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瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』その1

2022-04-21 05:32:00 | ノンジャンル
 瀬尾まいこさんの2018年作品『そして、バトンは渡された』を読みました。本文の引用から、あらすじを構成するという試みを行なってみると、

 何を作ろうか。気持ちのいいからりとした秋の朝。早くから意気込んで台所へ向かったものの、献立が浮かばない。(中略)
人生の一大事を控えているんだから、ここはかつ丼かな。いや、勝負するわけでもないのにおかしいか。(中略)
 いつか優子ちゃんはそう言ってたっけ。そうだ。ふわふわのオムレツを挟んだサンドイッチにしよう。(後略)

第一章

 困った。全然不幸ではないのだ。(中略)
 優子はありきたりで平凡な名前でありながら、いい名前であるのは事実だ。十七年生きてきて、(中略)「優子」の最大の長所は、どんな苗字ともしっくりくるところだ。
 生まれた時、私は水戸(みと)優子だった。その後、田中優子となり、泉ヶ原(いずみがはら)優子を経て、現在森宮優子を名乗っている。(中略)
「で、園田短大だっけ?」
(担任の向井)先生は私の進路調査票に目をやった。(中略)
「どうして短大へ?(中略)」
「近くで栄養士の資格をとれる学校が、園田短大の生活科学科だったからです。(中略)」
「なるほど、進路については真剣に考えたのね。うん、いいと思う。合格圏内だし」(中略)

「森宮さん、次に結婚するとしたら、意地悪な人としてくれないかな」(中略)
「いい人に囲まれてるって、相当いいことじゃないか」
「そうなんだけど、保護者が次々変わってるのに、苦労の一つもyそいこんでないっていうのもどうかなって。ほら、若いころの苦労は買ってでもしろって言うし」(中略)
 私には父親が三人、母親が二人いる。家族の形態は、十七年間で七回も変わった。(中略)
「血がつながっていない母親は、みんな継母だ」
「あれ、そうなんだ」
 どうやら、私はすでに継母と暮らしていたようだ。(中略)梨花さんはだらしないから物をよく失くしたけど私のものを隠すことはなかったし、面倒だからと大皿料理ばかり作っていたけど私だけおかずを減らすことはしなかった。残念ながら、継母はたいして底意地が悪いわけでもなさそうだ。(中略)
「それに、俺、もう結婚する気はないし」
「そうなの?」(中略)
 父親の風格や威厳なんてものを一切持ち合わせていない森宮さんは、ほくほくした顔で言った。(中略)

 (前略)入学式や始業式。新しいスタートが四月にあるのは正解だと思う。(中略)
 私はどんぶりをのぞきこんで小さなため息をついた。やっぱりかつ丼だ。(中略)
「今年は受験もあるし、高校最後の体育祭に文化祭に、勝負の機会も多いだろう」
「そう……かな」(中略)
 二年生が始まる日の朝も、森宮さんは(中略)かつ丼を用意してくれた。(中略)

 今、私が住んでいるのは、八階建てマンションの六階だ。この辺りでは一番大きなマンションで百部屋以上はあるのに、廊下でもエレベーターでも、不思議なくらい人と出くわさない。(中略)お互い素性も知らずに暮らせるのは、マンションのいいところかもしれない。(中略)

 クラス替えで私は二組となり、教室には去年と同じく向かい先生が入ってきた。(中略)先生は(中略)、
「最後の一年。今年度は、一人一人が自覚を持ってください」
 と私たちのほうを見渡し話を始めた。
 三年生は六クラスある。(中略)向井先生は冷静で厳しいけれど、クラスを落ち着かせる力はある。(中略)進路に向けてしっかしした担任なのは悪くない。(中略)次々とプリントが回ってきた。最終学年ともなると、提出しなくてはいけない書類も多いようだ。(中略)
 先生は簡潔に説明しながらプリントを配った。(中略)
 先生が年間の日程表を配ると、あちこちで大きなため息が漏れた。(中略)日程表を見ると、常に勉強に追われるようで気が重くなる。(中略)

(中略)
「あー、あー。優子がうらやましい」
 と二人(の友人、萌絵(もえ)と史奈(ふみな))が口をそろえて言った。
「どうして?」
「だって、進路に反対されることなんてないでしょう?」(中略)
「反対してきたら、本当の親でもないくせにって言えばいいだけだもんね。優子にはすごい切り札があるんだから」(中略)
 二人とも信じがたいようだけど、そんな言葉言ってみようとおもったことさえない。(中略)

 何をもって本当の親だというのかわからないけれど、生みの親が、地がつながっている親が本物だと言うのなら、その家族で過ごした日々は短い。(中略)
 特に母親について覚えていることは、皆無に等しい。父親の話では、私が三歳になる前に事故で亡くなったらしいのだけど、ピンとこない。(中略)

(中略)保育園で仲良しの亜紀ちゃんも優奈ちゃんも同じ小学校へ行く。一緒のクラスになれたらいいなあ。(中略)
 不安でどきどきもするけど、楽しみなことのほうがずっと多い。(中略)それが小学校なんだ。そう思っていた。

(明日へ続きます……)