戦略互恵強化で一致
日中会談 福田首相と温首相
【北京=山田俊英】中国を訪れている福田康夫首相は二十八日午前、北京の人民大会堂で温家宝首相と約二時間半にわたって会談しました。両首相は日中の「戦略的互恵関係」の強化で一致し、アジアや国際社会のさまざまな問題で協力していくことに合意しました。胡錦濤国家主席の来年春の訪日も確認しました。
会談後の共同記者会見で福田首相は、「両国関係だけでなく国際社会における責任について討議した」とし、「日中の長い歴史の中で今ほど両国がアジアや世界の安定に貢献できる力を持った時代はない」と強調。「世界の大局を見据え、責任ある形で協力するという両国の基本的な在り方について温首相の全面的な支持を得た」と語りました。
戦略的互恵関係の具体化としては、先月初めて行われた気候変動対策などで協力に合意。福田首相は会見で「世界の主要排出国が参加する責任ある枠組みで積極的に協力することで一致した」と明らかにしました。環境・省エネ分野の人材育成のため、三年間で一万人の中国側関係者が日本で研修することになりました。
胡主席の訪日については「来年桜の花の咲くころ」(温首相)に決まりました。
懸案となっている東シナ海のガス田開発問題については、来春の胡主席の訪日までに解決を目指すことになりました。
温首相は会見で、「歴史と台湾の問題を適切に処理することは両国関係改善、強化の政治的基礎だ」と述べました。福田首相は「両国関係を悪い方向に持っていくことは許されない。その国際社会への悪影響は計り知れない」と述べました。
福田首相は台湾問題について会談で、「わが国の立場は(一九七二年の)日中共同声明から変わっていない」とし、台湾の国連加盟の賛否を問う住民投票について「両岸の緊張が高まることは望まず、一方的な現状変更につながるのであれば支持しない」との考えを中国側に伝えました。
新華社電によると、福田首相は会談で歴史問題について、「人々に苦痛を与えたあの歴史を心から反省しなければならないと日本側は主張している。日本は平和発展の道を歩んでおり、未来志向の日中関係を構築していきたい」と述べたといいます。
福田首相は同日午後、全国人民代表大会(国会)の呉邦国常務委員長と会談しました。
胡主席と初会談 福田首相
【北京=山田俊英】福田康夫首相は温家宝首相との会談に続き、二十八日夜、胡錦濤国家主席と北京の釣魚台迎賓館で初めて会談しました。福田首相は会談後、胡主席が主催する夕食会で話し合いを続けました。
会談の冒頭、胡主席は「福田首相の今回の訪問が両国の互恵関係を推進すると信じる」と述べ、福田首相は中国側のもてなしに感謝を述べました。
会談で両首脳は来春予定される胡主席の訪日に向けて「戦略的互恵関係」の強化について意見を交換し、来年の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)、北京五輪成功について協力を確認する見通しです。
不幸な歴史の直視は義務だ
北京大学で講演
【北京=山田俊英】中国を訪問中の福田康夫首相は二十八日午後、北京大学で学生や教職員を前に講演し、日中関係の重要性を強調しました。
福田首相は「両国が歴史の中で今ほどアジアや世界の安定に貢献できる力を持っているときはない」と述べ、「日中両国はアジアと世界のよき未来のため創造的なパートナーたるべしというのが私の信念だ」と強調しました。
また、「長い歴史のなかで不幸な時期があった。不幸な歴史であっても直視して子孫に伝えるのが義務だ」とし、「戦後わが国は自由と民主主義の国になり、平和国家としての道を歩んできた。この誇りは自らのあやまちに対する反省と被害者の気持ちをおもんぱかる謙虚さを伴ったものではなかったか」と述べました。
福田首相はまたパキスタンのブット元首相暗殺を非難し、「テロとのたたかいは国際社会共通の課題だ」と述べ、日中両国による「国際貢献」のトップにテロ対策を挙げました。