新年を迎えても、当地は暖冬だった。
とにかく雪がない。
降っても、うっすら雪化粧程度で、
その雪も数日でとけてしまっていた。
ところが成人の日の朝だ。
珍しく目覚めが早かった。
カーテンの隙間から漏れる明るさに、
違和感が。
日の出には、まだ2時間以上もあるのに、
ほんのりと外が明るいのだ。
「もしや」と起き上がり、カーテン越しに外を覗いてみた。
新雪が防犯灯の光を受け、周囲を明るくしていた。
止めてある愛車を見た。
やや離れているが、車の屋根に雪が、
30センチも積もっているように見えた。
全く気づかない深夜の積雪であった。
「まだ冬休み、その上今日は休日だ!」
登校する子ども達はいない。
通勤の人もいないだろう。
「急ぐことはない!
朝食を済ませてから雪かきにしよう!」
再びベッドへ戻った。
朝食後、身支度を整え、いよいよ雪かき。
玄関の扉を押す。
思いっきり力を入れ、ようやく外に開いた。
玄関先まで雪が積もっていた。
「珍しい!」
12年前の大雪以来のことだった。
これは大変な雪かきになる。
長時間を覚悟した。
ペースダウンして、体力を考えながら、
大雪に挑まなければならないと決めた。
いつものように、家内とはエリアを分け、
黙々と作業を始めた。
お向かいさんも左隣りさんも、
同じような時間から、雪かきを始める。
みんな、いつもよりゆっくりとした調子で、
雪を集め、移動させていた。
⑴ 雪かきの最中
① 雪かきを始めて、やや時間が経ってから、
右隣りのご主人が出てきた。
私に挨拶をし「随分降りましたね」と、
車へ向かった。
雪かきではなかった。
この積雪の中、お出かけするようだ。
エンジン音がして、しばらくすると
車はバックで駐車場から出ようとした。
それは無茶なことだった。
車道までの数メートルを進まないうちに、
車は雪に阻まれ、車輪が空回りを始めた。
車体が雪の上に乗り上げたのだ。
そのまま見過ごす訳にいかなかった。
雪かきを中断し、
スコップを持って、近くから数人が集まってきた。
車道までの積もった雪を除け、車両下の雪もかいた。
15分程度で、
車は圧雪された車道まで出ることができた。
ご主人は、これから登別のスキー場へ行くと言い、
「冬休み中は、スキー教室があるので」
と、言い残して出発した。
無事に、着くことを願った。
しばらくして、奥さんが雪かきを始めた。
まだまだ作業途中の私に、
ご主人の車脱出のお礼を述べた後、こう言った。
「スキー場の辺りは、
全然雪が降らなかったって、
主人から連絡がきました」。
私は、信じられない思いで、
「そうですか!
そう遠くない所なのに、天気って違うんですね」。
② その直後だ。
3軒程離れたご近所の奥さんが、
我が家の脇にあるゴミステーションまで来た。
雪かきする私たちとは大違い。
軽装だった。
長靴でもなく、エプロンに厚手のカーデガン姿で、
片手に大きなゴミ袋を提げていた。
私たちの雪かきの様子に驚きながら、
収納ボックスにゴミ袋を置いた。
そして、私に近寄り言った。
「こんなに積もっているって気がつかなくて・・。
今、外に出てビックリしました。
少し前に、洞爺湖にいる娘から電話が来て、
今朝は50センチ以上も積もってるって言うんです。
だから私、こっちは大丈夫!
そう遠くない所なのに、天気って違うんだね。
雪かき頑張ってって言ってしまいました」。
「今、同じセリフを言ったばかり」
と思いつつ、私は言った。
「とんだ思い違いでしたね。
電話して伊達も凄いことになっているって、
言い直さなくちゃダメですね」。
奥さんは、「そうしますね」と転びそうになりながら、
戻っていた。
⑵ 数日後の電話
①1本目は、
自治会役員を長年されていた先輩からだった。
「会長さん、頼みがあって電話したんだ。
雪かきのことなんだけどさ、
こんなにいっぺんに降ると、
どこの家も雪の捨て場に困るんだ。
でも、車道に捨てるのはダメだよ。
そう思わないかい!?」
私が同意すると、先輩は続けた。
「だから、来月の自治会だよりにさ、
車道に雪を捨てるなって、
会長名の入った文章を載せてくれないかね。
そうでもしないと、直らないわ」。
先輩の思いも理解できた。
しかし、どこにも捨て場がなく、
仕方なく歩道と車道の間に雪山を作る家もある。
よく吟味して、自治会だよりに載せなくてはならない。
「お気持ちはよく分かりました。
どのように自治会だよりに載せたらいいか、
よく考えてみます。
貴重なご意見、ありがとうございます」
と、答えるだけにとどめた。
さてさて、どんな内容でどう呼びかけたらいいものか。
頭を悩ませることになってしまった。
② ドカ雪の翌日から気温が緩んだ。
徐々に雪が解けた。
それによって、朝夕は路面がアイスバーンになった。
そんな朝に、2本目の電話があった。
「私、○班のKと申します。
ツカハラさん助けてください!」。
Aさんは90歳前後の高齢で、
一人暮らし女性だった。
自治会の用件で、
何度かご自宅を訪ねたことがあった。
すぐに顔が浮かんだ。
「Kさん、どうしました?」
「実は、今朝、ツルツルすべる道でしたが、
ゴミを投げにいったんです。
途中まで行くと、ご近所のAさんが来てくれて、
そのゴミを持って行ってくれたんです。
ところがAさん、ゴミを置く所のそばで、
滑って転んだんです。
腕を痛くしたみたいだったんですが、
私、Aさんの電話番号も知らないし、
骨を折ったんじゃないかと心配で、
ツカハラさんどうしたらいいでしょうか?」
「わかりました。
私がAさんに電話してみます。
携帯番号も知ってますから、
Kさんのご心配を伝えておきますね」
Kさんが恐縮しながら電話を切った後、
Aさんに電話し、そこまでの経過を伝えた。
転んだ腕は少し痛むが、仕事には影響ないと言う。
それよりも、
Aさんはお婆ちゃんに心配をさせてしまったと、
転んだことをしきりに悔やんでいた。
電話をしながら、私だけがほっこりとしていた。
湖畔にて 新雪に頬ずり
※ 次回のブログ更新予定は2月10日(土)です。
とにかく雪がない。
降っても、うっすら雪化粧程度で、
その雪も数日でとけてしまっていた。
ところが成人の日の朝だ。
珍しく目覚めが早かった。
カーテンの隙間から漏れる明るさに、
違和感が。
日の出には、まだ2時間以上もあるのに、
ほんのりと外が明るいのだ。
「もしや」と起き上がり、カーテン越しに外を覗いてみた。
新雪が防犯灯の光を受け、周囲を明るくしていた。
止めてある愛車を見た。
やや離れているが、車の屋根に雪が、
30センチも積もっているように見えた。
全く気づかない深夜の積雪であった。
「まだ冬休み、その上今日は休日だ!」
登校する子ども達はいない。
通勤の人もいないだろう。
「急ぐことはない!
朝食を済ませてから雪かきにしよう!」
再びベッドへ戻った。
朝食後、身支度を整え、いよいよ雪かき。
玄関の扉を押す。
思いっきり力を入れ、ようやく外に開いた。
玄関先まで雪が積もっていた。
「珍しい!」
12年前の大雪以来のことだった。
これは大変な雪かきになる。
長時間を覚悟した。
ペースダウンして、体力を考えながら、
大雪に挑まなければならないと決めた。
いつものように、家内とはエリアを分け、
黙々と作業を始めた。
お向かいさんも左隣りさんも、
同じような時間から、雪かきを始める。
みんな、いつもよりゆっくりとした調子で、
雪を集め、移動させていた。
⑴ 雪かきの最中
① 雪かきを始めて、やや時間が経ってから、
右隣りのご主人が出てきた。
私に挨拶をし「随分降りましたね」と、
車へ向かった。
雪かきではなかった。
この積雪の中、お出かけするようだ。
エンジン音がして、しばらくすると
車はバックで駐車場から出ようとした。
それは無茶なことだった。
車道までの数メートルを進まないうちに、
車は雪に阻まれ、車輪が空回りを始めた。
車体が雪の上に乗り上げたのだ。
そのまま見過ごす訳にいかなかった。
雪かきを中断し、
スコップを持って、近くから数人が集まってきた。
車道までの積もった雪を除け、車両下の雪もかいた。
15分程度で、
車は圧雪された車道まで出ることができた。
ご主人は、これから登別のスキー場へ行くと言い、
「冬休み中は、スキー教室があるので」
と、言い残して出発した。
無事に、着くことを願った。
しばらくして、奥さんが雪かきを始めた。
まだまだ作業途中の私に、
ご主人の車脱出のお礼を述べた後、こう言った。
「スキー場の辺りは、
全然雪が降らなかったって、
主人から連絡がきました」。
私は、信じられない思いで、
「そうですか!
そう遠くない所なのに、天気って違うんですね」。
② その直後だ。
3軒程離れたご近所の奥さんが、
我が家の脇にあるゴミステーションまで来た。
雪かきする私たちとは大違い。
軽装だった。
長靴でもなく、エプロンに厚手のカーデガン姿で、
片手に大きなゴミ袋を提げていた。
私たちの雪かきの様子に驚きながら、
収納ボックスにゴミ袋を置いた。
そして、私に近寄り言った。
「こんなに積もっているって気がつかなくて・・。
今、外に出てビックリしました。
少し前に、洞爺湖にいる娘から電話が来て、
今朝は50センチ以上も積もってるって言うんです。
だから私、こっちは大丈夫!
そう遠くない所なのに、天気って違うんだね。
雪かき頑張ってって言ってしまいました」。
「今、同じセリフを言ったばかり」
と思いつつ、私は言った。
「とんだ思い違いでしたね。
電話して伊達も凄いことになっているって、
言い直さなくちゃダメですね」。
奥さんは、「そうしますね」と転びそうになりながら、
戻っていた。
⑵ 数日後の電話
①1本目は、
自治会役員を長年されていた先輩からだった。
「会長さん、頼みがあって電話したんだ。
雪かきのことなんだけどさ、
こんなにいっぺんに降ると、
どこの家も雪の捨て場に困るんだ。
でも、車道に捨てるのはダメだよ。
そう思わないかい!?」
私が同意すると、先輩は続けた。
「だから、来月の自治会だよりにさ、
車道に雪を捨てるなって、
会長名の入った文章を載せてくれないかね。
そうでもしないと、直らないわ」。
先輩の思いも理解できた。
しかし、どこにも捨て場がなく、
仕方なく歩道と車道の間に雪山を作る家もある。
よく吟味して、自治会だよりに載せなくてはならない。
「お気持ちはよく分かりました。
どのように自治会だよりに載せたらいいか、
よく考えてみます。
貴重なご意見、ありがとうございます」
と、答えるだけにとどめた。
さてさて、どんな内容でどう呼びかけたらいいものか。
頭を悩ませることになってしまった。
② ドカ雪の翌日から気温が緩んだ。
徐々に雪が解けた。
それによって、朝夕は路面がアイスバーンになった。
そんな朝に、2本目の電話があった。
「私、○班のKと申します。
ツカハラさん助けてください!」。
Aさんは90歳前後の高齢で、
一人暮らし女性だった。
自治会の用件で、
何度かご自宅を訪ねたことがあった。
すぐに顔が浮かんだ。
「Kさん、どうしました?」
「実は、今朝、ツルツルすべる道でしたが、
ゴミを投げにいったんです。
途中まで行くと、ご近所のAさんが来てくれて、
そのゴミを持って行ってくれたんです。
ところがAさん、ゴミを置く所のそばで、
滑って転んだんです。
腕を痛くしたみたいだったんですが、
私、Aさんの電話番号も知らないし、
骨を折ったんじゃないかと心配で、
ツカハラさんどうしたらいいでしょうか?」
「わかりました。
私がAさんに電話してみます。
携帯番号も知ってますから、
Kさんのご心配を伝えておきますね」
Kさんが恐縮しながら電話を切った後、
Aさんに電話し、そこまでの経過を伝えた。
転んだ腕は少し痛むが、仕事には影響ないと言う。
それよりも、
Aさんはお婆ちゃんに心配をさせてしまったと、
転んだことをしきりに悔やんでいた。
電話をしながら、私だけがほっこりとしていた。
湖畔にて 新雪に頬ずり
※ 次回のブログ更新予定は2月10日(土)です。
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