている本の中で読みたいと思ったものは、女の人はエロスが自由に描けていいと宮田さんが言っている倉橋由美子さんの「酔郷譚」、読んで興奮したと言う飯嶋和一「始祖鳥記」、2008年ベストワンという川村湊「牛頭天王と蘇民将来伝説」、エグイと言う平山夢明さんと吉野朔実さんの対談集「狂気な作家のつくり方」、はずれがないという岡谷公二さん(「南の精神誌」)と中野美代子さん、行ってみたいと思ったのは群馬・水上温泉のハイドロスピード、ホンノンボを思わせる妙義山、京都の益富地学会館という石の博物館でした。
宮田さんが苦労して本を書いていることを初めて知りましたが、本の面白さはその苦労の甲斐あって素晴らしいものになっていると思います。文句無しにオススメです。
題名のスットコランドについては「今住んでいるマンションの窓からスコットランドが見える。マンションは崖上にあって、崖下にはゆるやかな丘があり、そこは畑が広がってその先に雑木林があるために、その一画を薄目で見ると、スコットランドに見えるのである。(以下略)」ということに由来しています。なぜ4月7日から始まっているかという点については、「(執筆依頼のあった4月9日の)2日前から書いてあるのは、区切りがいい4月1日まで遡ってそこから書こうとしたためで、それが1日じゃなくて7日から始まっているのは、そこまで遡ったけれどあとは面倒くさくなったからである。」とのことです。私と同じだと思ったのは、プラネタリウムにはまっていること、これまで読んだ日記文学ベストワンは島尾敏雄『日々の移ろい』であること、佐藤多佳子さんの「夏から夏へ」や三崎亜記さんの「廃墟建築士」(高野秀行さんも絶賛らしい)を読んでいることなど多数ありました。また面白いと思ったのは、仕事ぬきなら単純にヨーロッパ旅行をしてみたいと高野秀行さんと語り合っていること、ジェットコースターネタの文が編集者には敬遠されること、ロボットの動きを人間や動物に似せてくるとある時点でロボットが急に無気味に見えて来る瞬間(「無気味の谷」)があり、それを乗り越えて初めて人間や動物の動きを再現できるようになるということ、高野秀行さんと内澤旬子さんと一緒にエンタメ・ノンフ文芸部を発足して皆で小説家を目指し始めたこと、味にこだわるようになるのは、食べるものを選ぶことによって体の弱体化に対処するためだという説などでした。宮田さんのいつもの本のように思わず笑ってしまう小ネタ満載なのですが、中でも笑ってしまったのは、飛行機に導入してほしいものベスト3がデッキ(新鮮な空気を吸って気分をリフレッシュするため)・パチンコ(前の椅子に取り付ければ距離的にも丁度良く、時間潰しにいいし、当たれたマイル交換できるようにすればなお良し)・磯(自然と触れあってリラックスする)というアイディアでした。また、この本で取り上げられている本の中で読みたいと思ったものは、女の人はエロスが自由に描けていいと宮田さんが言っている倉橋由美子さんの「酔郷譚」、読んで興奮したと言う飯嶋和一「始祖鳥記」、2008年ベストワンという川村湊「牛頭天王と蘇民将来伝説」、エグイと言う平山夢明さんと吉野朔実さんの対談集「狂気な作家のつくり方」、はずれがないという岡谷公二さん(「南の精神誌」)と中野美代子さん、行ってみたいと思ったのは群馬・水上温泉のハイドロスピード、ホンノンボを思わせる妙義山、京都の益富地学会館という石の博物館でした。
宮田さんが苦労して本を書いていることを初めて知りましたが、本の面白さはその苦労の甲斐あって素晴らしいものになっていると思います。文句無しにオススメです。