
音楽とはかくも感動を与えるものか。あらためてそう感じさせた7分間だった。それは一昨晩、NHK教育で放送された「芸術劇場」における小澤征爾の復活コンサートのことだ。今年1月、食道ガンの手術を受けて休養していた世界のマエストロ小澤征爾が、9ヶ月ぶりにサイトウ・キネン・フェスティバル松本でコンサート復帰。しかし、持病の腰痛が悪化し、指揮できたのは、チャイコフスキーの「弦楽セレナード」第1楽章のみ。わずか7分間の指揮だったが、まるで小澤征爾の復活への執念が乗り移ったかのような音楽の響きに鳥肌が立ち、なぜか涙が溢れてきた。この曲目はテレビなどでもおなじみの調べだが、小澤征爾の手にかかると全く違う迫力で迫ってきた。小澤征爾の指揮を通して、あらためて人間の“表現力”の凄さも実感させられた。