ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

どんなメンタル?!

2020-08-08 16:17:57 | 思い
 ▼大阪の吉村知事が、
コロナウイルスとうがい薬の関連性についてコメントした。
 すると、一気に店頭から『イソジン液』が消えた。
そんな報道があった。

 数ヶ月前のトイレットペーパーも同様だ。
その信ぴょう性を確かめるよりも、
「まずはもしものため、安心感がほしい!」。
 そんな衝動が店へと走らせるのだろう。
コロナが、ウイルスと一緒に不信や不安をまき散らしている。
 そんな一例だと思う。

 そうは言いつつ、私も渦中の1人だ。
不信も不安も、大ありだ。
 だが、世界中の第一線で闘っている研究者を信じる。
 「必ず、この闇を抜け出す時が来る」。
その道を、きっと切り開いてくれる。

 だから、今の私は出来ることを、
淡々と平然とやりながら過ごす・・。 
 それに尽きる・・・。

 しかし、長期戦だ。
問題は長きに耐えるメンタルだ。
「まずはもしものため・・」なんて、
店頭へ走らない強さが大事だ。
 
 メンタルが問われているのだ。
さて、どこまで強いか。どれだけ弱いか。
 私のメンタルを、さかのぼってみる。

 ▼ それは、確か小学校1年生のことだ。
当時、両親は魚の行商をしていた。
 夕方、遅くにならないと戻ってこなかった。
放課後、1人きりの私が気がかりだった。

 そこで、せめてもの贈り物だったのだろう。
私を励まそうとの思いもあったのだろう。
 「これで遊んでいてねぇ」だったのかも・・・。

 あの頃、さほど出回っていなかったが、
子供用自転車を買ってくれた。

 青い色で、私にはやや大き目だった。
補助輪をつけて、
舗装なんでされていないガタガタ道を行ったり来たりした。

 姉の手助けもあって、
1か月もすると、補助輪をはずした。
 スイスイとペダルをこいだ。
 
 事件は、その数日後だった。
自転車が楽しくなって、学校から帰るとすぐに乗り回した。
 得意気だった。油断したに違いない。

 今で言う排水溝だ。
当時は、道路横の汚水が貯まったドブだ。
 フタなどはない。

 気づくと自転車がドブに向かっていた。
慌ててブレーキを握ったが、
自転車と一緒に、汚い水に落ちていった。

 頭まで水中に沈んだ。
ドブの底を足で蹴った。
 ようやく青空が見えた。
すぐにまた濁った水になった。

 また、足で底を蹴った。
手も足も忙しく動かした。
 また青い空が見えた。
ホッとする間もなく消えた。

 何回も青空を見たり、濁った水になったり・・。
息が苦しい。
 もう蹴るものがなくなったような気がした。
それでも、足で何かを蹴ろうとした。

 青空が見たいと首を伸ばした。
水が喉に詰まった。
 次第にまわりが暗くなっていった。
その時、上から大きな手が私の両脇をつかんだ。

 声も出ないまま、その手に抱かれた。
顔馴染みの近所の伯母さんが、
ドブに入り、私をかかえてくれた。

 青空がずっと見えた。
私はすすり泣いた。

 伯母さんは、回りの子ども達に手伝わせて、
タライに水を入れ、私を洗ってくれた。

 伯母さんの家には、
女の子の着替えしかなかった。
 私は、母が戻るまで、それを着て待った。

 青い自転車もドブから上げてくれた。
もう安心していい。
 なのに、ドブから救い出された私の体は、震え始めた。
女の子の格好で、ガタガタと震えた。

 汚水に沈み、ようやく見た青空。
苦しいまま足がドブ底に着く。
 また空が見たいともがく。
何度も何度も、濁った水に息を止められた。

 それが、鮮やかにくり返し頭に浮んだ。
体が小刻みに震えた。ずっと震えた。

 「なのに!}だ。
3日もすると、私は何もなかったかのように
再び、得意気に青い自転車をこいだ。
 ただ、ドブだけはわざわざ遠ざけるようにした。
体の震えもすっかり忘れてしまった。

 ところが、4年生の時だ。
水泳教室があった。海水浴場ではじめて海に入った。
 それまで水泳の経験がなかった。
先生に促されて、みんなと一緒に海に頭を入れた。 

 何の前触れもなく、
青い自転車と一緒に落ちたドブの中が、突然蘇った。
 青空が見たくて、息を詰まらせながら必死な私がいた。

 急に、体がブルブルガタガタと震え始めた。
深呼吸をくり返しても、震えは止まらなかった。
 震えたまま、いち早く砂浜に上がった。

 「もう大丈夫!」。
意を決し、海に再び顔を入れに行った。
 でも、ブルブル震え出した。

 翌年も、翌々年も水泳教室があった。
「今年こそは大丈夫」。
 海に頭を沈めた。
震えが始まり、止まらなくなった。

 「ほら、アンタは腎臓の病気をしたでしょう。
そのせいで、水に入ると人一倍寒くなるのよ。」
 母は、明るく私を慰めた。

 先生には、母の弁を借りた。
腎臓病を言い訳に、さっさと海から上がった。 





   オニグルミの実が「こんな!」 

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