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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 秋 野宮

2015年09月17日 | 日本古典文学-秋

齋王の野宮におはしますありさまこそ、やさしく面白き事のかぎりとは覺えしか。
(徒然草~バージニア大学HPより)

承和元年八月乙巳(二十七日) 久子内親王が伊勢斎宮として奉仕するため、先般、賀茂川で禊をし、初めて野宮へ入った。
(続日本後紀~講談社学術文庫)

(長和二年九月)二十七日、丙辰。 伊勢斎宮、野宮に遷御
この日、伊勢斎宮(当子内親王)が野宮に遷御された。わたしは、これを見物した。女方(源倫子)も、また同じく見物した。中宮大夫と太皇太后宮大夫(藤原公任)と同車した。時は申剋であった。ところが、その頃、雨が降った。晴れるのを待っているうちに、日はすでに暮れて、夜になった。
(御堂関白記〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)

(寛仁元年九月)二十一日、丙辰。 伊勢斎宮、野宮に入る
伊勢斎宮(嫥子女王)は、野宮に遷(うつ)った。一日中、雨が降った。申剋に雨が止んだ。この時、吉時であった。摂政と共に、斎宮の行列を見物した。(略)
(御堂関白記〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)


古典の季節表現 秋 菊

2015年09月12日 | 日本古典文学-秋

世にもおもしろき菊の根を、尋ねつゝ掘りて參る。色々うつろひたるも、黄なるが見所あるも、樣々に植ゑたてたるも、朝霧の絶え間に、見わたしたるは、げに老いもしぞきぬべき心地するに、なぞや。まして、思ふことの、少しもなのめなる身ならましかば、すきずきしくも、もてなし若やぎて、常なき世をも過ぐしてまし。
(紫式部日記~バージニア大学HPより)

京極太政大臣中納言と申しける折菊をおびたゞしき程にしたてゝ鳥羽院にまゐらせ給ひたりける鳥羽の南殿の東面のつぼに所なきほどにうゑさせたまひけり公重少將人々をすゝめて菊もてなさせけるにくはゝるべきよしあれば
君が住むやどのつぼには菊ぞかざる仙の宮といふべかるらむ
(山家和歌集~バージニア大学HPより)

入道二品親王性助家に菊をうへさせける時よめる 法眼行済
うつしうへは千世まて匂へ菊の花君か老せぬ秋を重て
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

九月はかり菊花を 聖武天皇御歌
もゝしきにうつろひわたる菊の花にほひそまさる万世の秋
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

菊をよみ侍ける 元輔
我宿のきくの白露万世の秋のためしにをきてこそみめ
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

保延二年、法金剛院に行幸ありて、菊契多秋といへる心を読侍ける 法性寺入道前太政大臣
君か代をなか月にしも白菊の咲や千とせのしるしなるらむ
 花薗左大臣
八重菊のにほひにしるし君か世は千年の秋をかさぬへしとは
 八条前太政大臣
ちはやふる神世のことも人ならはとはまし物を白菊のはな
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
崇徳院の御時、菊送多秋と云事をつかうまつりける 大炊御門右大臣
いくかへり千とせの秋にあひぬらん色もかはらぬしら菊の花
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
崇徳院位におはしましける時、法金剛院に行幸侍て、菊契千秋といふことをよませ給けるに 三条内大臣
君か世の数にかさなる物ならはきくは幾重もかきらさらまし
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
崇徳院の御時、法金剛院に行幸ありて、菊契千秋といふことを講せられ侍けるに 待賢門院堀川
雲のうへの星かとみゆる菊なれは空にそちよの秋はしらるゝ
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

菊花秋久といふことを 太宰権帥為経
いかはかり老せぬ秋をかさぬらむ千世のかさしの白菊の花
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

正応元年大嘗会主基方屏風に、奈加良川岸菊盛開、行人汲下流 正二位隆博
汲人のよはひもさこそ長月やなからの川の菊のした水
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

しらつゆのおきけるきくををりつれはたもとぬれてそいろまさりける
(重之集~日文研HPより)

 庚申の夜菊を
月影のしもにや菊はうつる覧よるこそ色のてりまさりけれ
(赤染衛門集~群書類従15)

百首の歌読侍ける時、菊の歌とてよめる 藤原家隆
寒(さえ)わたる光を霜にまかへてや月に移ふ白菊のはな
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

後冷泉院みこの宮と申ける時、なしつほのおまへの菊おもしろかりけるを、月あかき夜いかゝとおほせられけれは 大弐三位
いつれをかわきておるへき月影に色みえまかふ白菊の花
あしたにまいりて侍けるに、此歌の返しつかうまつるへきよしおほせられけれはよみ侍ける 権大納言長家
月影におりまとはるゝ白菊はうつろふ色やくもる成らん
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

月あかきよ、おなじ御つぼねの菊、いとおもしろきを、左衞門督〔實藤〕、をりてまゐらせられたる枝の殘り、「またをりてまゐらせよ。」と、おほせごとありしかば、辨内侍、 
月かげに折りけん人の名殘とて結びなとめそ菊のした〔らイ〕露 
おなじ比、大宮大納言・萬里小路の大納言・左衞門督、なべてならずうつくしう見ゆるきくどもをまゐらせて、御つぼにうゑられたるを、「いづれにてもことに見えむ一枝、をりてまゐれ。」とおほせごとあれば、辨内侍、 
いづれとか分けてをらむ色々の人の心もしらぎくの花
(弁内侍日記~群書類從18)

崇徳院、月照菊花といへる心をよませ給うけるに 右兵衛督公行
月影に色もわかれぬ白菊は心あてにそおるへかりける
 按察使公通
月影にかほるはかりをしるしにて色はまかひぬ白きくの花
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

延喜十四年、尚侍ふちはら満子に、菊宴給はせけるとき 中納言兼輔
菊花たをりてはみし初霜のをきなからこそ色まさりけれ
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

籬菊如雪といへる心を読侍ける 前大僧正行慶
雪ならは籬にのみはつもらしと思ひとくにそ白菊の花
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

たいしらす 曽祢好忠
草かれの冬まて見よと露霜のをきてのこせる白菊のはな
(詞花和歌集~国文学研究資料館HPより)

閏九月菊といへる心を 従二位顕氏
大かたの秋よりも猶長月のあまる日数に匂ふしら菊
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

鳥羽院御時、内裏より菊をめしけるにたてまつるとて、むすひつけ侍ける 権中納言定頼
今よりは又さく花もなき物をいたくなをきそ菊のうへの露
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

弘安七年九月九日三首歌講せられける時、寄菊恋といへるこゝろを 後近衛関白前右大臣
うつろはん人の心もしら菊のかはらぬ色となに頼むらん
 前大納言為世
たのましなうつろひぬへき白菊の霜待程の契はかりは
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

 このおなじ男のもとに、国経の大納言の御もとより、いささかなることのたまへるに、返りこと聞ゆとて、おもしろき菊にぞつけたりける。さりければ、いかなることをか書いたりけむ、たち返り、また、のたまへる、
  御代を経て古りたる翁杖つきて花のありかを見るよしもがな
とありければ、返し、
  たまぼこに君し来寄らば浅茅生にまじれる菊の香はまさりなむ
(平中物語~新編日本古典文学全集)

にしの京にすみ侍ける人の身まかりてのち、まかきのきくをみてよめる 恵慶法師
うへ置しあるしはなくて菊の花をのれひとりそ露けかりける
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

 紫の上かくれ給ひて後、九月九日
もろともにおきゐし菊の朝露もひとり袂にかかる秋かな
(物語二百番歌合~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)


古典の季節表現 秋 九月

2015年09月12日 | 日本古典文学-秋

九月
ぬしのたよりを わしや菊月(きくづき)の 月よりこころは うはのそら とんとこのごろ 蘭菊(らんぎく)の おまえはわたしを 捨菊(すてぎく)や そふいふき菊と しら菊の ほかのつまをば かさねぎく まだ秋はてる ころでなし 月にばつかり うかれずと 雁(かり)にもたよりを しやしやんせ
(とっちりとん「十二ヶ月」~岩波文庫「江戸端唄集」)


古典の季節表現 秋 九月十一日 例幣

2015年09月11日 | 日本古典文学-秋

  例幣
長月やをくるにきてに伊勢の海の波のしらふゆ懸やそふらん
 右九月十一日例幣とて。伊勢太神宮へ御幣を奉らせ給ふ事の有也。毎年の事なれば。殊なる儀侍らぬにこそ。
(年中行事歌合~群書類従6)

承和元年九月戊午(十一日)
天皇が大極殿に出御して、伊勢大神宮へ奉幣した。
(続日本後紀〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)

承和七年九月癸未(十一日)
使いを遣わして、伊勢大神宮へ幣帛を奉納した。慣例(神嘗祭)となっていることによる。
(続日本後紀〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)

寛弘六年九月十一日、壬戌。
内裏に参った。
左府の許に参った。内豎(ないじゅ)が来て、召しているということを告げた。世尊寺から帰って、すぐに殿上間に参り、伺候した。蔵人(源)頼国が勅を伝えて云ったことには、「やはり参着して奉幣の上卿を勤めるように」と。すぐに陣座に就いて、外記に伝えた。外記は内記を召した。大内記(菅原)宣義朝臣が来た。すぐに宣命を書くよう命じた。一見した後、御所の辺りに赴いた。頭弁(源道方)を介して、これを奏上させた。通例によって、宣命は草案を奏上せずに、ただ賜わった。陣座に就かずに、直ぐに陣の前に出て就き、行事を勤めた。すぐに東廊に赴いた。御幣を賜う中臣以下を伺候させた。使が参入して、これを賜わった。神祇伯秀頼王を召して、宣命を賜わらせた。退出した。左府の許に参った。雑事を申した。
(権記〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)