金のりんご/マックス・ボリガー・文 チェレステイーノ・ピアッテイ・絵 いずみちほこ・訳/徳間書店/1999年
月明かりの晩、上を見ているのは動物の王さまライオン、いちばんおおきいゾウ、けもののなかでいちばんつよいトラ、せいたかのっぽのキリン、かしこいのをじまんしているキツネ。
みているのはリンゴの木。てっぺんにある一個の金のリンゴがおちてくるのを、まっていたのです。
けれども、金のリンゴはおちてきません。六日目の晩、リスがやってきました。おなかをすかせたけものたちは、ひとのみにしてやろうとリスにとびかかりますが、リスはリンゴの木をするするとかけのぼり、金のリンゴのそばにこしかけ、リンゴをかじりとりました。ところが 金のリンゴがおおきくて、おもすぎたので、リスのちいさな手から滑り落ち、木のしたに、どすんとおちてしまいます。
するとゾウとトラとキリンとキツネは、金のリンゴにとびかかりました。おそろしいたたかいになりました。
さけび、ほえ、かみつき、なぐりあっているうちに、みんな金のリンゴのことなど忘れてしまいました。そして、血を流し、傷つき、目をつぶし、耳をなくし、足をひきずって森へ帰っていきます。
あらそいのもとになった金のリンゴはだれのものにもなりませんでした。
争いが起きると、争いの原因がわすれられてしまいますが、戦争とは、こんなことでだんだんひろがっていくのかもしれません。
かしこいキツネ、力持ちのゾウ、首の長いキリンが協力すれば金のリンゴは手に入れられたはずですが、一個というのがミソです。