メドヴィの居酒屋/世界むかし話 ドイツ/訳・矢川澄子/ほるぷ出版/1979年
昔話には、食べ物や金貨がでてくる まさに魔法が欠かせませんが、この昔話は、ちょっと一味ちがっています。
たまごをあきなっていた寺男のおかみさんが、きゅうにニワトリがあらかた死んでしまい、最後のメンドリを背かごにいれて、町にでかけた途中にであったのは、白いヒゲをはやした小男。つぼとニワトリをとりかえっこしないかと、もちかけられ、つぼとニワトリをとりかえこします。
小男は「つぼや、いっぱいになれ!」と となえると つぼがいうことをきいてくれる。ただ洗ったり、日向においたりしないようにしなさい といいます。
つぼは 長年、一家の役に立ちますが、一回使うとだんだん黒くなります。おかみさんがつぼをきれいにみがくと、純金みたいに輝きますが、小男のいったとおり、魔法の効力がなくなってしまいます。
こうした昔話では、3度の繰り返しがあります。
二度目は、亭主が小羊と、小男のもっている玉ととりかえます。
この玉を役立てようと思ったら、「玉や、ぎょうぎよくして、ぼうしをおとり!」ととなえるとききめがあらわれるが、そのとき窓や戸をあけないように いわれます。
おしえられた文句をとなえると、なかからたくさんのこびとがあらわれ、テーブルに金の食器やごうかなごちそうをならべたかとおもうと、ふたたび玉のなかに 消えます。みんながたべおわると、ふたたびこびとがあらわれ、あとかたずけです。
小男の忠告をまもって、大事にしていた玉でしたが、いつのまにやらうわさが広がって、上役にとりあげられてしまいます。
3度目、二頭の雄牛ととりかえたのは、また玉でした。
「玉や、ぎょうぎよくして、ぼうしをおとり!」と となえると あらわれたのはふたりの大男。寺男の一家は、こん棒で なさけようしゃなく ひっぱたたかれ、みんな打ちのめされ、床にころがってしまいます。
寺男は、上役のところに行って、新しい玉を手に入れたことをつたえます。
寺男が、新しい玉の力を披露すると、ふたりの大男があらわれ、上役を手ほどく打ちのめします。
上役から懇願され、前の玉をとりもどした寺男でしたが、友達がやってきたとき、玉をまわしていると、誰かが家にはいってきます。すると玉は戸口からさっと外にとびだしてしまいます。
みんながおいかけると、玉はますますスピードをあげ、おまけに二つにわれて、こびとたちが山へかえってしまいます。
戸口が開いていたので、もうひとつの玉も外にとびだし、二人の大男も山へ逃げ込んでしまいます。
物事そんなにうまくいきませんね。
「玉や、ぎょうぎよくして、ぼうしをおとり!」が、呪文の文句ですが、玉とぼうしというのは何を意味していたのでしょうか。