▼ 目覚めと共に、空模様が気になる。
次に、私自身の体調と気力を問う。
雨や強風でなければ、1つ目はクリアーだ。
2つ目はどうか。
ゆっくりと時間をかけて、ストレッチをしてみる。
徐々に体が目ざめ、意欲が前向きになる。
これで、オーケーだ。
ランニング姿に着替える。
時には家内も一緒だが、最近は1人が多い。
いつものごとく、1キロ過ぎまでは呼吸が整わず、
苦しさだけの走りだ。
なのに、その内に背筋が伸び、最近は初秋の風に気づき、
心持ち樹木の緑が変化してきたとつぶやきながら、足を進めて行く。
通常は5キロ、時に10キロを走る。
その間に、何人かの方とすれ違う。
登校中の子ども、自転車で出勤するスーツ姿、
愛犬と散歩する女性、そして、私を追い抜いていくランナー等々。
その出逢いが、朝のジョギングをさらに楽しくしている。
今まで何度も、その一瞬のふとしたやり取りに、心が動かされ、
時に励まされ、時に豊かさを頂いてきた。
スローでも走っている私と、歩道で交わすわずかな会話だ。
それに、どんな思いがこもっているだろうか。
違和感を覚える方もいるに違いない。
まさに『冷暖自知』(れいだんじち)だ。
「冷たいか温かいかは、自分で触ってみないとわからない。」
それと同様、私だけが知る体験なのかも・・。
でも、短い北の夏でのすれ違い。
その1コマをスケッチする。
▼ その方は、暮れにはまだ早い、
そんな時期に決まって訪ねて来る。
「郵便局のSと申します。
今年も、年賀はがきを買ってもらえませんか。」
深々と頭を下げて、玄関ドアを開けるのだ。
もう恒例のことなので、迷わない。、
インクジェット版のものを例年同様の枚数で注文する。
彼は、破格の笑みで立ち去る。
数週間後、必ずその年の年賀はがき発売初日に、
はがきの束と一緒に、いくつかの粗品までもってやって来る。
「ありがとうございます。来年もよろしくお願いします。」
支払いを済ませると、明るくそう言って帰って行く。
今や、少ない我が家の年中行事の1つと言っていい。
だから、そのSさんの顔を私はしっかりと覚えている。
半年以上も前になるだろうか。
郵便局前の通りをジョギングしていた朝だ。
出勤途中だったのだろう、徒歩の彼に出逢った。
明るい声で挨拶した私に、
彼は何か考え事の最中だったのか、
うつむいたまま、会釈だけ返してくれた。
あの笑顔はなかった。
若干期待が外れた。
それが心に残り、留まった。
そして、夏のことだ。
再び、同じようなシチュエーションで彼に出逢った。
やはり、うつむいたままの会釈だった。
2度目の出逢いがこのまま過ぎるのがいやだった。
また期待外れが心に残る。
すれ違いざまに言ってみた。
「Sさん、ですよね?!」。
突然、彼は足を止め、私を見た。
私は、走りながらふり向き、もう一度明るい声で挑戦した。
「Sさん?、ですよね!」。
彼は、不思議な表情で、ぼう然としていた。
そして、私を見たまま軽くうなずき、
「だれ?」と唇が動いた。
「ほら、毎年、年賀はがきを買ってる・・、ツカハラ!」。
後ろ走りをしながら、私は少し大きな声で叫んだ。
不審な表情が、急にあの明るい顔に変わった。
私は、片手を挙げてから、再びジョギングに戻った。
「ヤッター!」。
何故か、少年のような気分になっていた。
我が家に着いて早々、家内に教えた。
「迷惑だったかも知れないよ。」
「そうか」と思い直してはみたが、
また出逢ったら、同じことをするだろう。
きっと、そうする。
▼ ノルディックウオーキングのストックを手に散歩する方に、
出逢うことが多い。
何故か、高齢の女性ばかりだ。
天気予報にはなかったのに、途中で雨が降り始めた。
それほど強い雨にはなりそうもない。
そのまま走り続けたが、
朝なのに小ぬか雨が辺りをうす暗くしていた。
よく走るお気に入りのコースの終盤だった。
右折して少し行くと、
しばしばすれ違う両手にストックの方と顔を合わせた。
陽差しを避けた広いつばの帽子と、
これまた大きめのリュックを背負い、
一歩一歩しっかりとした足どりの方だった。
私より一回りは上なのではないだろうか。
いつもの挨拶に替えて、声をかけた。
「雨、降り出しましたね。大丈夫ですか。」
すると、その方は、私に顔を向け明るく答えた。
「あと少し、頑張ります。」
その力強い返事に、反応した。
「そうですか。頑張って、気をつけてください!」
「ハイ!」
雨でも、もう少し頑張って歩いて見よう。
てっきり、そんな意気込みだと思った。
その強さに、少し元気をもらった。
だから、ふとふり返って見た時に、
その後姿がなかったことに、驚いてしまった。
「なぜいない。」
雨に濡れ、走りながら、姿が消えた訳を考え続けた。
私が右折してきた道までは行ってないはず・・・。
ならば、どうして・・・?
ヒントは、「あと少し」にあった。
それは、あと少しでゴール、つまり自宅に着くと言うこと。
その意味だったのだ。
それを私は、勝手に解釈した。
小雨模様のジョギングの最中、
少しの時間、「狐にだまされた童話」の中にいた。
ジョギング道に秋桜が満開
次に、私自身の体調と気力を問う。
雨や強風でなければ、1つ目はクリアーだ。
2つ目はどうか。
ゆっくりと時間をかけて、ストレッチをしてみる。
徐々に体が目ざめ、意欲が前向きになる。
これで、オーケーだ。
ランニング姿に着替える。
時には家内も一緒だが、最近は1人が多い。
いつものごとく、1キロ過ぎまでは呼吸が整わず、
苦しさだけの走りだ。
なのに、その内に背筋が伸び、最近は初秋の風に気づき、
心持ち樹木の緑が変化してきたとつぶやきながら、足を進めて行く。
通常は5キロ、時に10キロを走る。
その間に、何人かの方とすれ違う。
登校中の子ども、自転車で出勤するスーツ姿、
愛犬と散歩する女性、そして、私を追い抜いていくランナー等々。
その出逢いが、朝のジョギングをさらに楽しくしている。
今まで何度も、その一瞬のふとしたやり取りに、心が動かされ、
時に励まされ、時に豊かさを頂いてきた。
スローでも走っている私と、歩道で交わすわずかな会話だ。
それに、どんな思いがこもっているだろうか。
違和感を覚える方もいるに違いない。
まさに『冷暖自知』(れいだんじち)だ。
「冷たいか温かいかは、自分で触ってみないとわからない。」
それと同様、私だけが知る体験なのかも・・。
でも、短い北の夏でのすれ違い。
その1コマをスケッチする。
▼ その方は、暮れにはまだ早い、
そんな時期に決まって訪ねて来る。
「郵便局のSと申します。
今年も、年賀はがきを買ってもらえませんか。」
深々と頭を下げて、玄関ドアを開けるのだ。
もう恒例のことなので、迷わない。、
インクジェット版のものを例年同様の枚数で注文する。
彼は、破格の笑みで立ち去る。
数週間後、必ずその年の年賀はがき発売初日に、
はがきの束と一緒に、いくつかの粗品までもってやって来る。
「ありがとうございます。来年もよろしくお願いします。」
支払いを済ませると、明るくそう言って帰って行く。
今や、少ない我が家の年中行事の1つと言っていい。
だから、そのSさんの顔を私はしっかりと覚えている。
半年以上も前になるだろうか。
郵便局前の通りをジョギングしていた朝だ。
出勤途中だったのだろう、徒歩の彼に出逢った。
明るい声で挨拶した私に、
彼は何か考え事の最中だったのか、
うつむいたまま、会釈だけ返してくれた。
あの笑顔はなかった。
若干期待が外れた。
それが心に残り、留まった。
そして、夏のことだ。
再び、同じようなシチュエーションで彼に出逢った。
やはり、うつむいたままの会釈だった。
2度目の出逢いがこのまま過ぎるのがいやだった。
また期待外れが心に残る。
すれ違いざまに言ってみた。
「Sさん、ですよね?!」。
突然、彼は足を止め、私を見た。
私は、走りながらふり向き、もう一度明るい声で挑戦した。
「Sさん?、ですよね!」。
彼は、不思議な表情で、ぼう然としていた。
そして、私を見たまま軽くうなずき、
「だれ?」と唇が動いた。
「ほら、毎年、年賀はがきを買ってる・・、ツカハラ!」。
後ろ走りをしながら、私は少し大きな声で叫んだ。
不審な表情が、急にあの明るい顔に変わった。
私は、片手を挙げてから、再びジョギングに戻った。
「ヤッター!」。
何故か、少年のような気分になっていた。
我が家に着いて早々、家内に教えた。
「迷惑だったかも知れないよ。」
「そうか」と思い直してはみたが、
また出逢ったら、同じことをするだろう。
きっと、そうする。
▼ ノルディックウオーキングのストックを手に散歩する方に、
出逢うことが多い。
何故か、高齢の女性ばかりだ。
天気予報にはなかったのに、途中で雨が降り始めた。
それほど強い雨にはなりそうもない。
そのまま走り続けたが、
朝なのに小ぬか雨が辺りをうす暗くしていた。
よく走るお気に入りのコースの終盤だった。
右折して少し行くと、
しばしばすれ違う両手にストックの方と顔を合わせた。
陽差しを避けた広いつばの帽子と、
これまた大きめのリュックを背負い、
一歩一歩しっかりとした足どりの方だった。
私より一回りは上なのではないだろうか。
いつもの挨拶に替えて、声をかけた。
「雨、降り出しましたね。大丈夫ですか。」
すると、その方は、私に顔を向け明るく答えた。
「あと少し、頑張ります。」
その力強い返事に、反応した。
「そうですか。頑張って、気をつけてください!」
「ハイ!」
雨でも、もう少し頑張って歩いて見よう。
てっきり、そんな意気込みだと思った。
その強さに、少し元気をもらった。
だから、ふとふり返って見た時に、
その後姿がなかったことに、驚いてしまった。
「なぜいない。」
雨に濡れ、走りながら、姿が消えた訳を考え続けた。
私が右折してきた道までは行ってないはず・・・。
ならば、どうして・・・?
ヒントは、「あと少し」にあった。
それは、あと少しでゴール、つまり自宅に着くと言うこと。
その意味だったのだ。
それを私は、勝手に解釈した。
小雨模様のジョギングの最中、
少しの時間、「狐にだまされた童話」の中にいた。
ジョギング道に秋桜が満開
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