65歳以上の方を対象にした軽スポーツの集まりが、
総合体育館であった。
私は、その副実行委員長を頼まれた。
当日は、いくつかの役割があった。
その1つが、6つの競技の1つで参加者の得点を記録する係だった。
約60名の参加があった。
次々と得点記録をしないと、
スムーズに競技が進まない。
休む間のない1時間半だった。
記録をしながら、底冷えを感じた。
でも、慌ただしさで上着を取りに行くこともできないままだった。
それが悪かった。
その日の午後から、風邪気味になった。
ノドが痛く、時折咳やくしゃみが出た。
翌日からは、市販の風邪薬を頼った。
1週間が過ぎても回復しないどころか、
痛みも増し、頭痛もひどくなった。
もう市販薬では駄目と判断し、
かかりつけ医へ行くことにした。
待合室は、患者で溢れていた。
『本医院の待ち時間について』という張り紙があった。
そこに「1時間半~3時間」お待ち頂くことがありますと書いてあった。
4日の間を置いて2度、その待合室で診察を待った。
その時間、咳き込むたびにノドと頭と全身が痛みながらも、
その場にいる患者さんをウオッチした。
2つを記す。
① 女性の2人づれ
受付を済ませて、待合室の空席に着くと、
はす向かいに、同世代の女性が2人座っていた。
仲良く小声でお喋りをしていた。
しばらくすると2人は、一緒に受付に呼ばれた。
それで、2人はそろってここへ来たことが分かった。
まずは、そのことに驚いた。
私たちは、誰かと連れだって病院へ行くだろうか。
家族に付き添ってもらって通院したことはある。
でも、予防接種以外にそのような体験はないのでは・・。
「友だちやご近所さんと連れだって」病院へ行くなんて、
私には考えられないことだった。
年齢と共に、女性は協調性が増すと聞いたことがあるが、
男性の私には決して真似のできないこと。
ただただ驚いてしまった。
そして、この2人にはもう1つ。
受付に呼ばれた2人は、
保険証かマイナンバーカードの提示を求められた。
2人は、マイナンバーカードの提示は初めてなので、
やってみたいと言った。
早々、受付の女性が提示の機器前まで来て、
操作方法を説明した。
1人の女性が、不安げな表情で自分のカードを機器に入れ、
受付の女性の説明に従って、顔認証を選び機器を見た。
それで全てが終わった。
「実に簡単!」だ。
提示を終えた女性の不安は、自信に変わった。
突然、連れの女性に声をかけた。
「ここにカードを入れて!」
「そう、その向きに入れるの」
「顔認証ってあるでしょう。そこを指で!
そこを見て見て!」
「それで、もう終わり」
不安げな女性とは対照的に、
一歩先を行った女性のなんと誇らしげなこと。
こんな姿も女性ならではと言ったら、
言い過ぎ・・かな?
② 3時間待ちの顛末
2時間半も待って、
やっと診察室前の廊下の長椅子まで呼ばれた。
「後わずかだ!」
そこでも4人程が呼名を待っていた。
やや時間はかかったが、順に診察室に呼ばれた。
次は私の番だと思った。
ドアが開き、看護師さんが名前を呼んだ。
「××ハラ ワタルさま、どうぞ」
私は立ち上がれなかった。
「私の名ではない!」
少し離れた席の男性が急いで、
診察室へ入っていった。
よく似た名に違和感があった。
その方が、診察を終え退室した。
次は私と確信した。
ドアが開き、看護師さんが名前を呼んだ。
「××ハラ ワタルさま、どうぞ」
立ち上がって、思わず言った。
「ツカハラです。××ハラではありません」
看護師さんは血相を変えた。
急ぎ診察室へ戻り、
「失礼しました。ツカハラワタルさまどうぞ!」
かかりつけ医である。
患者を間違えての診察はないだろう。
「それでも」と、私は医師に言った。
「ツカハラです。よろしくお願いします」
さて、診察が終わり、会計で支払いを済ませた。
ここまでで3時間を越えていた。
その後、処方箋を持って、医院のそばにある調剤薬局へ行った。
そこに、先ほど私の前に診察室へ入った「××ハラ」が、薬を待っていた。
やや時間をおいて、薬局の薬剤師さんが名前を呼んだ。
「××ハラ ××ルさん」だった。
「単純な呼名のミスだ。
さほど気にしなくていいこと」
と、安堵した。
ところが、その後の彼と薬剤師さんのやり取りが、心を刺した。
薬剤師さんは数種類の大量の薬を前に、
その投薬方法について説明を始めた。
しばらく静かに聞いていた「××ハラ」さんが言った。
「あのね。この薬はもう何回もここでもらっているの。
だから、細かな説明はいいから」
かなり苛立った口調だった。
薬剤師さんは、その空気を読んで対応すればよかったのに、
やや強い言い方をした。
「いえ、薬の扱い方についてお伝えするのは、私の務めです。
お聞き下さい!」
それを受けて、彼は大声を出した。
「聞かなくても分かっているって言っただろう。
病院が混んでて、もう3時間以上もかかってるんだ。
あんたの仕事に付き合うより、俺の仕事だ。
説明はいいから、早くしろ!」
薬剤師さんは、仏頂面で薬の料金を言い、
彼はお金と交換に薬の袋をつかみ、足早に薬局を出て行った。
「これは、よく言われているカスハラなのだろうか」
そんなことを思っている矢先に私の名が呼ばれた。
処方された薬の説明が始まった。
彼と同じ気持ちに私もなりそうだったが、
じっと我慢して、薬剤師さんの務めに付き合った。
何ともやりきれない気分だった。
荒々しい有珠山 ~噴火はいつ?
総合体育館であった。
私は、その副実行委員長を頼まれた。
当日は、いくつかの役割があった。
その1つが、6つの競技の1つで参加者の得点を記録する係だった。
約60名の参加があった。
次々と得点記録をしないと、
スムーズに競技が進まない。
休む間のない1時間半だった。
記録をしながら、底冷えを感じた。
でも、慌ただしさで上着を取りに行くこともできないままだった。
それが悪かった。
その日の午後から、風邪気味になった。
ノドが痛く、時折咳やくしゃみが出た。
翌日からは、市販の風邪薬を頼った。
1週間が過ぎても回復しないどころか、
痛みも増し、頭痛もひどくなった。
もう市販薬では駄目と判断し、
かかりつけ医へ行くことにした。
待合室は、患者で溢れていた。
『本医院の待ち時間について』という張り紙があった。
そこに「1時間半~3時間」お待ち頂くことがありますと書いてあった。
4日の間を置いて2度、その待合室で診察を待った。
その時間、咳き込むたびにノドと頭と全身が痛みながらも、
その場にいる患者さんをウオッチした。
2つを記す。
① 女性の2人づれ
受付を済ませて、待合室の空席に着くと、
はす向かいに、同世代の女性が2人座っていた。
仲良く小声でお喋りをしていた。
しばらくすると2人は、一緒に受付に呼ばれた。
それで、2人はそろってここへ来たことが分かった。
まずは、そのことに驚いた。
私たちは、誰かと連れだって病院へ行くだろうか。
家族に付き添ってもらって通院したことはある。
でも、予防接種以外にそのような体験はないのでは・・。
「友だちやご近所さんと連れだって」病院へ行くなんて、
私には考えられないことだった。
年齢と共に、女性は協調性が増すと聞いたことがあるが、
男性の私には決して真似のできないこと。
ただただ驚いてしまった。
そして、この2人にはもう1つ。
受付に呼ばれた2人は、
保険証かマイナンバーカードの提示を求められた。
2人は、マイナンバーカードの提示は初めてなので、
やってみたいと言った。
早々、受付の女性が提示の機器前まで来て、
操作方法を説明した。
1人の女性が、不安げな表情で自分のカードを機器に入れ、
受付の女性の説明に従って、顔認証を選び機器を見た。
それで全てが終わった。
「実に簡単!」だ。
提示を終えた女性の不安は、自信に変わった。
突然、連れの女性に声をかけた。
「ここにカードを入れて!」
「そう、その向きに入れるの」
「顔認証ってあるでしょう。そこを指で!
そこを見て見て!」
「それで、もう終わり」
不安げな女性とは対照的に、
一歩先を行った女性のなんと誇らしげなこと。
こんな姿も女性ならではと言ったら、
言い過ぎ・・かな?
② 3時間待ちの顛末
2時間半も待って、
やっと診察室前の廊下の長椅子まで呼ばれた。
「後わずかだ!」
そこでも4人程が呼名を待っていた。
やや時間はかかったが、順に診察室に呼ばれた。
次は私の番だと思った。
ドアが開き、看護師さんが名前を呼んだ。
「××ハラ ワタルさま、どうぞ」
私は立ち上がれなかった。
「私の名ではない!」
少し離れた席の男性が急いで、
診察室へ入っていった。
よく似た名に違和感があった。
その方が、診察を終え退室した。
次は私と確信した。
ドアが開き、看護師さんが名前を呼んだ。
「××ハラ ワタルさま、どうぞ」
立ち上がって、思わず言った。
「ツカハラです。××ハラではありません」
看護師さんは血相を変えた。
急ぎ診察室へ戻り、
「失礼しました。ツカハラワタルさまどうぞ!」
かかりつけ医である。
患者を間違えての診察はないだろう。
「それでも」と、私は医師に言った。
「ツカハラです。よろしくお願いします」
さて、診察が終わり、会計で支払いを済ませた。
ここまでで3時間を越えていた。
その後、処方箋を持って、医院のそばにある調剤薬局へ行った。
そこに、先ほど私の前に診察室へ入った「××ハラ」が、薬を待っていた。
やや時間をおいて、薬局の薬剤師さんが名前を呼んだ。
「××ハラ ××ルさん」だった。
「単純な呼名のミスだ。
さほど気にしなくていいこと」
と、安堵した。
ところが、その後の彼と薬剤師さんのやり取りが、心を刺した。
薬剤師さんは数種類の大量の薬を前に、
その投薬方法について説明を始めた。
しばらく静かに聞いていた「××ハラ」さんが言った。
「あのね。この薬はもう何回もここでもらっているの。
だから、細かな説明はいいから」
かなり苛立った口調だった。
薬剤師さんは、その空気を読んで対応すればよかったのに、
やや強い言い方をした。
「いえ、薬の扱い方についてお伝えするのは、私の務めです。
お聞き下さい!」
それを受けて、彼は大声を出した。
「聞かなくても分かっているって言っただろう。
病院が混んでて、もう3時間以上もかかってるんだ。
あんたの仕事に付き合うより、俺の仕事だ。
説明はいいから、早くしろ!」
薬剤師さんは、仏頂面で薬の料金を言い、
彼はお金と交換に薬の袋をつかみ、足早に薬局を出て行った。
「これは、よく言われているカスハラなのだろうか」
そんなことを思っている矢先に私の名が呼ばれた。
処方された薬の説明が始まった。
彼と同じ気持ちに私もなりそうだったが、
じっと我慢して、薬剤師さんの務めに付き合った。
何ともやりきれない気分だった。
荒々しい有珠山 ~噴火はいつ?
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