騎射
射手人のあやめのかつらなかきねにけふのまゆみを引やそへまし
五月五日豊楽院にて昔は騎射を御覧ぜられしなり。是を馬弓と云。天子群臣みなあやめのかづらを冠にかけて。節会の儀有し也。くす玉をもたまひけるにや。いと興有事にこそ侍れ。
(年中行事歌合~群書類従6)
おなしくは-なのりてすきよ-ほとときす-ひをりのそらも-ややくれぬめり
あやめふく-さつきのゆみを-いにしへは-なからのもりへ-みにそゆきける
しきりはの-やさしきものは-あやめくさ-けふひきつるる-まゆみなりけり
えひらには-あやめやさしく-さしそへて-ひたりのまゆみ-けふやひくらむ
あやめくさ-なかきねならぬ-まゆみをも-ともにけふこそ-ひくひなりけれ
(為忠家後度百首~日文研HPより)
むかし、右近の馬場のひをりの日、むかひにたてたりけるくるまに、女のかほのしたすだれよりほのかに見えければ、中将なりけるおとこのよみてやりける。
見ずもあらず見もせぬ人のこひしくはあやなくけふやながめくらさむ
返し、
しるしらぬなにかあやなくわきていはむおもひのみこそしるべなりけれ
のちはたれとしりにけり。
(伊勢物語~バージニア大学HPより)
前大納言隆房中将に侍けるとき、右近馬場のひをりの日まかれりけるに、物見侍ける女くるまよりつかはしける 読人しらす
ためしあれはなかめはそれと知なからおほつかなきは心成けり
返し 前大納言隆房
いはぬより心や行てしるへするなかむるかたを人のとふ迄
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
右大将兼長むまはにてまゆみいさせ侍けるに、とねりとものまとかくることをあらそひて夜更るまて侍けれは、物見車ともみな追々に帰りけるに、ある女車よりかくかきて大将の随身にとらせて侍ける 読人しらす
梓弓ためらふ程に月影のいるをのみ見てかへりぬるかな
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)