かまた先生のアリとキリギリス/鎌田實・脚本 スズキコージ・絵/童心社/2018年
「夏の間、アリたちは冬の食料を蓄えるために働き続け、キリギリスはヴァイオリンを弾き、歌を歌って過ごします。やがて冬が来て、キリギリスは食べ物を探すが見つからず、最後にアリたちに、食べ物を分けてもらおうとしますが、アリは食べ物を分けることを拒否し、キリギリスは飢え死んでしまう。」というのが、イソップ寓話の「アリとキリギリス」。
一方、キリギリスが飢え死ぬのでは残酷だというので、アリは食べ物を恵みむという改変もされる場合があるといいます。
この紙芝居では、キリギリスが飢え死ぬことなく、キリギリスのヴァイオリンを一番たのしそうにきいていたアリが、食べ物を提供します。そして、キリギリスは「もっとひろい世界で ぼくのヴァイオリンを きいてもらいた。それが ぼくのゆめ。ときどき かえってきて、きみの 家にあそびにくるよ」と、みなみの国に飛び立ちます。
自業自得と冷たく切り捨てるのではなく、キリギリスにも夢や希望があり、遊んでいるだけのだらしない存在と決めつけないようにしたとありました。鎌田先生は、まじめに働くことの大切さのほかに、子どもたちが希望を持てるものがあってもいいといいます。
キリギリスはヴァイオリンを弾くことで、アリたちに元気を与えてくれる存在。芸術の存在意義も考えさせてくれます。