秋萩にうらびれをれば足引の山下とよみ鹿の鳴くらむ(古今和歌集)
秋萩にみだるる玉は鳴く鹿の声よりおつるなみだなりけり(貫之集)
妻こひの涙や落ちてさを鹿の朝立つ小野の露とおくらむ(新拾遺和歌集)
露ながらみだれぞまさるさを鹿の鳴く音(ね)もしげき野べのかるかや(京極為兼)
さらぬだに夕べさびしき山ざとの霧のまがきに牡鹿鳴くなり(千載和歌集)
もの思ふこのゆふぐれにこころあらば尾の上(へ)の鹿の声な聞かせそ(光経集)
秋ごとに聞けどもあかぬ宇治山の尾のへの鹿の夜半のひと声(夫木抄)
山里は秋こそことにわびしけれ鹿のなくねに目をさましつつ(古今和歌集)
妻こひの秋の思ひのながき夜を明かしかねたる鹿のこゑかな(宝治百首)
鳴く鹿の声にめざめてしのぶかな見はてぬ夢の秋の思ひを(新古今和歌集)
たれ聞けと声たかさごのさを鹿のながながし夜をなきあかすらむ(後撰和歌集)
秋の夜をあかしかねたるひとり寝のあはれなそへそさを鹿の声(草庵集百首和歌)
木がらしに月すむ峯の鹿の音(ね)をわれのみ聞くは惜しくもあるかな(風雅和歌集)
秋の夜は寝覚めののちも長月のあり明の月に鹿ぞ鳴くなる(新拾遺和歌集)
思ふことあり明がたの月影にあはれをそふるさを鹿のこゑ(金葉和歌集)
寄鹿恋
妹にわがうら恋ひをれば足引きの山下とよみ鹿ぞ鳴くなる(古今和歌六帖)
このごろは野べの牡鹿(をじか)のねに立ててなかぬばかりといかで知らせむ(新後撰和歌集)
(2009年11月7日の「鹿」の記事は削除しました。)