日本共産党創立92周年記念講演会
「亡国の政治」と決別し、未来に責任を負う新しい政治を
志位委員長の講演
日本共産党の志位和夫委員長が15日、党創立92周年記念講演会で行った講演「『亡国の政治』と決別し、未来に責任を負う新しい政治を」(全文)は以下の通りです。
参加されたみなさん、インターネット中継をご覧の全国のみなさん、こんばんは(「こんばんは」の声)。ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫 でございます(拍手)。今日はようこそお越しくださいました。私からも心からのお礼を申し上げさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
安倍政権が発足して1年半がたちました。ここへきてその正体がはっきり見えてきました。この政権は、国会での多数を背景に、あらゆる分野で暴走し ています。しかし、この暴走は、どれも彼らなりの先の見通しをもってやっているわけではありません。どれもが日本の未来、国民の未来に責任を負わない、 「後は野となれ山となれ」のやみくもな暴走にほかなりません。一言でいえば、日本の国を亡ぼし、日本国民を亡ぼす「亡国の政治」――これこそが安倍政権の 正体ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手) 党創立92周年の記念すべきこの日にあたって、日本共産党は、この「亡国の政治」と正面から対決し、どの分野でも日本の未来、国民の未来に責任を負う新 しい政治への展望を指し示して、国民とともにたたかい抜く決意を表明するものです。(拍手)
今日は、「『亡国の政治』と決別し、未来に責任を負う新しい政治を」というテーマで、いくつかの角度からお話をさせていただきます。どうか最後までよろしくお願いいたします。(拍手)
集団的自衛権――「海外で戦争する国」づくりを許さない
アメリカの戦争に、自衛隊が「戦闘地域」まで行って軍事支援を行う
まず集団的自衛権の問題についてお話ししたいと思います。
安倍政権は、7月1日、国民多数の反対の声を踏みつけにして、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を強行しました。私は、まず、みなさんとともに、憲法9条を破壊するこの歴史的暴挙に断固抗議するとともに、「閣議決定」の撤回を強く要求するものであります。(拍手)
この「閣議決定」のどこが問題でしょうか。それは、「海外で戦争する国」づくりを、二つの道で推し進めるものとなっています。
第一は、アメリカが世界のどこであれ戦争に乗り出したさいに、自衛隊が「戦闘地域」までいって軍事支援を行うということです。
私は、5月28日の衆院予算委員会でこの問題を追及しました。2001年の米国によるアフガニスタン報復戦争、2003年の米国によるイラク侵略 戦争にさいして、日本は自衛隊を派兵しました。しかし、どちらの場合も、派兵法の第2条で、「武力行使をしてはならない」「戦闘地域に行ってはならない」 という二つの歯止めが明記されていました。当時の小泉純一郎首相はよく言っていました。「自衛隊を派遣するが、戦闘地域に行くんではありません。非戦闘地 域にしか行きません。自衛隊のいるところが非戦闘地域なんです」。ここにはゴマカシがありましたが、一つの歯止めになったことも事実でした。自衛隊の実際 の活動は、インド洋での給油活動、イラクでの給水活動や空輸活動にとどまりました。
私は、安倍晋三首相にただしました。「集団的自衛権の行使ができるとなれば、この二つの歯止めが外されてしまうのではないですか」。再三、ただし ましたが、首相は歯止めを残すと言いませんでした。反対に自衛隊の活動を拡大する方向で、「従来のあり方を検討する」と答弁しました。自衛隊が「戦闘地 域」に行くことを認めたのであります。
「閣議決定」には、そのことがあからさまな形で明記されました。自衛隊が活動する地域を「非戦闘地域」に限るという従来の枠組みを廃止し、これまで「戦闘地域」とされてきた場所であっても支援活動ができるとしたのです。
そうなったらどうなるか。「戦闘地域」での活動は、それがたとえ補給、輸送、医療などの「後方支援」であっても、相手からの攻撃を受けることにな ります。攻撃されたらどうなるか。わが党の笠井亮衆院議員と小池晃参院議員が連続追及しました(7月14日・衆院予算委員会、7月15日・参院予算委員 会)。攻撃されたらどうするのか、わが党の追及に対して、首相は「逃げます」と答えました(笑い)。それではすまないでしょうとさらに追及されまして、 「武器の使用はする」と、しぶしぶ認めました。結局、応戦し、武力行使となるのであります。
それが何をもたらすか。アフガン戦争にさいして、NATO(北大西洋条約機構)の国ぐには集団的自衛権を発動して参戦しました。NATOが決めた 当初の活動内容は、「後方支援」ばかりだったのです。それでも泥沼の戦争に巻き込まれていきました。米国以外のNATO軍の犠牲者は、戦争開始から今日ま で21カ国、1035人にのぼっています。
みなさん。安倍政権がやろうとしているのは、日本の国を守ることでも、国民の命を守ることでもありません。アメリカが起こすアフガン戦争やイラク 戦争のような戦争で、自衛隊が「戦闘地域」まで行って軍事活動ができるようにする、アメリカの戦争のために日本の若者の血を流す、これこそが正体だという ことを私は訴えたいと思うのであります。(拍手)
集団的自衛権――「自衛の措置」の名で海外での戦争にのりだす
第二は、「自衛の措置」という名目で、集団的自衛権行使容認に公然と踏み込んだということです。「閣議決定」は、日本に対する武力攻撃がなくて も、「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」には、武力の行使=集団的自衛権の行使ができるとしています。
それは一体どんな場合でしょうか。安倍首相が一つ覚えのように繰り返しているのは、「紛争時に邦人輸送をする米艦船の防護」であります。彼は、記 者会見で、繰り返し、お母さんが赤ちゃんを抱っこしている絵の入った大きなパネルを使って、「助けなくていいのか」と熱弁をふるいました。しかし、緊急時 の邦人の避難というのは、あくまでも日本政府の責任で行われるべきものです。1997年の日米ガイドラインの協議の場で、日本側は「米軍による邦人救出」 を要請しましたが、米側から断られ、「日米両国政府は、自国の国民の退避は各々の責任で行う」ことが確認されています。だいたいアメリカの救出活動の特徴 は、国籍による優先順位があることです。第1位はアメリカ国籍保持者、第2位はアメリカ永住権保持者、第3位はイギリス国民、第4位はカナダ国民、第5位 はその他国民、日本人は最後のその他に入るのです。米軍は日本人を運んでくれないのです。現実にはありえないこんな例しか持ち出せない。これは、「国民の 命を守る」という自らの言明がいかに空理空論であるかを、自ら証明するものではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
許し難いのは、安倍首相が、集団的自衛権行使容認という、「海外で戦争する国」への大転換に踏み出しながら、国民に事の真相を語らず、ウソとゴマカシに終始していることであります。私は、三つのウソとゴマカシということを指摘したいと思います。
一つは、首相が、「現行の憲法解釈の基本的考え方は、何も変わるところがない」としていることです。しかし、従来の政府の第9条に関するすべての 見解は、「海外での武力行使は許されない」ことを土台として構築されてきました。集団的自衛権というのは、日本に対する武力攻撃がなくても、他国のために 武力行使をする=海外での武力行使をするということです。従来の憲法解釈の土台を百八十度覆しておきながら、「何も変わるところがない」とは、こんな厚顔 無恥な詭弁(きべん)はないではありませんか(拍手)。しかも、首相は、先週、オーストラリアの連邦議会の演説で「日本は安全保障の法的基盤を一新しよう としている」と語りました。国内では「何も変わるところがない」といいながら、外国では「法的基盤を一新」と売り込む。このような国民を欺く二枚舌政治 は、断じて許されるものではありません。(拍手)
二つは、首相が、集団的自衛権の行使は、「明確な歯止めがある」「限定的なもの」としていることです。これも悪質なゴマカシです。「明白な危険」 があるかどうかを判断するのは誰か。時の政権ではありませんか。それは、首相が「政府が全ての情報を総合して判断する」と答弁したとおりであります。しか し、いざというときに国会で「その情報を明らかにせよ」といっても、「それは特定秘密です」ということになるでしょう。さらに、首相は、昨日(7月14 日)、「石油の供給不足」や「日米関係に重大な影響」がある場合でも武力の行使がありうると答弁しました。結局、「歯止め」などどこにもないではないです か。国会にも国民にも真実が明らかにされないまま、時の政権の一存で海外の武力行使が底なしに広がるというのが、事の真相だということを私は言わなければ なりません。(拍手)
三つは、首相が、「日本が戦争に巻き込まれることはあり得ない」としていることです。私は、1997年の国会で質問したことがあります(10月7 日、衆院予算委員会)。「戦後、アメリカが世界各地でおこなった武力行使のなかで日本がそれに批判的立場をとったケースが一回でもありましたか」。当時の 橋本龍太郎首相は、悔しそうに、こう答弁しました。「第二次世界大戦後、わが国が国連に加盟いたしまして以来、わが国は米国による武力行使にたいし国際法 上違法な武力行使であるとして反対の意を表明したことはございません」。こんな国は、世界の主要国で日本しかありません。それでもアメリカの戦争に戦闘部 隊を送ることがなかったのは、「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」という歯止めがあったからです。この歯止めをなくしてしまって、米国からの要求 があった時にどうして断れるでしょうか。日本が、ベトナム戦争や、イラク戦争のような無法な侵略戦争に加担することになることは明らかではないでしょう か。(拍手)
1941年12月8日に発せられた太平洋戦争開戦の「詔書」には、次の言葉がありました。
「帝国ノ存立亦(また)正ニ危殆(きたい)ニ瀕セリ…帝国ハ今ヤ自存自衛ノ為蹶然(けつぜん)起ツテ一切ノ障礙(しょうがい)ヲ破碎(はさい)スルノ外ナキナリ」
無制限の海外での戦争を、「国の存立」「自衛の措置」の名で推し進めることは、かつて日本軍国主義が「帝国の存立」「自存自衛」の名で侵略戦争を進めた誤りを、ふたたび繰り返すものであり、断じて許すわけにはいきません。(大きな拍手)
戦後日本の国のあり方を根底から覆す――失われるものは何か
みなさん。こうした二つの道で「海外で戦争する国」づくりをめざす「閣議決定」は、戦後日本の国のあり方を、根底から覆そうというものにほかなりません。
戦後日本の政治は、その大部分が自民党政権によって担われてきました。それによる深刻なゆがみがあらゆる分野でつくりだされました。しかし、私 は、そのもとでも、戦後日本の歴史のなかには、世界に誇っていい歴史もあると考えます。その最大のものは、日本国憲法第9条と、この条項を守り生かす国民 のたたかいがつくりだした歴史ではないでしょうか。(拍手)
今年は、自衛隊創設からちょうど60年になります。この60年間、自衛隊は、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出していません。これは歴代の 自民党政権が立派だったからではありません。憲法9条の偉大な力ではないでしょうか(拍手)。憲法9条は自衛隊員の命をも守ってきたということを強調した いと思うのであります。(拍手)
安倍政権は、こうした戦後日本の国のあり方を根底から覆し、「殺し、殺される国」につくりかえようとしています。そのことによって失われるものは何でしょうか。私は、次の三つの点をあげなければなりません。
第一に、若者の命と人生が失われます。戦争がもたらす犠牲とはどのようなものか。自衛隊員の戦死者は一人もいないといいましたが、戦争の犠牲者が いないわけではありません。「非戦闘地域」への派遣が建前だったイラク派兵でも、迫撃砲やロケット弾による宿営地への攻撃は14回に及びました。緊張と恐 怖から、派遣された隊員の1割から3割が精神に不調をきたしました。そしてアフガン派兵とあわせて帰国後40人の隊員が自ら命を絶っているのです。
これが「戦闘地域」への派兵、「殺し、殺される」状況に投げ込まれたらどうなるでしょう。米国にはイラク戦争とアフガニスタン戦争の帰還兵が 200万人以上います。うち60万人が戦地で経験した戦闘や恐怖から心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを患っています。そして米国政府の統計による と、何と1日平均22人が自殺をしています。戦場での戦死に加えて、年間8千人もの自殺です。これを日本の若者に押しつけようというのでしょうか。戦争で まっさきに犠牲とされるのは、未来ある若者です。若者を戦場に送るな――この声を突きつけようではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
第二に、日本が憲法9条とともに築いてきた国際的信頼が失われます。「日本国際ボランティアセンター」(JVC)は、6月10日、声明を発表し、 次のように訴えました。「先進主要国のほとんどがアフガニスタン本土に軍を派遣する中、日本だけは反政府武装勢力にも住民にも銃を向けることがありません でした。これが、アフガニスタンにおいて日本が最も信頼される国と見なされてきた理由です」「政府の議論に欠けているのは、『失うもの』の大きさに対する 認識です。これまで日本は、…非軍事に徹した国際平和協力を行ってきました。これは他国にできない日本の独自性であり、これにより日本が国際的な信頼を獲 得してきたことは、まぎれもない事実です。…第二次世界大戦以降およそ70年間をかけて築き上げてきた資産や信頼を決して失ってはならないのです」。
世界の紛争地で、献身的にボランティア活動にとりくんできた多くのNGOから、日本が「海外で戦争する国」になったら、海外で他国民に銃を向ける ようになったら、世界から日本に寄せられてきた信頼が憎悪に変わり、日本人がテロの対象とされ、「失うもの」はあまりに大きいという警告が発せられていま す。安倍政権はこの声を真剣に受け止めるべきだと、私は言いたいと思います。(拍手)
第三に、日本社会から人権と民主主義が失われます。「海外で戦争する国」づくりは、戦争に国民を動員する体制づくりと一体のものであります。秘密保護法は、その重大な一歩でした。改悪教育基本法にそって、子どもたちに「愛国心」を押しつける動きも重大であります。
この点にかかわって、私は、徴兵制の問題に触れないわけにいきません。「自衛隊に犠牲者が出れば、自衛隊員が激減し、徴兵制になりかねない」―― 多くの識者の懸念は、決して杞憂(きゆう)とはいえません。政府は、これまで徴兵制について、憲法18条が禁止する「奴隷的苦役」にあたり許されないとし てきました。しかし、自民党の石破茂幹事長は、国会の発言で、つぎのようにのべています。「国を守ることが意に反した奴隷的な苦役だというような国は、国 家の名に値しない。徴兵制が奴隷的な苦役だとする議論にはどうしても賛成しかねる」(2002年5月23日、衆院憲法調査会・基本的人権の保障に関する調 査小委員会)。憲法の根幹をなす9条の解釈さえ勝手に変更する勢力が、憲法18条の解釈を変更しないと、いったい誰が保証できるでしょうか。
秘密保護法、「愛国心」の押しつけ、そして徴兵制――国民を無理やり戦争に動員するあらゆる企てを、きっぱり拒否しようではありませんか。(大きな拍手)
何のためにこんな暴走をしているのか――根本に安倍首相自身の反動的野望
ここで疑問がでてきます。それにしても何のために、安倍首相はこんなとんでもない暴走をしているのか。
根底には、日米軍事同盟を侵略的に強化しようという日米支配勢力の思惑が働いていることは間違いありません。しかし、それだけでは説明がつきませ ん。公明党の会議で「なぜそんなに拙速に進めるのか」と質問する公明党議員に、北側一雄副代表はこう返したそうです。「安倍首相が急いでいるんだ」(笑 い)。答えになっていませんが(笑い)。安倍首相の異常な性急さ、乱暴さの根本には、安倍首相自身の反動的野望があるということを、私は指摘しなければな りません。
首相は、『この国を守る決意』(2004年、扶桑社)という著書で、彼の祖父・岸信介首相について、60年安保改定を「断固としてやり抜いた」 「祖父の世代は祖父の世代の責任を果たした」と礼賛しています。そして、「われわれには新たな責任がある。それは、日米安保条約を堂々たる双務性にしてい くことだ」「軍事同盟というのは、“血の同盟”です。…今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊はアメリカが攻撃されたときに血を流すことはない。…それで は完全なイコールパートナーとは言えない」とのべて、集団的自衛権の行使を説いています。
つまり、安倍首相の行動というのは、日本の安全や世界の平和という目的から出発したものでは決してないのです。自分の祖父に続く「日本のリーダー」として歴史にその名を刻みたい、そうした自らの野望の実現のために、「海外で戦争する国」に突き進んでいるのであります。
しかし、それによって失うものははかり知れないではありませんか。若者の命を危険にさらし、日本の国際的信頼を投げ捨て、人権も民主主義も破壊する――これは文字通りの「亡国の政治」そのものではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
たたかいの帰すうを決めるのは世論と運動――空前の国民的反撃を
みなさん。安倍政権のたくらみは危険ですが、大局で見れば、決して思惑通りに進んでいるわけではありません。
彼らはまず、憲法9条の明文改憲を狙いましたが、改憲反対が国民世論の多数を占め、うまく進みませんでした。そこでつぎに憲法96条の改憲手続き を緩和しようとしましたが、今度は憲法9条改定の是非を超えて「邪道だ」という声が起こり頓挫しました。そこで解釈改憲で集団的自衛権行使容認を進めよう としていますが、保守政治を中枢で支えてきた人々を含めて「こんな裏口入学は許せない」「立憲主義の否定だ」との批判が広がっています。暴走の一歩一歩 が、新たな人々の批判を広げています。各メディアの世論調査では、どれも5割から6割の国民が反対の声をあげているではありませんか。大局で見れば、追い つめられているのは、安倍政権の側ではないでしょうか。(拍手)
平和を願う国民のエネルギーは広く深いものがあると感じます。6月30日と7月1日の官邸前行動には、連日、数万人の人々が参加し、「海外で戦争 する国」づくりに反対する抗議の国民的エネルギーを目に見える形で示しました。若い世代が、「最大の被害者となるのは私たちだ」と、この問題を文字通り自 らの問題としてとらえ、たたかいの主人公となっているのは素晴らしいことであります(拍手)。子育て世代は、「子どもたちが戦争に巻き込まれるのではない かと不安だ。私たちの責任で平和憲法を子どもたちの世代に引き渡したい」と声をあげています。高齢者世代は、「あの悲惨な戦争を、孫の世代に体験させるわ けには絶対にいかない」と立ち上がっています。
日本弁護士連合会と全国各地の52の弁護士会のすべてで反対声明が採択されています。日本の弁護士全員が加入する弁護士会が、弁護士法第1条の 「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」との使命に燃えて、立憲主義を守り、恒久平和主義を求めて、たたかいの先頭に立っていることは、心強い限りで あります。(拍手)
宗教者の批判の広がりも目覚ましいものがあります。日本の伝統仏教界における唯一の連合組織で、主要な59の宗派、36の都道府県仏教会、10の 仏教団体、合計105団体が加盟する全日本仏教会は、つぎのような談話を発表しました。「仏陀(ぶっだ)の『和の精神』を仰ぐ者として、このたびの集団的 自衛権の行使を容認する閣議決定には、人間の知恵の『闇』を垣間見るがごとき、深い憂慮と危惧の念を禁じ得ません」。
自民党の歴代元幹事長、改憲派といわれてきた憲法学者が、つぎつぎと「しんぶん赤旗」に登場し、反対の論陣を張っています。「日経ビジネス」電子 版コラム(5月16日)は、「行く手に翻るのは赤い旗のみか?」(笑い)と題して次のように書きました。「安倍政権が発足して以来、日本共産党の機関紙で ある『赤旗』のインタビュー欄に、保守系の論客や、自民党の元重鎮が登場するケースが目立つようになっている。これは、普通に考えれば赤旗編集部内に優秀 な交渉役がいるということなのだろうが(笑い)、それだけでもないはずだ。保守系の論客と見なされている人々が、次々と赤旗のインタビューに応じている背 景には、安倍政権に対して、真正面から反論する場を提供してくれる媒体が、もはや赤旗ぐらいしか残っていないことを示唆している」(拍手)。かつての論争 の相手が、いまでは共同の相手に変わっています。そして、「しんぶん赤旗」が日本の理性と良心のよりどころになっているのは、ほんとうにうれしいことであ ります。(拍手)
みなさん。「閣議決定」が強行されたからといって、自衛隊を動かせるわけでは決してありません。たたかいはこれからです。日本共産党は、憲法違反 の「閣議決定」の撤回を強く求めるとともに、「閣議決定」を具体化し、「海外で戦争する国」をめざすいっさいの立法作業をただちに中止することを強く要求 するものであります。(拍手)
日本は今、戦争か平和かをめぐって、戦後最大の歴史的岐路を迎えています。このたたかいの最終的な帰趨(きすう)を決めるのは、国民の世論と運動 であります。「海外で戦争する国」づくりを許すな、解釈で憲法を壊すな――この一点で、空前の国民的反撃のたたかいをおこし、安倍政権の軍国主義復活の野 望を必ず打ち砕くために、ともに力をあわせようではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
北東アジアの平和と安定をどうはかるか――「北東アジア平和協力構想」
この問題の最後に、北東アジアの平和と安定をどうはかるかについての日本共産党の考えをお話ししたいと思います。
安倍首相は、ことあるごとに「我が国を取り巻く安全保障環境が悪化している」と言い募り、集団的自衛権行使容認の口実にしています。第1次安倍政権のときにも、「環境が悪化している」と言ったものでした。彼が登場すると「環境が悪化」する。(笑い)
北東アジアには緊張と紛争の火種が存在することは事実です。しかし、首相のように専ら「抑止力」の強化、軍事力増強で構えたらどうなるでしょう。 相手も軍事力増強を加速することになります。そうなれば、「軍事対軍事」の悪循環に陥ってしまうではありませんか。いま日本にとって何よりも大切なこと は、どんな問題も、道理に立った外交交渉による解決、平和的解決に徹する、憲法9条の精神に立った外交戦略を確立することではないでしょうか。(拍手)
日本共産党は、今年1月の第26回党大会で、次の四つの目標と原則に立った「北東アジア平和協力構想」を提唱しました。
第一に、域内の平和のルールを定めた北東アジア規模の「友好協力条約」を締結しよう。
第二に、北朝鮮問題を「6カ国協議」で解決し、この枠組みを地域の平和と安定の枠組みに発展させよう。
第三に、領土問題の外交的解決をめざし、紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぼう。
第四に、日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は、不可欠の土台となる。
この4点ですが、これは決して理想論ではありません。机上の議論でもありません。この間、私たちは、東南アジアを訪問して、ASEAN(東南アジ ア諸国連合)の国ぐにの取り組みをじかに見てまいりました。ASEANでは、「東南アジア友好協力条約」(TAC)といいまして、「紛争の対話による解 決」をめざす平和の地域共同の枠組みがしっかりつくられています。インドネシアのジャカルタにあるASEAN本部を訪問して話を聞きますと、「ASEAN では年間1000回もの会合をやっています。あらゆるレベルで対話と信頼醸成をはかっています。だからこの地域にもいろいろな紛争問題があるけれども戦争 になりません。何でも話し合いで解決します。それを実践しています」。こういう説明でした。東南アジアで現につくられている平和の枠組みを、北東アジアに も築こうではないかというのが、日本共産党の提案であります。(拍手)
私たちは、この提案をもって内外の人々と懇談を重ねてまいりました。ある国の大使は、私たちの提案に対して次のように答えてくれました。「全面的 に共感します。志位委員長がいわれた構想通りになれば、真の意味での北東アジアの平和と協力の枠組みとなります。だから一刻も早く、日本共産党に政権を とっていただき、ぜひこの構想を実現していただきたい」(拍手)。うれしい期待であります。
元外務省高官の一人は、次のような感想を寄せてくれました。「極めて正論で、当然支持を得られるべきです。日本と中国、韓国も入れて、どういう東 アジアをつくるのか、その議論を始めましょう。角を突き合わせていがみ合う東アジアではなく、平和でむつみ合い誠実に、相手に対して寛容な、そういうもの がいきわたる東アジアをつくりたい」。
みなさん。日本共産党の「北東アジア平和協力構想」こそ、地域の平和と安定を守り、未来に真に責任を負う提案ではないでしょうか。(拍手)
日本共産党は、野党であっても憲法9条を生かした自主自立の野党外交で世界とアジアの平和のために力を尽くしていますが、私たちの野党外交の方針が、一日も早く、日本政府の外交方針になる日が訪れるように、みなさんのお力添えを訴えるものであります。(大きな拍手)
暮らし破壊の「逆立ち」経済を大本からただそう
消費税大増税――国民に説明がつかない“3重の「逆立ち」税制”
つぎに暮らしと経済についてお話ししたいと思います。
安倍首相は、通常国会閉会後の記者会見で、「この国会は、まさしく好循環実現国会でありました」「企業の収益が雇用の拡大や所得の上昇につなが り、まさに経済の好循環が生まれようとしています」と自画自賛しました。しかし、「経済の好循環」なるものは、現実にはどこにも存在しておりません。首相 の頭のなかにだけ(笑い)存在する、「幻」にすぎません。
4月から消費税大増税が強行されました。8%への引き上げで8兆円もの負担増です。家計がどうなっているか。私が最も重大だと思うのは、労働者の 実質賃金が、4月に前年比マイナス3・4%、5月にマイナス3・6%と大幅に減少したことです。賃金が上がらないのに、円安によって物価だけ上がり、消費 税増税が追い打ちをかけた結果であります。調べてみますと、4、5月としては、この20年来、最大の落ち込みであります。ところが政府は、増税後の景気動 向を「想定内」だと言い張っています。実質賃金の下落、購買力の低下を、「想定内」だとするのは、暮らしと経済に責任を負うべき政府が決して口にすべきこ とではないのではないでしょうか。(拍手)
みなさん。今回の消費税大増税ほど、国民に説明のつかない、道理のたたないものはありません。私は、これは“3重の「逆立ち」税制”だということを告発したい。
第一の「逆立ち」は、「社会保障のため」といって消費税増税を強行しながら、悪名高い社会保障給付の「自然増削減」の方針を復活させたということ です。安倍政権が6月に決定した「骨太の方針」というのがあります。国民の“骨身を削る”方針です。この方針で、「社会保障給付について、…『自然増』も 含め聖域なく見直す」ことが明記されました。それが何をもたらすか。国民のみなさんは散々な体験をされていると思います。かつて小泉内閣は、「構造改革」 の名で社会保障費の「自然増」を毎年2200億円削減する方針を掲げ、日本の社会保障をボロボロにしてしまいました。そして、さすがの自民党もこれを「諸 悪の根源」と認め、麻生内閣のもとでこの方針は撤回されたのであります。それを臆面もなく復活させる。しかも国民には大増税を押しつけながら復活させる。 こんな無反省・無責任な政治はないではありませんか。(拍手)
第二の「逆立ち」は、「財政再建のため」といって消費税増税を強行しながら、大企業には大減税の大盤振る舞いが行われていることです。今年度、大 企業には、復興特別法人税の廃止、投資減税など、1・5兆円もの減税がばらまかれました。さらに「骨太の方針」には、法人税率の引き下げが明記されまし た。財界が求める法人税率10%引き下げを実行したら、5兆円もの大減税になります。「社会保障のため」「財政再建のため」といって消費税を増税しておい て、それを大企業減税に使うとは、これは国家的詐欺に等しいやり方だといわねばなりません。(大きな拍手)
そして第三の「逆立ち」は、その大企業減税の財源のためとして、「外形標準課税」の拡大など、赤字で苦しむ中小企業からも税金を取り立てようとし ていることであります。中小企業は、日本の雇用の7割を支えています。少なくとも12兆円にのぼる社会保険料を負担しています。中小企業が従業員へ支払う 賃金から発生する所得税は約3兆円にのぼります。日本経済の根幹を支えているのは中小企業ではありませんか。大企業減税の財源のために、この根幹を犠牲に して恥じないというのは、「逆立ち」税制ここにきわまれりというほかありません。(拍手)
みなさん。消費税大増税はどこから見ても道理のかけらもありません。消費税大増税ストップの声を突きつけようではありませんか(拍手)。来年の いっせい地方選挙では、日本共産党の躍進で、増税勢力に国民の怒りの審判をくだそうではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
株価のためなら何でもあり――「後は野となれ山となれ」の政治でいいのか
それでは安倍政権が「成長戦略」の名でやろうとしていることは何でしょうか。これはおよそ経済政策の名に値するものではありません。
一言でいって、政権を維持するために、株価を引き上げることの一点を目的とし、そのためならば何でもあり――これがその中身です。官邸の安倍首相 の執務室には「株価ボード」なるものが設置されているといいます。日々の株価に一喜一憂する「株価連動政権」(笑い)。これが「アベノミクス」なるものの 正体であります。
安倍首相は、今年5月、イギリス・ロンドンの金融センター、シティで行ったスピーチで、外国人投資家を前に、つぎの三つのことを約束し、「日本株を買ってください」と訴えました。
一つは、「法人税の改革を、一層進めます」。“法人税を引き下げます、そうすれば企業の利益が増え、株主への配当が増え、株価が上がります。どう か日本株を買ってください”というわけです。財政危機だと国民には消費税増税を強いながら、さらに中小企業に新たな増税計画を押しつけながら、法人税大減 税を世界に約束したのです。それによって税収に穴があき、財政危機がさらにひどくなってもお構いなしというわけであります。
二つは、「世界最大の年金基金の改革を進めていきます」。“日本の公的年金の積立金は130兆円にのぼりますが、この巨額の資金を使って日本株を 買い増します。政府が買うのですから確実に株価は上がります。どうか日本株を買ってください”というわけです。しかし、国民の虎の子の年金積立金を株に投 じるということは、それを大きなリスクにさらすことにほかなりません。金融大国アメリカでさえ公的年金の積立金で株を買うことはしていません。文字通りの 禁じ手を使ってまで株価を引き上げようというのは許すわけにいかないということを、私は訴えたいのであります。(拍手)
三つは、「労働の制度は、新しい時代の新しい働き方に合わせ、見直しを進めます」。“残業代はゼロにしましょう、派遣労働への規制はすべて取り払 いましょう、そうすれば企業の利益は確実に上がり、株価は上がります。どうか日本株を買ってください”というわけです。そのことによる長時間労働で「過労 死」が増えようと、「生涯ハケン」「正社員ゼロ」社会になろうと、知ったことではないというわけであります。とんでもないではありませんか。(「その通 り」の声、拍手)
株価のためなら、庶民や中小企業が重税に苦しもうと、国の財政がどうなろうと、年金がどうなろうと、雇用がどうなろうと、「後は野となれ山とな れ」。さらに株価引き上げ以外のメニューを見ますと、日本の食と農を破壊するTPP(環太平洋連携協定)の推進、原発再稼働、原発輸出、武器輸出、そして カジノ賭博解禁です。これが「成長戦略」というのですから聞いてあきれるではありませんか(拍手)。ここには、まっとうなものは一つもありません。国民の 命と暮らしを守るという立場はかけらもないではありませんか。
暮らし破壊の「逆立ち」経済、文字通りの「亡国の政治」というほかないではありませんか。(拍手)
安倍政権に、もはや日本経済のかじ取りする資格なしということを、私はいいたいと思います。(大きな拍手)