徒然なか話

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虚空遍歴(こくうへんれき)

2018-12-14 15:47:49 | 文芸
 本條秀太郎さんの公式サイトに掲載されている朗読と邦楽が融合した公演「松廼家おけい」がずっと前から気になっている。そこで原作の山本周五郎「虚空遍歴」を読み始めた。あらすじは次のようなお話らしい。

 旗本の次男でありながら江戸端唄名人の誉れ高い沖也は、それには飽き足らず、浄瑠璃を極めようと芸道遍歴が始まる。それを献身的に支えるのが沖也の端唄に一目ぼれした柳橋松廼家の芸妓おけい。しかし、沖也は浄瑠璃作家として名を成すことができない苦しみや葛藤の中で酒に溺れ、ついには病に倒れて旅先で死んでいく。

 沖也のあてどもない浄瑠璃行脚の旅の中に、山中温泉の場面がある。本條秀太郎さんは、自らが50年ほど前に創作された俚奏楽「雪の山中」と、この「虚空遍歴」の世界に共通するものを感じとり、それがこの公演の動機になったようだ。(※第1回公演は2009年)
 主人公の中藤沖也という名前は詩人の中原中也を連想させるが、実はこの人物のモチーフとなっているのは、誰でも知っているアメリカの作曲家、スティーブン・フォスターだというから驚きだ。おおスザンナ、草競馬、故郷の人々、金髪のジェニー、オールド・ブラック・ジョー、ケンタッキーの我が家等々、フォスター作曲の歌を歌ったことがない人はいないのではないか。フォスターがどんな一生を送ったのか残念ながら知らないが、中藤沖也の生きざまと共通するものがあるのだろう。




   ▼本條秀太郎作曲 俚奏楽「雪の山中」


 
   ▼フォスター作曲「金髪のジェニー」(ヴァイオリン演奏:ヤッシャ・ハイフェッツ)


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