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オオタ・ヴィン監督『夢みる小学校』

2022-04-12 17:14:00 | ノンジャンル
 オオタ・ヴィン監督・製作・撮影・編集の2021年作品『夢みる小学校』を「あつぎのえいがかんkiki」で観ました。
 パンフレットの文章を一部加筆省略して転載させていただくと、
「教室に張られた時間割に大きく書かれているのは「プロジェクト」の文字。体験学習のことで、授業の6割ほどはその時間に当てられています。衣食住をテーマにした5つのプロジェクト(中略)から、好きな活動ができる場所を自分のホームルームに選び、1年間在籍します。年齢別のクラスは存在せず、「小1」も「小6」も一緒。(中略)
(中略)プロジェクトで、子どもたちが問題にぶつかると、まるで小さな科学者のようにじっくりと向き合い、解決しようとあれこれと試し、確かめる時間を大人たちによって守られています。(中略)
「基礎学習」ではプロジェクトから派生した知識を整理していきます。学校の教育目標は「自由な子ども」。それを実現するために、1,自己決定の原則(子どもがいろいろなことを決める)、2,個性化の原則(一人ひとりの違いや興味が大事にされる)、3,体験学習の原則(直接体験や実際生活が学習の中心)の3つを基本方針にしています。
 この学校にいわゆる「先生」はいません。教師は、ふかてぃ、まるちゃんなどのニックネームで呼ばれています。子どもたちを教え、導く存在ではなく、子どもたちとともに歩む「アドバイザー」「お助けマン」的な存在です。
 個々の体験には点数がつけられません。(中略)
映画の主な舞台は、山梨県南アルプス市にある南アルプス子どもの村小学校。晴れた日には富士山が見え、敷地内に飼われたヒツジやニワトリの姿も見えのどかな光景が広がります。ここに通うのは、小学生約140人、中学生約60人。2棟の校舎のほか、体育館そして3棟の寄宿舎もあり、小学校と中学校の共用です。
 映画の撮影時のプロジェクトは「むかしたんけんくらぶ」「おいしいのをつっくる会」「アート&クラフト」「クラフトセンター」「劇団みなさん」の5つ。それぞれのプロジェクトは20人前後、2人以上の「おとな」が担当しています。オオタ監督も、一年間この学校に撮影のために通いました。
南アルプス子どもの村中学校の加藤博校長は、こう語ります。
『ごにかく学校は楽しいだけでいいんだ、というスタンスで、職員は働いています。世の中の人たちは、「がんばれ、がんばれ」と常に言うんですよね。だけど、「がんばらなくていいよ」というメッセージをあえて送る必要もあると思います。
 この学校は、子どもたちも自由ですが、おとなたちにも自由があります。プロジェクトの進め方は、担当するおとなたちの裁量に、かなりの部分が任されているのです。ここは、子どももおとなたちの裁量に、かなりの部分が任されているのです。ここは、子どももおとなも、楽しい学校です。卒業していく子どもたちを見ていると、楽しいことをたくさんできた子のほうが、その後もすごくのびのびと自分の人生を歩んでいると確信しているからです。』」。

 やはりパンフレットから、実際に自分の子どもを南アルプス子どもの村小中学校に通わせている作家の高橋源一郎さんの言葉。「(子どもたちをこの学校に通わせることになった)決め手は、子どもたちの「自由」を尊重してくれるところ。特に、感心したのは「入学を祝う会」。会場の子どもが並んでなかった。行事の時に整列させないんですね。整列すると前が見えないから。つまり合理的な思考なんですよ。普通の学校のシステムは不合理です。(中略)
 自由を尊重するのは、正直言って難しいことです。なかなか理想通りにはいかない。だからこそ「理想」がある。つまり、この学校は、高い目標があって、常に上を向いてそこを目指しげいるということなんですね。それは、なかなかできないことです。」

 私が一番感動的だったのは、小学校の高学年たちがグレタさんの活動に触発され、気候変動を止めるための事案を考えていく場面、「卒業を祝う会」で、一人の女の子が「みんなでレボリューション(革命)と叫ぼう!」と言い、「せ~の」の音頭の後、生徒がみんなで「レボリューション、レボリューション」と叫ぶ場面、一人の先生の「人間みな発達障害なんですよ。ジョブズ、エジソン、アインシュタインらは皆、発達障害でした。今の世の中に適性を求めること自体がナンセンスなんです」と発言する場面、エンディング・タイトルのブルー・ハーツのノリノリの音楽などなどでした。
 自由にものを学べる場を、子どもたちがどれほど求めているのかが分かる映画です。小中学生を子に持つ親に、そして学校の先生たちに特に見てほしい映画でした。