熟年新米弁理士のひとり言

平成18年に59歳で弁理士試験に合格した企業内弁理士です。弁理士試験、企業での知的財産業務について、気軽にお話します。

差し止め訴訟

2014-05-22 18:24:48 | Weblog
重要な差し止め訴訟判決が2件ありました。

1件目は、関西電力大飯原発3、4号機をめぐり、住民らが関電に運転の差し止めを求めた訴訟で、その判決が21日、福井地裁でありました。

樋口英明裁判長は「大飯原発の安全技術と設備は脆弱なものと認めざるを得ない」と地震対策の不備を認定し、運転差し止めを命じました。


2件目は、米海軍と海上自衛隊が使用する厚木基地の周辺住民らが、騒音による被害を国に訴えた訴訟で、その判決が21日、横浜地裁でありました。

佐村浩之裁判長は、過去最高額となる総額約70億円の損害賠償に加えて、自衛隊機の午後10時~午前6時の間の飛行差し止めを初めて命じました。
なお、米軍機の飛行差し止め請求は退けました。

この2件の差し止め判決は画期的な判決ですね。

先ず、大飯原発差し止め訴訟判決の概要です。

裁判所は、「ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体や生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織は、被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められる。これは当然の社会的要請で、人格権がすべての法分野で最高の価値を持つとされている以上、本件でもよって立つべき解釈上の指針だ。
 人格権は憲法上の権利で、日本の法制下で、これを超える価値は見いだせない。従って、人格権、とりわけ生命を守り、生活を維持するという人格権の根幹に対する具体的侵害の恐れがある場合、人格権そのものに基づいて侵害行為の差し止めを請求できる。
原発に求められる安全性、信頼性は極めて高度でなければならず、万一の場合にも、国民を守るべく万全の措置が取られなければならない。
 原発は社会的に重要な機能を営むものだが、法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由に属し、憲法上、人格権の中核部分よりも劣る。人格権が極めて広範に奪われる危険を抽象的にでもはらむ経済活動は、少なくとも、具体的危険性が万一でもあれば、その差し止めが認められるのは当然だ。」と判示しました。

憲法で保障された人格権よりも原発の経済性、経済活動の自由は劣後する権利であることは、憲法を勉強した人には当たり前のことですが、このような論理を述べた判決は初めてではないでしょうか。

ドイツにおいて脱原発を決定する根拠となった、「原発は倫理問題であり、経済性と比較することはできない」という考え方と通じるものがありますね。

素晴らしい判決です。

「裁判所は弱者の最後の砦」これからもこのような判決が出されることを願っています。







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