バイデン大統領「プーチンは権力の座に居てはならない」
発言で釈明に追われる米政府
専門家や共和党も「失言」と糾弾
「政権交代」と取られる危険性を警戒
「感情が高ぶって出た言葉」との擁護論も
「プーチンは権力の座に居続けてはならない」というジョー・バイデン米大統領の発言が波紋を呼び、米政府が釈明に追われている。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、バイデン大統領の発言の翌日の27日、テレビ局「フランス3」のインタビューで「(ウクライナで)まず休戦をしてから、外交的手段を通じて(ロシアの)軍隊を完全に撤退させなければならない」とし、「そのためには、言葉であれ行動であれ緊張を高めてはならない」と述べた。バイデン大統領の発言が対話による解決の妨げになり、緊張を高める危険性があると批判したのだ。
米国内ではさらに物議を醸している。デイビッド・ペトレアス元アフガニスタン駐留NATO軍司令官は同日「ABC」に出演し、バイデン大統領の発言が「今後、状況を複雑にする恐れがある」とし、「メッセージの規律」が必要だと述べた。リチャード・ハース米国外交協会会長はツイッターに「大統領が政権交代を追求し、戦争目標を拡大した」とし、「妥協を拒否し状況を悪化させ、最後まで戦うようプーチンを刺激する危険性のある発言」だと指摘した。
共和党も機会を逃さなかった。マイケル・マッコール下院議員は「CNN」のインタビューで、バイデン大統領の発言はNATO加盟国がウクライナにミグ機を送ることよりもっと挑発的だとし、「予定されていなかった発言のようだが、大統領の言葉には大きな重みがある」と述べた。ジェームズ・リッシュ上院議員も同放送のインタビューで「大統領が立派な演説の最後に、恐ろしいミスを犯した」とし、「演説の原稿通り発言してほしい」と要求した。
批判が殺到した理由は、バイデン大統領がポーランド訪問を終え、ロシアのプーチン大統領に対し「この人は権力の座に居続けてはならない」と述べたことが、「政権交代」(regime change)を追求するものと認識される可能性が高いからだ。米国の対外政策では、「政権交代」は軍事的手段や工作による「体制転覆」と同じような意味とされてきた。
米国の専門家集団や政治家の一部は、プーチン大統領にとって「ほら見ろ、米国がわれわれを倒そうとしている」という宣伝効果があると指摘する。ホワイトハウス関係者が問題の発言からわずか数分後に、記者団に対し「政権交代を意味するわけではない」と釈明したことからも、こうした発言の敏感性が分かる。
米政府の高官らは釈明を繰り返している。イスラエルを訪問中のアントニー・ブリンケン国務長官は、バイデン大統領の発言の意味は「プーチンにウクライナなどを侵攻する権限を与えてはならない」という意味であり、「我々はロシアを含めていかなる国に対しても政権交代戦略を持っていない」と述べた。米国のジュリアン・スミスNATO大使は「FOXニュース」に出演し、バイデン大統領がウクライナ難民に会い「胸が痛む」一日を過ごした後に出た発言だと説明した。感情が高ぶって出た言葉だという解釈だ。ロー・カンナ民主党下院議員も「大統領は心からの言葉を述べた」とし、政策意志の表現ではなく感情的な発言として受け止めるべきだと述べた。