gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

ブルボン小林『ぐっとくる題名』

2011-06-16 05:06:00 | ノンジャンル
 最近、体調が思わしくなく、ストレスがたまって来ていたようなので、久しぶりにビル・エヴァンスのCDを聞いてリフレッシュしました。ヴィレッジ・ヴァンガードにおける初期のライヴ音源(『Sunday at the Village Vanguard』収録の『Alice in Wonderland』)だったのですが、今聞いても全く古びていない素晴らしい演奏にもかかわらず、観客のざわざわという雑談の音が入っているのが、逆にスゴイなあ、と思いました。こんな名演を普段着のように聞いていた、当時の(具体的には'61年6月の)ニューヨーカーの贅沢さっといったらないし、またそんな雑談に囲まれて、こんな名演を残してしまったビルとスコット・ラファロとポール・モチアンもすごいなあと改めて思った次第です。

 さて、山田詠美さんが著書『ライ麦畑で熱血ポンちゃん』の中で紹介していた、ブルボン小林さんの'06年作品『ぐっとくる題名』を読みました。「小説、劇、映画、音楽、漫画、絵画や彫刻、あらゆる作品には『名前』があります。テレビ番組や実用書の類にも。仕事でつくる企画書の類にも、それがどのようなものかを端的に示す『標題』があるでしょう。(中略)どういった題名が心に残るのか。また、心に残る題名には、どのようなテクニックが用いられているのか。僕は真剣に考えてみることにしました。その思考の累積がこの本です。」(「はじめに」からの引用)
 実際、言及されている題名は、登場順に挙げると、マンガ、曲、アルバム、テレビドラマ、絵本、小説、児童文学、句集、テレビゲーム、エッセイ集、映画、同人誌、童話、時代劇、実用書、対談に及び、著者はテーマ別にそれぞれの題名の「ぐっとくる」理由を述べています。そのテーマとは(それぞれの章立てからそのまま引用すると)、「助詞の使い方」「韻とリズム」「言葉と言葉の距離(二物衝撃)」「題名自体が物語である」「濁音と意味不明な単語」「アルファベット混じりの題名」「古めかしい言い方で」「命令してみる」「パロディの題名」「関係性をいわない」「先入観から逸脱する」「日本語+カタカナの題名」「いいかけてやめてみる」「いいきってしまう」「漢字二字の題名」「長い題名」「続編の題名」「題名同士が会話する」「洒落の題名」「読むと、愛着が生じてしまう」「人気歌人に学ぶ」「ぐっとくる題名とは」です。そして巻末に実際に題名が決まるまでの経過が、著者自身の経験から、実用書の場合と小説・コラムの場合に関して述べられています。
 挙げられている数ある題名の中で、私が一番面白いと思ったのは、フジモトマサルさんの絵本の題名『長めのいい部屋』。音は一つも変えずに、まったく違う意味の題名に、しかも普段聞き慣れない新しい言葉を作り出しているところに、思わず「座布団一枚! 」という感じでした。新書で安く手に入れることができる本であり、ちょっとした時間つぶしに最適の本だと思います。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto