常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

虫の音

2022年08月17日 | 日記
今朝の散歩で、草むらでコウロギの鳴き声を聞いた。きのうまで、木の茂みから蝉の声を聞いていたので、その変化のあまりの突然さに驚かされる。あれほど鳴き続けた蝉が、ぴったりと鳴くことを止めた。ものの本に、ある年の虫の初鳴きが記載されていた。スズムシ(7月25日)、キリギリス(7月27日)、コオロギ(8月20日)、カネタタキ(8月23日)、ウマオイ(8月28日)、クツワムシ(8月28日)。この著者によると、スズムシとキリギリスは飼育していたもので野外のものではないと注釈がある。飼育すると、虫の成長も早く野外のものより早く鳴くらしい。

室生犀星の『全王朝物語』に「虫の章」という掌篇がある。この物語に登場する姫は、虫を好み、家の裏庭でコウロギを飼っていた。コウロギは用心深くなかな懐かない。だが、小鳥が好むハコベの葉を巣にさし入れた。

「かなり長い間、コウロギはただ見つめるばかりであったが、突然、驚くほど大胆にハコベの葉の上にとまった。とまると同じ早さでその葉をかじった。老人やうなもぐもぐした臼歯の口もとに、ハコベの葉が三枚までたぐりよせられ、それらはお腹のなかにおさまった。」(室生犀星「虫の章」)

虫を好むという姫の性格は王朝時代、なかなか理解されるものではなかった。今日でも、その鳴き声を聞けば秋の訪れを感じるが、飼育となるとそれを趣味とする人は稀である。蝶、蝉、トンボ、スズムシなど、自然の親しみながら王朝の物語に触れるのも一興である。

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