私の自治会には、『自主防災組織』がある。
災害が迫った場合、会長を本部長とする防災本部と、
自治会役員で編成する防災班が、しっかり機能するよう備えている。
その一環として取り組んでいるものの1つが、
『災害時要援助者サポート体制』である。
具体的には、
75歳以上で一人暮らしの方の中から、
希望する方を対象に、
災害発生時やその危険がある時、
避難所までの移動を手助けするため、
近隣会員を配置する(サポーター)制度である。
例えば『高齢者避難』などの指示があった場合、
一人暮らしの高齢者とサポーターが、
「避難所までいつどのようにして移動するか」などの連絡を取り合い、
場合によっては、一緒に避難所へ行くなどのサポートをするものである。
この取り組みは、私の自治会オリジナルのものだが、
4年前から実施している。
一人暮らしの高齢者とサポーターの組み合わせは、
2年ごとに見直し、継続や新規などの更新をすることにしている。
その更新が、今年度末である。
2月に入り、2人1組で5つのブロックに別れて、
それに取り組むことになった。
私は、T氏と一緒に、一番世帯数の多いブロックを担当する。
2年前までは、世帯数の割に対象となる高齢者は少なかった。
ところが、この2年間で倍に増えた地域である。
増加の訳は、配偶者の死去と75歳の年齢になった方が増えたから。
まずは、対象者宅を戸別訪問し、サポーター希望の有無を聞き取る。
その前に、主旨と期間、訪問者名を記した印刷物を配布した。
訪問すると、ほとんどの方がその印刷物を見ていた。
サポーターを希望するか否かの意向と共に、
一人一人の想いに触れた。
3人の声を記す。
① Aさんの声
Aさんは、80歳を越えていた。
2年ごとに2回希望調査に伺った。
「まだ誰かに頼らなくても大丈夫だと思う。
いざという時は、避難所まで1人で行けるよ」
過去2回の回答はこうだった。
ところが、今回は違った。
「まだ、車の運転もしているんだ。
だから、何とか避難所までは行けると思うよ。
だけど誰かに声をかけてもらえると心強いなあ。
それだけでいいんだ。
誰か、そんな人がいると助かるなあ」。
「じゃ、サポーターを探してみますね」
「あまり近所づきあいしてないんだけど、
誰か頼める人いるかなあ。
よろしく頼みます」
Aさんは、2度3度と頭を下げた。
② Bさんの声
いつごろから一人暮らしなのかは知らない。
今年75歳を迎え、サポートの対象になった。
初めて希望の意向調査に伺った。
主旨を説明するまでもなく、
事前に配布した印刷物でこの制度は理解していた。
早速、意向を尋ねた。
「車もあるし、どこが避難所になっても行けると思います。
よほどのことでないと歩いてでも、まだ大丈夫。
でも・・、サポーターでしたね・・いてくれると・・。
でも・・、まだ一人でも・・」
Bさんは、ずっと迷っていると言う。
私は言った。
「2年ごとに意向を聞いて、サポーターを決めます。
今回は、希望しなくても、2年先に希望することもできます。
もし、その間にサポーターが必要になったら、
その時はご連絡ください。
対応するようにしますから」
Bさんの表情が急に明るくなった。
「そうですか。途中でも大丈夫ですか。
分かりました。
でも、私、2年間は一人で頑張ってみます。
きっと大丈夫です。
もう決めました」
③ Cさんの声
インターポンを押すと、しばらくして応答があった。
「玄関まで時間がかかります。
すいません。お待ち下さい」
その通りだったが、
「ご迷惑をおかけしました」の声と共に、
玄関戸が開き、やや前屈みに深々と頭をさげながらCさんは現れた。
何度お訪ねしても、
丁寧な言葉遣いと腰の低い方である。
見習いたいといつも思う。
玄関先で訪問の要件を伝えたると、
印刷物で訪問は承知していたと言う。
そして、玄関の板の間に座って、
「お手数をおかけしてはいけませんので、
今までどおりにと、Gさんにお電話し、
これからもよろしくとお願いしました」
と頭をさげる。
「Gさんからは分かりましたとお返事を頂き、
ホッとしました」とも。
Cさんは、この制度を初年度から利用し、
Gさんがサポーターになっていた。
私たちがやるべき更新の手続きを、
先回りしてCさんは進めてくださった。
「それは、ありがとうござした。
Gさんの了解をとって頂き、
私たちもほっとしました」
その後、Cさんは再び深く頭を下げて
「皆さんに助けられながら、こうして暮らしていられます。
本当にありがとうございます。
これからもお世話になります、よろしくお願いします」
と両手をついた。
そのような言葉にしきりに恐縮する私に、
Cさんは、こう結んだ。
「でも、塚原さん、私、随分歳をとりました」。
きっと、私より一回り上ではなかろうか。
気丈な振る舞いのそんな結びに、
私の心は揺れていた。
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冬の湖畔 『薫風』が佇む
災害が迫った場合、会長を本部長とする防災本部と、
自治会役員で編成する防災班が、しっかり機能するよう備えている。
その一環として取り組んでいるものの1つが、
『災害時要援助者サポート体制』である。
具体的には、
75歳以上で一人暮らしの方の中から、
希望する方を対象に、
災害発生時やその危険がある時、
避難所までの移動を手助けするため、
近隣会員を配置する(サポーター)制度である。
例えば『高齢者避難』などの指示があった場合、
一人暮らしの高齢者とサポーターが、
「避難所までいつどのようにして移動するか」などの連絡を取り合い、
場合によっては、一緒に避難所へ行くなどのサポートをするものである。
この取り組みは、私の自治会オリジナルのものだが、
4年前から実施している。
一人暮らしの高齢者とサポーターの組み合わせは、
2年ごとに見直し、継続や新規などの更新をすることにしている。
その更新が、今年度末である。
2月に入り、2人1組で5つのブロックに別れて、
それに取り組むことになった。
私は、T氏と一緒に、一番世帯数の多いブロックを担当する。
2年前までは、世帯数の割に対象となる高齢者は少なかった。
ところが、この2年間で倍に増えた地域である。
増加の訳は、配偶者の死去と75歳の年齢になった方が増えたから。
まずは、対象者宅を戸別訪問し、サポーター希望の有無を聞き取る。
その前に、主旨と期間、訪問者名を記した印刷物を配布した。
訪問すると、ほとんどの方がその印刷物を見ていた。
サポーターを希望するか否かの意向と共に、
一人一人の想いに触れた。
3人の声を記す。
① Aさんの声
Aさんは、80歳を越えていた。
2年ごとに2回希望調査に伺った。
「まだ誰かに頼らなくても大丈夫だと思う。
いざという時は、避難所まで1人で行けるよ」
過去2回の回答はこうだった。
ところが、今回は違った。
「まだ、車の運転もしているんだ。
だから、何とか避難所までは行けると思うよ。
だけど誰かに声をかけてもらえると心強いなあ。
それだけでいいんだ。
誰か、そんな人がいると助かるなあ」。
「じゃ、サポーターを探してみますね」
「あまり近所づきあいしてないんだけど、
誰か頼める人いるかなあ。
よろしく頼みます」
Aさんは、2度3度と頭を下げた。
② Bさんの声
いつごろから一人暮らしなのかは知らない。
今年75歳を迎え、サポートの対象になった。
初めて希望の意向調査に伺った。
主旨を説明するまでもなく、
事前に配布した印刷物でこの制度は理解していた。
早速、意向を尋ねた。
「車もあるし、どこが避難所になっても行けると思います。
よほどのことでないと歩いてでも、まだ大丈夫。
でも・・、サポーターでしたね・・いてくれると・・。
でも・・、まだ一人でも・・」
Bさんは、ずっと迷っていると言う。
私は言った。
「2年ごとに意向を聞いて、サポーターを決めます。
今回は、希望しなくても、2年先に希望することもできます。
もし、その間にサポーターが必要になったら、
その時はご連絡ください。
対応するようにしますから」
Bさんの表情が急に明るくなった。
「そうですか。途中でも大丈夫ですか。
分かりました。
でも、私、2年間は一人で頑張ってみます。
きっと大丈夫です。
もう決めました」
③ Cさんの声
インターポンを押すと、しばらくして応答があった。
「玄関まで時間がかかります。
すいません。お待ち下さい」
その通りだったが、
「ご迷惑をおかけしました」の声と共に、
玄関戸が開き、やや前屈みに深々と頭をさげながらCさんは現れた。
何度お訪ねしても、
丁寧な言葉遣いと腰の低い方である。
見習いたいといつも思う。
玄関先で訪問の要件を伝えたると、
印刷物で訪問は承知していたと言う。
そして、玄関の板の間に座って、
「お手数をおかけしてはいけませんので、
今までどおりにと、Gさんにお電話し、
これからもよろしくとお願いしました」
と頭をさげる。
「Gさんからは分かりましたとお返事を頂き、
ホッとしました」とも。
Cさんは、この制度を初年度から利用し、
Gさんがサポーターになっていた。
私たちがやるべき更新の手続きを、
先回りしてCさんは進めてくださった。
「それは、ありがとうござした。
Gさんの了解をとって頂き、
私たちもほっとしました」
その後、Cさんは再び深く頭を下げて
「皆さんに助けられながら、こうして暮らしていられます。
本当にありがとうございます。
これからもお世話になります、よろしくお願いします」
と両手をついた。
そのような言葉にしきりに恐縮する私に、
Cさんは、こう結んだ。
「でも、塚原さん、私、随分歳をとりました」。
きっと、私より一回り上ではなかろうか。
気丈な振る舞いのそんな結びに、
私の心は揺れていた。
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冬の湖畔 『薫風』が佇む
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