秋はただ荻の葉すぐる風のおとに夜ふかく出づる山の端の月(風雅和歌集)
山鳥の尾の上の秋の夜半の月こころながくも待ちいでぬるかな(文保百首)
あまつそら浮き雲はらふあきかぜにくまなくすめる夜半の月かな(新勅撰和歌集)
あさぢはら葉末にむすぶ露ごとにひかりをわきてやどる月影(千載和歌集)
かげやどす露のみしげくなりはてて草にやつるるふるさとの月(新古今和歌集)
おもひかねながむる空もかきくらしなみだにくもる夜はの月かげ(風葉和歌集)
しらざりき雲ゐのよそに見し月のかげをたもとにやどすべしとは(山家集)
秋の夜の月のひかりはあかけれど人の心のうちはてらさず(古今和歌六帖)
夜ごとにながむる人はあまたあれど空には月ぞひとりすみける(纂題和歌集)
さびしさにあはれもいとどまさりけりひとりぞ月は見るべかりける(千載和歌集)
こころすむ秋の月だになかりせばなにをうき世のなぐさめにせむ(風雅和歌集)