ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

大切にした教育活動は

2015-06-19 22:13:39 | 教育
 教頭になってすぐのことだった。

 学校の敷地脇にある大木が、
「日射しを遮り、秋には落ち葉で迷惑している。」
と、近隣の方から苦情が寄せられた。

 木一本とて区の財産なので、私は区の担当者と協議し、
その木を伐採することにした。
 ところが、その報告をした際、G校長先生からは思いもよらない回答があった。

 「学校の一つ一つの物には、それぞれに意味や役割がある。」
 「その木に大切な思い出や誓いをした子、励まされた子がいるかも。」
 「だから、単純に伐採を決めてはいけない。」

 私は、早速、近隣のお宅を訪ね、
日射しを遮っている数本の枝木の剪定を行い、
今後も定期的にそんな対応をさせてもらいたいとお話した。
 そして、校長先生から頂いた学校の一本一本の木への思いを、
ご説明させてもらった。

 「一本の木とはいえ、学校が大切にしている
想いがよくわかりました。」
 「学校って、素晴らしいですね。」
 そんなお返事があり、私は深く感動した。

 私は、G校長先生をはじめ4人の校長先生から
上記のようなご指導を数多く受け、
その後、12年間も校長職を務めることができた。
ただただ感謝の一語である。

 さて、私の校長としての歩みであるが、決して順風満帆ではなかった。
特に、着任1、2年目は都教委による様々な改革が行われ、
学校では、職員の強い抵抗を受けた。

 そんな中でも、徐々に徐々にではあったが、
私の思いが先生達に伝わり、校長らしい仕事ができるようになった。

 当初は紙くずのようにしか扱われなかった学校経営方針も、
いつ頃からか、ベテランの先生がマーカーでラインを入れながら
読み返してくれた。
 そして、若手教員の指導にくり返し活用する姿があった。

 校長職を通して、大切にした学校経営(教育活動)の骨子を記す。


    *  *  *  *  *  *


 1 学校が目指すもの

 これからの時代を生きていくには、
社会のどんな変化に対しても常に夢や希望をもち、
そして元気で強靱な心と体が必要になる。

 そのために、自分で問題を解決する力や
自らを律しつつ他者を思いやる心、
たくましく生きるための健康・体力などを備える必要がある。

 特に、自ら学び自ら考える力を培うため、
基礎・基本の確実な定着を図ることによって築かれる「確かな学力」と、
時代の変化にたくましく・しなやかに対応する「豊かな心」を、
全ての子が身に付けること。
 そのことが、強く求められる。

 従って、次のことを念頭におきながら、教育実践にあたることが重要である。
 ①どんな時代でも、力強く生き抜く意欲ある人間を育てること
 ②時代のニーズに応じた創意工夫のある教育活動を展開すること
 ③全教育活動を通し、意図的に有効性のある心の教育を推進すること
 ④家庭や地域に分かりやすい情報を伝え、連携した教育をすること

 
 2 教育への基本姿勢

 ① 人は誰でも、自分を限りなく理解し、
愛情をもって見守り続けてくれる存在(人)を求めている。
 そして、その存在から認められ、励まされることを通して、
自分の持っている力を発揮し、自ら生きるべき道を定め、
その道を力強く歩み続けることができるのである。
 だから「教育は児童理解に始まり、児童理解に終わる」のである。
このことを不動の教育理念とし、全ての教育活動を展開する。

 ② 学校における全ての危機管理は、
事件・事故の発生後における的確な対応(クライシスマネージメント)ではなく、
事件・事故を発生させない取り組み(リスクマネージメント)が、本来の姿である。
そのことを常に念頭におきながら、あらゆる指導にあたる。
 発生後に費やすエネルギーより、
日常のリスクマネージメントこそが安心・安全への近道であり、効率的なのである。


 3 重視したい教育活動

 ① 基礎・基本の習得と表現力を伸ばす授業作り

 授業を大切にし、基礎的基本的な知識・技能等を
どの子にも確実に身に付けさせることは、学校の使命である。
 そのため教師には、教材研修を徹底し、自分の授業を振り返り、
そして児童の実態に応じた授業を実践することが求められる。

 子どもは、「わかった。」「できた。」「うまくなった。」
といった実感をもった時、
意欲が高揚し、自らの力で今まで以上に進んで学習に取り組むのである。
 その営みを通して、基礎・基本の習得が図られると言える。

 また、授業のあらゆる機会を通して表現力を伸ばすことは、
思考力や判断力の伸長に直結している。
 言語表現、文字表現にとどまらず、
音楽、造形、身体等全ての表現活動を視野に入れ、
意図的に、それを伸ばす活動を授業に取り入れると共に、
意欲付けと環境作りを行うことが大切である。

 そのために
 ・教室の移動等は休憩時間に行い、始業と終業を守り
  1単位時間45分をしっかりと確保し、授業を進める。

 ・指導と評価の一体化を図りながら、年間を見通した学習指導を行う。
  併せて、各週毎の確かな計画を立て、意図的、計画的で効率的な指導を行う。

 ・放課後の時間を有効活用し、個に応じた指導を行うと共に、
  学習相談や個別指導を積極的に行う。


 ② 基本的な生活習慣の定着と明るい学級作り

 良好な社会性や、学校生活における円滑な友達関係の基盤として、
基本的な生活習慣の定着を重視し、
発達段階を配慮しつつも、どの子にもしっかりと指導する。

 また、教師は「子どもを見る目」を鍛え、
子どものあるがままを捉え、理解することに努め、
その子の個性や能力に応じた指導を進める。

 そして、親和的で明るい雰囲気の学級集団作りに努め、
子ども同士が互いのよさや特性を認め合えるよう、
常に意図的に指導の工夫を行う。

 そのために
 ・教師の「子どもを見る目」を通して、その子のよさや可能性を
  最大限に引き出し伸ばすようにする。

 ・基本的な生活習慣を次の6つにしぼり、どの子にもその定着を図る。
   話を静かに聞く
   指示を受け止め行動する
   明るくあいさつをする
   正しい言葉遣いをする
   進んで掃除をする
   自分のことは自分でする

 ・褒めて、認めて、励ます指導と共に、生活習慣に対する
  自己評価と相互評価を取り入れる。

 ・子どもと教師、子ども同士の信頼関係を密にし、
  思いやりと協力を大切にした指導を進める。


 ③ 自分に自信が持てる子に育てる

 「自分に自信が持てるようになること」や
「自分の思いや気持ちを大切にすること」が、
自己肯定感や自尊感情の第一歩である。

 従って、「自分が友達や先生の役に立っている。」と言った有用感や、
「自分はみんなから認められている。」と言った安心感(安定感)、
「自分もやればできる。」と言った満足感(充実感)を
実感できる教育が重要である。
 子どもはそれを実感できた時、生き生きと進んで行動し、
自分への自信や、自分を大切にする気持ちが芽生えるのである。

 そのために
  ・どの子にも、授業や生活のどこかで
   活躍できる場や機会を設ける。

  ・何事にも好奇心旺盛な子どもの育成をめざし、
   最後までやり通す態度や能力を育てる。

  ・学校の様々な場面を通して、
   学び合うことの楽しさや大切さを体感させる。



 ☆ 結びとして『私がめざした学校・4』

    その1 誰もが喜んで来る学校
    その2 安心して子どもを任せられる学校
    その3 学習効果を上げる学校
    その4 明るさと活気のある学校 





オオウバユリの蕾が膨らむ <水車アヤメ川公園にて> 

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