ランパードの放ったシュートがクロスバーをたたいて下に落ち、明らかにゴールラインを越えているのにノー・ゴールの判定。それを見た瞬間、思わずニヤリとしてしまった。44年前のイングランド大会の決勝、イングランド対西ドイツは2対2のまま入った延長戦、イングランドのジェフ・ハーストの放ったシュートはクロスバーをたたいて真下のゴールライン上に落ち、跳ね上がったところを西ドイツ選手がクリアしたものの、ゴールラインを越えていたと判定され、得点が認められた。結局この1点が決勝点となり、イングランドは史上ただ一度のチャンピオンとなる。この時、ゴールインを強く主張したソ連の線審バラモフの判定は“バラモフ・ルール”と揶揄されることとなった。今日では当のジェフ・ハーストも「あれは入っていなかった」と認めているようだ。めぐりめぐって2010年、今は統一されたドイツと再び相まみえたイングランド。運命は実に皮肉だ。おそらく英国民の中には「バラモフの祟り」とか「ハーストの祟り」と感じた人もいるのではないだろうか。
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1966年イングランド大会決勝・疑惑のゴール
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1966年イングランド大会決勝・疑惑のゴール