常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

花の名山 角田山

2017年04月03日 | 登山


新潟の角田山へ一年ぶりに登った。去年見た花の美しさに魅せらての再訪である。期待した通り、山の花たちは我々を、元気な姿で歓迎してくれた。この山を代表する花は、雪割草とカタクリの大群落だ。土日の登山客の混雑を避けて、あえて平日を選んだ。それでも山道は、地元の家族連れを始め、グループで訪れるたくさんの人がいた。全山で咲く見事な花を見て、どの人たちも満足の笑顔がこぼれ、人々のやさしい気持ちが山行をより楽しいものにしてくれた。

書きかけの記事を読んで、越後美人さんがコメントを寄せてくれた。雪割草は新潟に住む人々には特別な花であるらしい。山形では、葉の形からミスミ草とも呼ばれる。雪深い土地で、残雪を割るように頭を持ち上げ花を咲かせるので、春一番のうれしい花であるのだ。種子が交配されて、色の違う可憐な花が、日当たりのよい斜面いっぱいに咲くのは、やはりこの季節にしかみられない貴重な景色だ。今回の山行の参加者は8名であったが、花を愛する女性5名の参加があった。この花を見て、一行から歓声があがった。

息止め見る雪割草に雪降るを 加藤知世子

この花を愛する人の気持ちを鋭く突いた句だ。春を待つ人の心が、痛いほどに伝わってくる。



早朝6時に山形を出発して、角田山登山口に立ったのが9時。予報では晴れのち雨で、小国あたりでは雪がちらついていたので心配したが、登り始めは上々の天気となった。この登山道は、私有地との看板があり、花の保護を促す看板が立っている。コースに入って間もなく、雪割草の群落である。既に花を開いたの数えきれない数の株が、登山道の両脇を彩っている。やはり人の手が入らななければ、これだけのお花畑はできないような気がする。

高度を稼いで後ろを振り返ると、日本海が広がり、その向こうに佐渡が霞んで見えている。登山道の脇には雪割草の群落が続く。自生種と思われる大きな株の脇に、イチゲの純白の花、ショウジョウバカマもぽつぽつと咲いている。標高250mを超えたあたりから、花はカタクリにとって変る。これだけの広く大きな群落を目の前にするのは初めての経験である。この斜面全体をカタクリの薄紫色に染め上げる光景をどうやってカメラに収めればよいのか、思い迷う。花にレンズを近づけて撮る、思い切って引いて全体を入れる。どう工夫しても、カメラの映像のみで、この感動を写しとることはできない。



万葉集で堅香子と詠まれたカタクリは長い歴史のなかで、日本の花として親しまれてきた。地下の鱗茎から取るカタクリ粉は、掘るのが難しく本物は貴重で、食用のほか薬用としても用いられる。カタクリは賢い植物でもある。他の草たちのが成長する前に花茎を伸ばして、花や葉にいっぱいの太陽の光を独占して、光合成を行って根に澱粉を蓄える。他の草たちが背を伸ばす初夏には、その陰にひっそりと身をかくすようにして、根の成長に専念する。山の環境を知り尽くしているようだ。春はカタクリにとって主役を張る栄光の季節といえる。

頂上まで約4キロ、写真を撮ったり、他の登山の人たちと話したりして、急な坂道も疲れを忘れるような2時間。頂上で弁当を開く。角田山山頂のポールの立つ三角点で記念撮影。側にいた若い女性からシャッターを押してもらう。帰路は灯台コースを取る。階段あり、岩場あり、お花畑あり。前方には白い灯台が見えて、次第に近づいてくる変化に富んだコース。海に転げ込むこむような感じで下る。昨年と同じコースではあるが、主役の花たちの表情が、頬をなでる風が、ひと味違っている。灯台に近づいて、海の方から雷鳴が聞こえる。最近の天気予報は精度が高まっている。海岸の駐車場の近くで雨になる。参加者の精進がよほどよかったようで、雨にあたらない幸運に恵まれ、全山の花を満喫してすばらしい山行であった。

コメント (2)
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