炭焼長者/再話・稲田 和子 絵・太田 大八/童話館出版/2008年
遊び人で、まともに仕事をしない夫が、食べ物を足でけとばしたことから、夫に三下り半をつきつけて家を出た女が、そばの神さまから聞いたという、貧しい炭焼き五郎左衛門のところへ転げ込みます。
女が小判を一枚出して、米を買うようにいうと、五郎左衛門は、とちゅうで、かもをつかまえようと小判をなげますが、小判は水に落ち、かもも逃げてしまいます。五郎左衛門は小判の価値を知らない男でした。
女はあきれますが、五郎左衛門は、「あげに光るもんなら炭焼きが窯」のまわりに、いくらでもあるといいます。炭俵に金をいっぱいつめた二人は大金持ちになってそれからはたいそうな長者に。
この再話の前半部は、長者に子どもが生まれそうになって急いで帰る途中、賽の神さまの木でねむっていると、しゃくし、ほうき、なべしきの神さまがとおりかかり、お産に立ち会うところがあります。
三人の神さまは、生まれた子どもの運命も左右します。
この時、長者に男の子、小作人に女の子が生まれ、大きくなって二人は結婚します。
後半部では、冒頭のように女が家をでていきます。
山陰地方のお話にふさわしく、そばの神さま、みそ蔵、米蔵、粟蔵の神さまもでてきます。
これまで、女性が再婚したり、三下り半を突き付ける昔話には、であったことがありません。
長者の誕生より、女性(名前がないのが昔話らしい)の行動が気に入りました。
しゃくし、ほうき、なべしきの神さまは、馬の鈴がシャンシャンとなっていますから、きたことがわかるようです。