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太田光『マボロシの鳥』

2011-09-14 06:44:00 | ノンジャンル
 ダニエル・シュミット監督の'99年作品『ベレジーナ』を、スカパーの洋画★シネフィル・イマジカで見ました。スイスのファッションデザイナー(ジェラルディン・チャップリン)がゴシップネタを集めるため、純真なロシア娘を政財界の大物たちへ愛人として送り込みますが、やがて彼らの腐敗ぶりを知ったロシア娘は国外退去処分となり、窮地に陥った彼女は愛人の一人の将軍がリーダーである秘密組織に対して、将軍の代理として指令を出すと、その秘密組織は政財界の要人を次々と暗殺し、ロシア娘はスイスの清廉と規律を象徴する女王として、その秘密組織から戴冠を受け、夜空に花火が打ち上がって終わるという「ブラックコメディ」でした。室内シーンがほとんどを占め、見ていて息苦しさを感じましたが、屋外におけるレナート・ベルタの映像はとても魅力的でした。

 さて、朝日新聞の特集記事「読んで感じる 時代の声」の中で紹介されていた、太田光さんの'10年作品『マボロシの鳥』を読みました。爆笑問題で知られる太田さんの最初の短編集だそうです。
 第一話『荊(いばら)の姫』は、飼っていた小鳥を可愛がるあまり、握りつぶして殺してしまった少女が、やがて荊に包まれてしまいますが、愛する女性に対して抱かれる満足を与えられなかった男が現れて、荊ごと少女を抱きしめると、少女は荊から解放され、彼女に付き添っていた老女は小鳥に姿を変えて去って行くという話。
 次の話『タイムカプセル』は、10年後のおじいちゃんに送ろうと思って埋めたタイムカプセルを掘ろうとした少年が、おじいちゃんが戦争に参加している時に、戦争を起こしているような自分たちと未来を断ち切るために雨霰とおとした爆弾のうちの一つの不発弾に触れて、一瞬にして木っ端みじんにされてしまうという話。
 『人間諸君!』は、戦争によって人類が滅亡に直面し、人智を象徴する風間博士の演説が世界中に中継されますが、博士は「人類は本能からして滅びるしかなく、それを阻止しようと思ったら、神に敵するしかない」と言います。しかしその頃、天敵同士だった一組のシラサギとアマガエルが反逆児という点でたまたま意気投合してしまい、それがきっかけで生態系が変わっていき、その結果人類の滅亡が回避されたという話。
 『ネズミ』では、青年が学校のカフェテリアで銃を乱射して無差別大量殺人を犯した後、自殺しますが、その死体からは悪魔が出て来ます。悪魔は人から人へと居場所を移して今まで生き延びて来ていて、ファウストやラスコーリニコフやヒトラーなどに住んでいた過去を懐かしみます。そして今、醜いものが好きで、中学でイジメに会っている邪悪な少年“ネズミ”に取りつくため、彼が描いた絵に誰をも魅了するバラを描き加えますが、“ネズミ”がそれの美しさを理解せずに皆の前でバラを黒く塗りつぶしたため、悪魔は死に、その後“ネズミ”は自分が好きな「醜い」絵を描き続け、後世に名を残したという話。
 この後も、『魔女』、『マボロシの島』、『冬の人形』、『奇蹟の雪』、『地球発‥‥』と題された短編が続きます。文体はこなれていて、読みやすいのですが、内容の暗さについていけず、私は『ネズミ』まで読んだところで、先を読む気を無くしてしまいました。ただ、人によってはこの本にハマル方もいるようなので、上のあらすじで興味を持たれた方がいらっしゃれば、ご自分の目で確かめることをオススメします。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/