ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

続々 晴れたり曇ったり <3話>

2022-07-09 13:01:37 | 北の湘南・伊達
 ① 我が家は、地元建設会社のSホームに建ててもらった。
注文建築だが、Sホームにはいくつかのポリシーがあった。
 その1つが、家の外観である。

 「お客様からどうしてもとご要望があった場合は別ですが、
外壁には新建材を使わないようにしています」。

 施工を担当したY氏はそう言うと、
Sホームが手がける外壁の施工例をいくつも紹介し、
実際の家も案内してくれた。

 その中から我が家は、モルタル塗装を主に、
道路に面した1階部分だけ道南杉を張った外壁にした。

 その道南杉は、焦げ茶色にペイントした。
しかし、丸10年が経ち、ペンキの色落ちが目立ちだした。
 4月、Sホームに道南杉の部分だけ塗り替えを依頼。
7月になってから、やっと作業が始まった。

 天候の影響もあったが、職人さん1人で3日間を要した。
その初日に驚きがあった。

 作業の様子を見ていた家内に、
刷毛を片手にした職人さんがボソッと言った。 
 「最近、ゴルフ場でお会いしませんが、行ってますか?」
家内は「エッ!」と言ったきりに。

 職人さんは、刷毛の手を休めずに、
「今朝、挨拶した時、ビックリしたさ。
 ご主人も奥さんもどっかで見た顔で・・。
それで、伊達カン(伊達カントリー倶楽部)でよく会う人だって、
思い出しまして・・。
 でも、今年はまだ会ってないかもと思いましてね」。

 家内の驚きは、すぐに私に知らされた。
作業の邪魔をしないようにと気遣いながら、
今度は私から声をかけた。
 伊達カンのメンバーさんだと分かった。
その上、クラブチャンピオンを戦うほどの、
腕前の方だとも・・。

 「去年もその前の年も、毎年何回も2人でいるところを、
伊達カンで見ましたから、覚えていたんです。
 ゴルフ好きなんだって、いつも思ってましたよ」。
気さくな方で、話が進んだ。

 ゴルフの上手下手はあっても、難しいコースは同じ。
「あの6番ホールの上り坂は、いつも苦労します」。
 私が言うと、忙しく刷毛を動かしながら、
「グリーンの横に、バンカーができたでしょう。
だから、益々難しくなってしまって。
 坂の下からなら、5番アイアンで打ってもバンカーが邪魔して・・」。
 
 そんな会話がしばらく続いた。
まさか、外壁塗装にきた職人さんと、
長々とゴルフ談義をすることになるとは・・。
 楽しい時間を過ごした。

 その勢いのまま、
1週間前から腰痛で通っている整骨院へ行った。
 そこの院長さんとは、もう6,7年の付き合いになる。
治療を受けながら、いつも話が弾み。

 「今朝、我が家の外壁塗装に来た人、
伊達のゴルフ場でよく私と家内を見かけていたんだって。
 もうビックリ」。

 すると、院長さんはすかさず、
「だから、伊達は田舎なんですよね。
 何でもかんでも、すぐ知られてしまう。
それが、いやだっていう人も結構いますよね」。

 今度は、私がすかさず、
 「確かに、そうだね。
狭い町だから、色々と分かってしまう。
 でも、そんなところ、私は嫌いじゃない・・」。

  
 ② 家の中以外では、マスク着用が常態になって、
2年半になろうとしている。

 当初、マスク不足で、手製の布マスクまで登場した。
私は、専らユニクロ製の布マスクを洗って、
繰り返し使用していた。
 しかし、感染予防効果には不織布マスクがいいと知り、
安価にもなったので、それを着用するようになった。

 ここ2ヶ月ほど前からは、
不織布でもダイヤモンドカットのものを好んで使っている。  
 マスクと口との間に隙間があり、呼吸が楽なのだ。

 だが、製造メーカーによって、
微妙に大きさや形状に違いがある。
 いろいろ試した結果、T社製がお気に入りになった。

 家内にも同社のマスクを勧め、
私のより「やや小さめ」を箱買いし、使い始めた。
 
 夕食は外でと決めていた日のことだ。
その前にスーパーへの買い物に付き合った。
 予定よりやや時間がかかった。

 一度帰宅し、買った物を冷蔵庫などに入れてから、
再度、出かけることにした。

 ⒉人とも、急いでいた。
いつもはそれぞれ決めた場所にはずしたマスクを置く。
 この時ばかりは、それぞれがテーブルに置き、手を洗いに行った。
 
 買った物の整理を終える家内を待って、再度出発。
急ぎマスクをして、あんかけ焼きそばの店へ。
 すぐに注文をし、正面の家内を見た。

 T社のマスクは中央上部にくぼみがあった。
家内のマスクは、そのくぼみがやや左にずれていた。
 すかさず、それを注意した。
「マスク、曲がってるよ。それ位、気づかないの!」。

 ややトゲのある言い方だった。
家内が、即言い返した。
 「あなたこそ、どうしたの? なんかそのマスク変だよ。
いつもと違う」。
 「どこが変なんだ」。
「顔にあってない感じ」。
 「そんなことないよ。まさかあんたのと間違える訳ないし・・」。
「そうよね。私のはいつも内側にファンデーションがつくから、
すぐわかるもの」。
 家内は、そう言って、マスクをはずして、確かめた。
「あら、やだ。ファンデーションついてない。
これ私のじゃない」。

 今度は、私が急いでマスクをはずして確かめた。
「ええっ!? ファンデーションが・・、ほら!」。

 ここでトゲトゲしいやり取りは終演。
「何やってるの! 2人して」。
 お店の方に気づかれないよう、
声を抑えて、笑ってしまった。


 ③ 5月末、ご近所さんご夫妻がそろってやって来た。
「東京へ行ってきました。これお土産。
 2年ぶりに孫にも会えたし、よかったわ」。
2人とも、それはそれは嬉しそうだった。

 触発された。
まだまだ不安だったが、6月下旬、私たちも東京へ。
 4泊5日で、息子や孫、友人と2年半ぶりの再会だった。

 息子からの提案で、
家族4人だけで夕ご飯を食べる予定を組んだ。
 4人での外食なんて、次男の大学入学祝い以来、
20数年ぶりだった。

 すでに40歳代の2人である。
私もそうだったが、油の乗った年代である。
 彼らなりの充実した仕事ぶりが垣間見え、
まぶしい位だった。

 私からは、貴重な機会なのでと前置きし、
終活的な話題を1つだけ切り出した。

 昨年2月に逝去した兄の骨納めが、5月の連休に終わった。
登別にある両親の墓で、一緒に眠っている。
 もう一人の兄も、最期はそのお墓に入りたいと言う。
でも、私は私のお墓を作り、そこに入りたいと思っている。

 そのことについて、息子らの想いを聞きたかった。

 祖父母の近くにお墓を作っても、北海道まではなかなか行けない。
そこに行っても、2人の思い出は蘇えらない。

 かといって、近くに墓があっても、すぐには行けるけど、
やはり2人との絆は、千葉だ。
 千葉にお墓があったら、
年に1回くらいは会いに行く気になるだろう。

 もうそんなことが話題になるのかと言いつつも、
2人は本音を言ってくれた。
 嬉しかった。

 「じゃ、千葉市の平和公園に墓地を買うことにしようかな」。
これで、終活の1つが済んだ。

 


     いたる所 栗の花が満開

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