河霧のふもとをこめてたちぬれば空にぞ秋の山は見えける(古今和歌六帖)
たれかまた弓束(ゆづ か)まくともしらまゆみほそ川霧の秋のゆふぐれ(津守国冬)
山路には人やまどはす河霧のたちこぬさきにいまわたりなむ(古今和歌六帖)
野べの色はみなうす墨になりにけりしばしと見つる夕霧の空(夫木抄)
秋の野に旅寝せよとやゆふ霧のゆくべきかたをたちへだつらむ(続古今和歌集)
ことならば晴れずもあらなむ秋霧のまぎれに見えぬ君と思はむ(古今和歌六帖)
君がゆく海辺のやどに霧たたば我が立ちなげく息と知りませ(万葉集)
秋の田の穂の上に霧(き)らふ朝霞いつへのかたに我が恋ひやまむ(万葉集)
峰くだる雲にたちそふ川霧の晴るるかたなき我が思ひかな(玉葉和歌集)
ながめてもむなしき空の秋霧にいとどおもひのゆくかたもなし(草庵集)
隔(へだ)つるも晴れ行く色とみるものを人の心をあききりの空(蒙求和歌)