2007年度の「む・しネット」主催の講演会の講師として、
12月2日に上野千鶴子さんにきていただけることに決定。
お忙しい中調整していただき、肩の荷が下りた、
と同時に、とてもうれしい思いです。
そもそもこのブログは、岐阜で開催した上野さんの
『当事者主権』講演会のためにつくったものですから、
これから本番までの6ヶ月、講演会関連の情報発信にも活躍する予定。
お見のがしなく。
ということで、勉強会などでばたばたしてて紹介が遅れましたが、
『at[あっと]』7号の上野千鶴子さんの連載記事、
『ケアの社会学」は、第6章『市民事業体と参加型福祉』。


冒頭に、「ケアの社会学」全体の構成が明らかにされています。
(6号までの『at』は、それぞれの記事がリンクしてあります)
ケアの社会学(全)構成
序 ケアとは何か 『at』1号
第一部 ケアの原理
一 ケアに根拠はあるか? 『at』2号
二 家族介護は「自然」か? 『at』3号
三 介護費用負担の最適適合へ向けて 『at』4号
四 ケアとはどんな労働か? 『at』5号
五 ケアされるとはどんな経験か? 『at』6号
第二部 協セクターにおけるケアの実践
六 市民事業体と参加型福祉 『at』7号
七 生協福祉の展開 以下次号
八 官セクターの挫折
九 先進ケアを支えるケアワーカーたち
十 先進ケアを支える福祉経営
一一ケアの質と専門性
一二結論
一 はじめに
序章「ケアとは何か」から始まって、一章「ケアに根拠はあるか?」、二章「家族介護は「自然」か?」、三章「介護費用負担の最適適合へ向けて」、四章「ケアとはどんな労働か?」、五章「ケアされるとはどんな経験か? 」と書き継いできた。ケアを「ケアの与え手と受け手の相互作用」と定義したうえで、その双方のアクターに関与する原理的な考察をひととおり終えたところで、ケアを実践するしくみについて、経験的なアプローチを試みたい。ここでいう「しくみ」とは、制度設計や法の枠組みではなく、具体的にケアを実践する現場の人々、事業体、装置、経営をさす。制度と実践として対比される二項のうち、主として制度を対象とする論者は、社会政策論者や比較福祉レジーム論者など、枚挙にいとまがない。だが、いかに先進的なモデルが語られ理想化されようと、現実の与件を変えられない限り、制度論はすべて「絵に描いた餅」に終わる。
日本では2000年4月以降、限定つきではあるが、高齢者介護に公的責任を認めた介護保険がスタートしたことで、ケアをめぐる環境条件がいちじるしく変わった。介護保険はドイツをモデルとしたと言われるが、その実、他のどこにもない日本に固有の制度であり、そのもとでケアの実践経験がすでに6年にわたって蓄積してきたことから、世界的に注目を浴びている。介護保険下の日本のケアの経験はすでに,他国に学ぶものであるより、自ら情報発信していくべきものとなっている。
ケアを実践するしくみについて、当初わたしはこの章以降、「ケアワーカーとはだれか」、「ケア事業とは何か」、「ケアの質と専門性とは何か」等の章を用意していた。だが、それぞれの主題について一般的な考察を述べるより、介護保険前後からわたし自身が手がけてきたオリジナルな調査研究のデータをもとに、協セクターにおけるケア実践の事例を中心的に論じたいと思うようになった。というのは、第一に、ケアワーカーやケア事業体について包括的に述べる用意がわたしにないからであり、第二に、それらについて述べる場合も、協セクターにおけるケアワーカーやケア事業体に焦点化しながらそれとの関連で論じるというスタイルを採用したいからである。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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「第二部 協セクターにおけるケアの実践」に入ります。
目次を見ると、これからどんな展開になるのだろうとわくわく。
今回の、「市民事業体と参加型福祉」だけでも26ページにもなる
読み応えのある長い論文です。
上野さんから早くに「ケアの社会学」のコピーは届いていたのですが、
本を紹介したいと探しても、岐阜市内には置いてる書店は少なくて、
かろうじて「カルコス」に一冊だけありました。
関心のある方は、是非『at[あっと]』をお読みください。
今号の特集は、『苦い砂糖が生まれた理由」。
柄谷行人さんの連載「『世界共和国へ』に関するノート」や
小特集「国家の組成とヤクザの仕組み」も面白いですよ。
おまけ、といってはなんですが、
発行されたばかりの『We6.7月号』に、
「わたしのことはわたしが決める」という
わたしのロングインタビューが載っています。


ブログには個人情報もけっこう露出していますが、
自分のことはあまり人に話したことがないので、
「みどりさんて何もの?」と興味がある人はどうぞ。
とはいえ、
「「We」6・7月号の、みどりさんのインタビュー拝読しました。
いろいろ謎が解けたような、深まったような・・・」
という感想も届いています(笑)。
さわりの「本を書くまで」の部分だけ紹介します。
特集・今いるところでどれだけ自分を生きられるか
「わたしのことはわたしが決める
寺町みどりさんの名は上野千鶴子さんから手渡された『市民派議員になるための本』で知った。福井の生活学習館から153冊のジェンダー関連図書が排除された「焚書坑儒事件」のことで原稿依頼の電話をしたとき、支配しない、されない関係に徹底的にこだわる人だと感しだ。このひとはどうやってこのひとりで立つスタンスを身につけたのだろうと知りたくて、岐阜のご自宅を訪ねた。
|インタビュー| 寺町みどりさん【「む・しネット」事務局】
聞き手・まとめ 稲邑恭子
****以下本文***
本を書くまで
稲邑『市民派議員になるための本』(学陽書房)を拝見してこれは市民派議員になるための最強のラディカルなマニュアル本だと思ったのですが、この本は上野千鶴子さんがみどりさんに書くことをすすめてプロデュースされた、とあとがきに書いてありますが。
みどり 2001年の5月に、「む・しネット(女性を議会に 無党派・市民派ネットワーク)で、上野さんの講演会を企画したいと思い、手紙を書いたんです。この講演録は二冊目の『市民派政治を実現するための本』(コモンズ)に「わたしが<権威>にならないために」というテーマで収録されています。わたしは地方自治の分野では、仲間より10年先を歩いているのでどうしても特別視されてしまう。それで言いたいことも言わないでセーブする、というジレンマの中にあって、これはわたし自身にとって必要に迫られたテーマでした。その打ち合わせで上野さんがわが家にみえて話したとき、「対等な関係ってそうじゃないよ。ノウハウや経験があることを評価しないと、いいグループにならないよ」と言われました。
そのとき「勉強会で何をやっているの」と聞かれて、この本にも載せてある「一般質問の組み立て方」を見せたら、「え、これ誰がつくったの、私のゼミと同じことをやってる」と言われました。それで、「これを本にしましょう」という話になったのです。「無党派・市民派ってなあに」と上野さんに問われて答えを書いた本なのですが、「書きたくない」と言い続けて、あとで上野さんに「みどりさんがこんなに納得しなければ動かない人だと思いませんでした」と言われました。
「あなたなら書けます、わたしを信じてください。」と言われて、一晩寝ずに考えて翌日「あなたのために書きます」と答えました。書く理由のひとつは、上野さんに読んでほしいから。もうひとつは、「あなたの言葉をどこかで待っているひとがいる」と言われたから。わたしは上野さんの本を、ほとんど読んでいて、上野さんの言葉に救われていたし、上野さんから多くのものを受け取っていましたから、その言葉は説得力がありました。
いったん書くと決めたら早くて、その年の12月に25日で初稿を書き下ろしました。その後、本ができるまで手間ヒマかけてつき合っていただいて、本を書くとはこういうことだと、いちから学びました。この本は、上野さんに出会わなければ書けなかった本です。
(以下略)
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みどりさんが『市民派議員になるための本』の続編としてまとめた『市民派政治を実現するための本』」(コモンズ)には、前掲の上野千鶴子さんの講演録のほかに議員と市民と研究者が「市民派政治をどのように実現するのか」という問いを共有した10時間に及ぶフォーラムの白熱した議論を加筆再構成したものが収録されている。
みどりの「みどりの一期一会」は硬派の文章だけでなく美しい植物や風景の写真もたのしみなブログ。 「む・しネット」発行の『む・しの音通信』もHPにアップされており、58号は福井の事件の特集号。最新の60号は選挙講座の成果あって全員当選した受講生の選挙戦の報告が載っている。当選後は早くも「市民派議員大集合―当選してからが本番です」を開催。年4回(5月26~27日。7月28~29日。11月10~11日。4回目は1月下旬)の無党派・市民派の議員・市民対象の勉強会が始まる。
「メッセージ型」の選挙は「ことばがいのち」。精選されたよいメッセージは確実に市民の心に届く、とみどりさんは語る。思いの強さが人を動かす、自分の中に解決したい問題があることが候補者の条件であり、その人が自分のまちで何をしたいのか、自分の言葉で語ることがなによりも大事。そのために必要な自分の経験とノウハウをあとに続く女たちに伝えたくて、「現場で使いたおしてもらうための本」を書き講座を開催し、候補者たちに伴走する。(稲邑)
(『We6.7月号』フェミックス)
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東京の上野研究室におじゃましたとき、
一緒に行ったKさんに、お手製のケーキをいただきました。


さっそく、甘さ控えめのふかふかでしっとりしたケーキに、
みどり持参のマルベリー(桑の実)ジャムと
クレーム・エペス(濃縮クリーム)をつけていただきました。
おいしかったです。ごちそうさまでした。
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最後まで読んでくださってありがとう

「一期一会」に




