ちいさなホッポ/マーシャ・ブラウン:作・絵 うちだりさこ・訳/偕成社/1984年初版
絵本の中でも版画の絵を見ると とても落ち着きます。
それほど色はつかわれていませんが、そのことで逆にゆったりと受けめることができます。そして輪郭線がくっきり。
子カバのヒッポはいつも おかあさんと一緒。おかあさんといれば、こわいものなし。
昼は砂地にかさなりあって、ひなた水に うかんだりして、とろとろと ねむってすごします。すすずしい ひぐれになると 草地で 夜が明けるまで 草をたべつづけます。
言葉を覚える時期になって、おかあさんは大切な言葉をヒッポに教えます。「グァオ」。「こんにちは」は「おんにちは」、「たすけて」は「たっけて」とうまくいきません。。ヒッポは なんども練習します。
ある日、みんなが眠っているとき、ヒッポはひとりで、うえのあかるいほうに いってみました。水めんに かかっている 木のはと あそびたくなたのです。そこへ、波一つたてずに、金みどりの目がすべりよってきます。ヒッポが 岸によじ登ろうとしたとき、おおきなワニがヒッポのしっぽに かみつき水の底へ引っ張りはじめます。
「グッ グッ グァオ! たすけて!」さけぶヒッポのさけびごえを ききつけて お母さんカバはワニにおおきなくちにくわえ、ふりまわし、ほうりなげてしまいます。
カバのお母さんが大きな口をあけているのは迫力満点。
危機になったとき「グッ グッ グァオ! たすけて!」とちゃんと いえたヒッポでした。
人間でも、動物でも母さんが子どもを思う気持ちは一緒です。でも子どもを助けたあとに、おこごとを言うのは、自然界の厳しさをおしえているようです。
カバって、ひぐれから夜が明けるまで草を食べるというのを、はじめて知りました。