このいえも むかしは/ジュリー・フォリアーノ・文 レイン・スミス・絵 青山南・訳/BL出版/2018年
森の奥深くの丘の上の一軒の倒れそうで誰もすんでいない家。
むかしは青いペンキが塗られていたけれど、今ははがれていて、家までの道は草木にすっかりおおわれ、窓のガラスはなくなっています。
ふたりの子どもが、丘をのぼり、家に近づきます。
玄関のドアは、あいているか しまっているか どっちつかず。
ガラスの割れた窓から、家にあがりこんだふたりの子ども。
顔がやぶれた写真、テーブルの上の絵の具、レコード、まだどこか暮らしの名残が残っている室内。
子どもたちが想像します。
ヒゲをはやし、眼鏡をした男の人が、まどをのぞいて、海にいきたいとおもっていたのかな?
女の人が、アイステイーを飲みながら 庭でリスの絵をかいていたのかな?
女の子が レコードに合わせて うたっておどっていたのかな?
男の子が、飛行機をつくって まいばん空をとぶ夢をみていたのかな?
飛行機でパリにとんでいって セーヌ川で絵をかいて チーズをいっぱいたべているのかな?
・・・・
ときどきCG風の無機質な絵本がありますが、どうにも好きになりません。この絵本は、手作り感のある味わいのある絵。家のなかに住んでいた人を想像する場面では、それまで様相がガラリと切り替わります。男の子の飛行機がとってもクラシック。
「森のおくふかくに いえがいっけん。むかしは ひとがすんでいましたが いまは だれもいません」とはじまりますが、ラストにまったく同じフレーズがでてきます。
はじめの方の数ページにわたって、小鳥が餌をくわえているのが気になっていたのですが、最後のページでは、雛が三匹、家の中の木の枝に とまっています。
住宅密集地での空き家はいろいろ問題がありますが、森の中の空き家は、たしかに想像をかきたててくれます。