
森林限界とは、高山の森林生育の限界のことである。本州中部では、標高2400m付近である。ここを過ぎると、針葉樹林が姿を消し、ハイマツや低木化したコメツガ、ナナカマド、シャクナゲなどに移行する。しかし、この森林限界が低い山がある。今週、計画している早池峰山もそのひとつである。小田越え登山道では、1350m付近で、森林限界を迎える。それは、この山がこの付近から、ゴロゴロとした岩塊斜面となることと関係している。
岩塊斜面はなぜできるのか。この山の基盤岩は、かんらん岩である。地球の氷河時代、最も近い年代300万年前だが、岩が凍結破砕によって砕かれ、斜面を伝って移動したためにできる。土壌の条件が悪すぎるために、針葉樹林が入り込めず、生育する植物も、矮小化している。ハイマツがこの高山帯で、優勢樹種となるのは、この木の実を好むホシガラスの習性と関係している。下の方にある実を、岩の隙間に隠して、食べる習性がある。ついばんで散らされた種が、岩の間で芽を出すために、ハイマツが長い年数を経て、優勢樹種となっていった。
上山の三吉山にある岩海も、高度が低いが、やはり氷河時代の凍結破砕によってできた岩塊と考えられる。ゆるやかな斜面では、岩塊も植物に覆われているが、斜面では土が雨に流されて、種が芽を出すことを許さない。斜面一面が、一木一草も出ない岩塊の海になっている。