虫の音もちぢにみだるる秋の夜のあはれをいかがいひつくすべき(永久百首)
庭の虫よそのきぬたのこゑごゑに秋の夜ふかきあはれをぞ聞く(玉葉和歌集)
秋の夜を長しといへどつもりにし恋を尽くさばみじかくありけり(万葉集)
秋萩をちらす時雨のふるころはひとり起きゐて恋ふる夜ぞ多き(玉葉和歌集)
おもひきや秋のよかぜのさむけきに妹(いも)なき床(とこ)にひとり寝むとは(後拾遺和歌集)
ひとり寝はながきならひの秋の夜をあかしかねてや鹿もなくらむ(続後撰和歌集)
山里のいなばの風にねざめして夜深く鹿の声をきくかな(新古今和歌集)
夜もすがら妻なき鹿のなく声もひとり寝覚めの友と聞けとや(政範集)
こひしくは夢にも人を見るべきに窓うつ雨に目をさましつつ(大弐高遠集)
さびしさは秋のねざめに尽きにけり荻ふく風にありあけの月(沙玉集)
いくかへり秋の夜ながき寝覚めにもむかしをひとり思ひいづらむ(新後撰和歌集)
秋の夜は窓うつ雨に夢さめて軒ばにまさる袖のたまみづ(六百番歌合)
袖の露もふりそふ閨の秋の雨にいとど干(ひ)がたき敷妙の床(新続古今和歌集)
いくたびか我が身ひとつに秋を経(へ)て袖のなみだに月を見るらむ(続古今和歌集)
(2009年11月9日、2010年8月17日の「秋の夜」の記事は削除しました。)