こぎはなれ八重のしほぢにゆく舟のほのかにだにも見るほどのなみ(登蓮法師恋百首)
みなといりのたまつくり江にこぐふねのおとこそたてね君を恋ふれど(新勅撰和歌集)
しるべせよあとなき波にこぐ船のゆくへも知らぬ八重のしほ風(新古今和歌集)
はかなくて草まに見ゆる浮き舟のよるべさだめずものぞかなしき(中務内侍日記)
みなといりの葦わけ小舟(をぶね)さはり多みわがおもふ君にあはぬころかも(万葉集)
わが恋ははかたをいづる唐船のゆたにたゆたに追い風をまつ(夫木和歌抄)
浦がくれ入り江に捨つるわれ舟の我ぞくだけて人は恋しき(玉葉和歌集)
わするなよこぎはなれても蜑小舟(あまをぶね)おなじみなとによるのちぎりを(草庵集百首和歌)
こち風になびきもはてぬ蜑舟(あまぶね)の身をうらみつつこがれてぞふる(玉葉和歌集)
みなといづるあまの小舟(をぶね)の碇縄(いかりなは)くるしきものと恋をしりぬる(拾遺和歌集)
恋にのみこがるる舟のいかりなは思ひ沈めばくるしかりけり(夫木和歌抄)