薩摩の早太鼓/日本の民話11 民衆の笑い話/瀬川拓男 松谷みよ子:編集・再話/角川書店/1973年
昔話であまり出番が少ない艶笑話。だが昔話が子どもだけのものではないからには大人が楽しむものがあってもおかしくない。おはなし会が高齢者施設でも行われるいるが、子どもに聞かせられない話があってもよさそう。
薩摩と言えば島津。島津の殿さんは武芸百般に通じていたが、融通の利かない堅物。
心配した家老が「奥さんでももらったら、ちっとは柔らかになるだろう」と、ようやく奥方をもらうことになった。
ところが、殿さんは男とおなごが夜の床でするべきことを知らん。家老は年の功で「夫婦になったら夜な夜な奥方はんの上にのぼらなきゃいけん」と耳打ちします。
晩、殿さんは奥方の上にのらしたが、のぼってからじっとするだけ。
あくる日、奥方から話を聞いた家老が、また耳打ちします。「のぼるだけではあきません、差すものば差すところへ、ちゃんと差し込まにゃ、いかんですわい」。
お殿さん、すぐに悟って、差したところまではよかったが、あとはじっとするだけ。
また奥方から聞いた家老が、また耳打ち。「今夜から、わたしが隣の部屋で太鼓ば打ちますけん、抜き身を差し込んだ後は、まず、ドーンで抜く、次のドーンで差す、ドーンで抜く。」
ドーンの合図で差せ、抜くが続きますが、家老が爺で、太鼓が間延び。隣の部屋から殿さんが
「家老、家老、早太鼓を打てい!」とのご命令です。