銀のかんざし/世界むかし話 中国/エド・ヤング・絵 なたぎりすすむ・訳/ほるぷ出版/1979年
兄がチャンパオ、弟がチャンションという兄弟。財産わけのとき兄がほとんどひとりじめし、弟は年とった馬を二頭。
弟は二頭の馬で薪を売り歩いていましたが、その馬もなくなって、暮らしはいよいよ苦しくなりました。
弟はおかみさんにわからないよう家をでて、あちこちでわずかばかりの仕事をして暮らしていましたが、ある日、宿がみつからず山の上のお堂にとまることにしました。
ひとまず、扉に寄りかかっていると、なかからシューッ、シューッと音がしたので、扉からなかをのぞくと、からだが金色に光る”大ウワバミ”が、七つの夜光の玉をはき出してお堂の中を明るくてらしていました。それに赤いズボンに緑の上着といういでたちの親指くらいの小さなこびと七人が、さかんに歌をうたっていました。
ここでは数知れないほどの人数が食いおばけにくわれてなくなっていました。おじいさんから五駄の銀貨とひきかえに、人食いおばけをかたずけてくれるよう頼まれたチャンションは、よくがなく一駄で人食いおばけをたいじすることに。
首尾よく大ウワバミを退治したチャンションは、ウワバミのお腹にあった金貨と七人のこびと、七つの夜光の玉を手に入れます。
家にかえる途中、龍の淵のほらあなで、夜光の玉で真っ暗なほらあなを照らし、こびとたちの歌をきいていると、たえなる歌声を聞きつけた龍王の三番目の王女が、龍王の誕生日を祝うため龍宮で三日間歌をうたってくれるようにたのみます。
龍宮にむかうやりとり。
王女から「金の門と、銀の門、どちらをとおりますか?」ときかれ チャンションは「木の門がいい」とこたえます。
「金のこしかけと、銀のこしかけ、どちらにすわりますか?」ときかれると「木のこしかけがいいんです」。
「金の茶わんと、銀の茶わん、どちらでたべますか?」ときかれると「せとものの茶わんがいいんです」。
「金のはしと、銀のはし、どちらでたべますか?」ときかれると「竹のはし」と、チャンションはこたえます。
よくのないチャンションが手に入れたのは小さな赤いひょうたんでした。このひょうたん、「ほしいものをなんでもだしてくれる」という優れもの。
チャンションが家にかえったのは、でていってから三年後。
家を出た時のままのぼろぼろの服で、銀貨一枚もたずにかえったチャンションに、おかみさんは悪態をいますが、チャンションは赤いひょうたんに、二食分のごちそうをだすようにいいます。
チャンションが兄や姉をよんで父親の誕生祝いをしようとすると、おかみさんは事情がのみこめず文句をいいますが、赤いひょうたんで、立派な屋敷をだして、ごちそうで、みんなをもてなします。
兄が弟がどんな風に金を作ったのかたずねると、弟は素直?に、これまでのことを話します。おまけにひょうたんを二日間借り出した兄。
はじめにラバ、そして次には宝船をだして、みずうみをのんびりまわることにした兄でしたが、宝船に乗り込んだとたん、宝船はひっくりかえって、兄もろとも、湖の底へ沈んでしまいます。というのも赤いひょうたんは、もともと湖にあった宝物で、湖にきたので、龍宮に帰ってしまったのでした。
一方、チャンションは、七人のこびと七つの夜光のたまで、どこでもかせげましたから、あいかわらず幸せに暮らしました。
五駄の銀貨とひきかえに大ウワバミの退治をするよういわれたチャンションは、一駄でいいとこたえますが、五駄の銀貨といえば、馬五頭に積まれた銀貨ですから、ずいぶん欲がありません。
龍宮に案内するのが三番目の王女ですが、三番目というからには上には二人の王女がいるはずですが、上の二人は登場しません。
赤いひょうたんが、湖にもどるというのも ほかの昔話にみられない結末でしょうか。こういうのがあると争いのもとになりますから、結末も納得でした。