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谷崎潤一郎全集・第四巻の短編

2011-06-03 00:20:00 | ノンジャンル
 『亡友』は、中学時代からの私の友人である大隅君が、その質朴と聡明にもかかわらず貪欲な性欲のため、結婚直後に昔の女と関係を持ち、それを後悔して自殺的死を迎える話。(1916年作)
 『美男』は、私の知人のKが妻子があっても女遊びを止めず、とうとう芸者上がりの女将に青島に連れていかれてしまう話。(1916年作)
 『病蓐の幻想』は、歯痛に意識が朦朧とした彼が、大地震が来る幻想に悩む話。(1916年作)
 『人魚の嘆き』は、ことごとくの快楽に倦み疲れた中国の貴公子が、欧羅巴人によってもたらされた人魚に魅了され、その魔法を見たいがために人魚を海に放つ話。(1916年作)
 『魔術師』は、魔術師の公演で私が半羊神の姿にされ、私の恋人も後を追ってその姿となり、角を永久にからませる話。(1916年作)
 『既婚者と離婚者 ―対話劇―』は、うまく離婚した法学士の話を文学士が聞く対話劇。(1917年発表)
 『鶯姫』は、平安時代に思いを寄せる年老いた女学校の先生が、夢の中で羅生門の青鬼に誘われて自ら赤鬼となり、華族の娘である女学校の生徒の祖先である鶯姫を平安時代でさらおうとしますが、阿部晴明の操る雷神に殺され、目が覚めるという一幕五場の戯曲。(1917年発表)
 『或る男の半日』は、作家の間室のところに、編集者と建具屋と書生が次々と訪ねてきて、その度にそれぞれの言動に影響され、間室が態度をくるくると変えるという一幕の戯曲。(1917年発表)
 『玄装三蔵』は、印度に渡った三蔵法師が地を這う行者、詩を吟じる尼、針の筵に座る行者、無言の行を続ける行者に出会う話。(1917年作)
 『詩人のわかれ』は、昔の3人の雑誌仲間の訪問を受けた、北原白秋モデルの男が、彼らの誘いに乗らずに家に帰ると、ギシュヌの神に褒美を受ける話。(1917作)
 『異端者の悲しみ』は、貧乏な大学生である章三郎が、学校にもいかず友人から金を借りては踏み倒し、妹を肺病で亡くした2ヶ月後にやっと文壇にデビューする話。(1917年発表)
 『晩春日記』は、著者が4月30日から5月4日の間に、丹毒にかかった母を見舞い、腫れ物のできた娘の手術を受けさせるなどしたことを文語で書いたもの。(1917年作)
 『十五夜物語』は、母の薬のために妻を吉原にやむなくやった浪人が、3年待って帰って来た妻との間で思いがさめてしまっているのに気付き、妹を残して二人で心中するという、二幕ものの戯曲。(1917年発表)
 『ハッサン・カンの妖術』は、予が図書館で知り合った印度人によって、現世以外の世界に連れて行かれ、そこで今だ成仏できない母と会うという話。(1917年発表)
 『ラホールより』は、印度のラホールから、偽の聖者の話、放蕩によりクビになった錬金術師の弟子の話、強盗殺人を働いた行者の話、処女に供する大宴会を開いた行者の話、脱獄して僧侶として逃げ終えた政治犯の話、女性の聖者の話などを候文で書いた吉田覚良宛ての手紙。(1917年発表)
 一人称・三人称あり、口語文・文語文・候文あり、小説あり戯曲あり、とバラエティに富んだ短編がありましたが、ファンタジックな『人魚の嘆き』や『鶯姫』、陰惨な終わり方をする『十五夜物語』が特に面白かったと思います。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto