monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 夏 五月五日 競馬・騎射

2016年05月05日 | 日本古典文学-夏

騎射
射手人のあやめのかつらなかきねにけふのまゆみを引やそへまし
 五月五日豊楽院にて昔は騎射を御覧ぜられしなり。是を馬弓と云。天子群臣みなあやめのかづらを冠にかけて。節会の儀有し也。くす玉をもたまひけるにや。いと興有事にこそ侍れ。
(年中行事歌合~群書類従6)

おなしくは-なのりてすきよ-ほとときす-ひをりのそらも-ややくれぬめり
あやめふく-さつきのゆみを-いにしへは-なからのもりへ-みにそゆきける
しきりはの-やさしきものは-あやめくさ-けふひきつるる-まゆみなりけり
えひらには-あやめやさしく-さしそへて-ひたりのまゆみ-けふやひくらむ
あやめくさ-なかきねならぬ-まゆみをも-ともにけふこそ-ひくひなりけれ
(為忠家後度百首~日文研HPより)

むかし、右近の馬場のひをりの日、むかひにたてたりけるくるまに、女のかほのしたすだれよりほのかに見えければ、中将なりけるおとこのよみてやりける。
見ずもあらず見もせぬ人のこひしくはあやなくけふやながめくらさむ
返し、
しるしらぬなにかあやなくわきていはむおもひのみこそしるべなりけれ
のちはたれとしりにけり。
(伊勢物語~バージニア大学HPより)

前大納言隆房中将に侍けるとき、右近馬場のひをりの日まかれりけるに、物見侍ける女くるまよりつかはしける 読人しらす
ためしあれはなかめはそれと知なからおほつかなきは心成けり
返し 前大納言隆房
いはぬより心や行てしるへするなかむるかたを人のとふ迄
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

右大将兼長むまはにてまゆみいさせ侍けるに、とねりとものまとかくることをあらそひて夜更るまて侍けれは、物見車ともみな追々に帰りけるに、ある女車よりかくかきて大将の随身にとらせて侍ける 読人しらす
梓弓ためらふ程に月影のいるをのみ見てかへりぬるかな
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)


「玉貫く」用例

2016年05月05日 | 日本国語大辞典-た行

 「玉貫く」という用語は、「玉を緒(お)でつらぬく。水滴などを玉にみたてて、それらをつらぬいている、また、つらねているさまにいう。」という語釈となっていて、日本国語大辞典・第二版では早い用例として、『実方集』(998年頃)をあげていますが、もっとさかのぼる用例があります。

万葉集の「玉貫く」用例は、すべて「(五月五日の)薬玉に通す」意なので語釈もやや限定されます。

ほととぎす何の心ぞ橘の玉貫く月し来鳴き響(とよ)むる(221ページ)
高御座(たかみくら) 天(あま)の日嗣と すめろきの (略) あやめぐさ 玉貫くまでに 昼暮らし (略)(263~264ページ)
時ごとに いやめづらしく 八千種に (略) あやめぐさ 玉貫くまでに あかねさす 昼はしめらに (略)(285ページ)
我が背子(せこ)と 手携(てたづさ)はりて 明けくれば (略) あやめぐさ 玉貫くまでに 鳴き響(とよ)め (略)(287~288ページ)
伊藤博校注『万葉集 下巻』(角川文庫)角川書店、1988年